日本兵にも様々なタイプが存在した -米軍の日本兵分析より | 太平洋戦争史と心霊世界

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日本兵 


 戦前の日本人と聞くと、天皇陛下を崇拝し、命令があれば従順に戦場に赴いた人々、というステレオタイプで捉えられがちです。

 

 太平洋戦争中、米軍は日本人研究のために戦場で日本兵の日記や手帳を捕獲していました。ところがその分析によると、戦時中の日本軍将兵には5種類の人間タイプに分類できたそうです。

 

 米軍が捕獲した20人の日記から分析すると、日本兵の典型のような勇猛な兵士は少なく、実態は巷のどこにでも存在する普通の人々でした。以下がその米軍の分類した日本兵5タイプの記述になります。

 

 

1.『神の子』(Sons of Heaven)

 

  アメリカ人から見た代表的な日本兵士のタイプ。特徴として無慈悲、タフ、強靭に戦うことを教え込まれた兵士。しかし収集した手帳、20人の持ち主のうち、2人しか該当しなかった。

 

 人物像としては、以下のイメージである。

 

軍医「敵は前線を死守しようとしているが、『神の子』に向かって戦うなど無益なことである。日出る国の勇士の魂は、世界に比類なき“大和魂”である」

 

 しかし戦闘が始まると彼らの心境は一変し、天候や物資不足に対する不満が愛国心に取って代わられる。

 

 

2.『活動的なタイプ』(Men of Action)

 

 この人物像はやや曖昧であるが、「戦争の状況を当たり前のものとして受け止めている」、「愛国心を吐露するわけでもなければ、不平不満をもらすわけでもない」、「軍役を楽しんでいる側面もあれば、ひどく嫌っている側面もある」という現実を受け入れる現状肯定派。

 

 記述としては、「アメリカは恐るべき強敵だが、これを潰さなければならない。われわれの軍事力は消耗し退却中だが、敵もまた困惑している」、「私の掘った壕は私の墓だ・・・どうせ私の墓になるなら、ここをきれいにしよう」など。

 

 

3.『不満を持つ兵士』(Dissatisfied Soldiers)

 

 米軍からは日本軍には存在しないと考えられていたタイプ。この手のタイプは軍からも疎まれていた。手帳には食料・医療品不足、敵機の空襲、理不尽な上官への不平不満、不安、絶望感などが綴られていた。


大和での戦闘 
  

4.『インテリ』(Intellectuals)

 

 5人の将校がインテリに分類されている。

 

・「外部の世界と接触するというよりも、自分自身の内的なものに影響されやすいという意味で“内向的”ともいえる」

 

・「自分から進んで参加するよりじっと見守っている。状況に対して感情的なものを超越している。物事に反応するというより考えることに興味を抱く――といった傾向がある」

 

・「状況を描写するときも、美的な記述ではなく科学的な記述になるきらいがある」

 

 

5.『情緒的なタイプ』(Men of Feeling and Emotion)

 

 外交的で情緒的で「インテリ」とは全く対照的タイプとなる。このタイプは将兵7人と、20人中の約三分の一を占める。

 

・「自然を科学的に見るのではなく、美しいものとして見る」

 

・「現地人に対しても、異文化の象徴としてではなく、自分たちと同じように感情を持った個人として見る」

 

・「感情的に温かく、感傷的な人々と呼ぶことができる」

 

 

 さらに米軍は、この考察を基に日本を占領した場合、その占領政策に日本人がどういう反応を示すかを詳細に分析しています。

 

 このように日本兵は米軍から見た場合、全員勇猛果敢な兵士に見えたのかもしれませんが、内実は様々な心情が交錯する、現代人と変わらないごく普通の人々であったとも言えます。

 

 

『戦場に残された日記』 -ガダルカナルから帰還した「魂のタイムカプセル」、勝見 明、プレジデント社、1995