
元外交官で作家の佐藤優氏の福島第一原発事故における、最近の政府の対応への見解を掲載しました。(以下、文字起こし)
■『くにまるジャパン』9月20日放送分1〈佐藤優〉 原発処理と安倍政権
http://www.youtube.com/watch?v=X7DYZoVxjes
●安倍総理、東京電力に福島原発5号機、6号機を廃炉にするよう要請
国が株主として言っている立場もあると思う。東京電力は一応民間企業であり、その極めて重要な決定に対して、これをやれ、あれをやれというのは、どういう法律的根拠に基づいて言っているのかがすごく気になる。
絶大な権力を持っている総理大臣、時には法律の縛りはないことでも、緊急避難的にやることはある。ただ、そうじゃない場合においては、法によって政府の活動っていうのは、枠がはめられていないといけない。
要するに、理屈としては、5号機6号機を廃炉にしてほしいと言うことは、逆に今度は2つ原発を造れっていうことだって要請できるわけである。となると、法的な根拠なくして、政策で何かやりたいという時、こういう形でいいのかなという心配がある。でも私は5号機6号機の廃炉には賛成です。
●福島第一原発は国有化するしかない
福島の第一原発に関しては、率直に言って、民間企業は何かと言えば、営利の追求である。営利を追求する企業においてできる業務ではないと思う。だから福島第一原発は切り離して、国有化するしかないと思う。
それを国の直接の判断で行うという、国有化をしないで要請とか、どうも曖昧なところに危うさを感じる。
さらに、汚染水の浄化を来年度中に完了することを東京電力が言ったって、技術的には担保されているわけではない。真意は完了すべく全力を尽くすっていう意味ですよね。
●前政権の終息宣言はどうするのか
それからそもそも、福島第一原発に関しては、終息宣言が前内閣で出ていたのではないか。それだったら、その野田政権の終息宣言に関しては、撤回するのか、終息してないとみるのか、はっきりさせるべき。
●汚染水の外交的問題
或いは汚染水が管理下にあるっていう、その管理下とはどういうことなのか。コントロール下にあるということなのか、或いは単に湾内でとどまっているという意味か。
海はつながっているので、湾内でとどまっているという理屈をしていると、海洋汚染防止条約との関係でも、どういう整理をしていくのか色々な問題が出てくる。
(アナウンサー)一応湾内にはカーテン上の物が垂れ下がっていて、そこで一応汚染水をブロックしているというんですが、果たしてその実効性っていうのはどこまであるかということについては、100%とは言っていないですよね。
そうです。100%は言えないと思う、専門家の見解を聞いても。だから全力を尽くすっていうことと、できているって言いきっちゃうことは違う。
●問題の深刻さに対し、対応が軽い。場当たり的な対応を改める
(アナウンサー)今回の場合、安倍総理が行政の長として福島第一原発の5号機6号機を廃炉にしろっていうのは、国会で審議をして、福島第一原発に関しては国が管理するという、法律に基づいて安倍総理がものを言うのと、これはちょっと違うということですね。
そうです。あと強いて言えば国は株持っているので、株主の立場がある。
(アナウンサー)廃炉にしちゃえばいいじゃないかとも言えるが、逆に再稼働しろと要請する可能性もあるわけですね?
それは要請だからできる。法律に基づいて、地元の知事の了解がいるが。ただそれにしても、再稼働の要請もできる。
だから非常に危うい感じというか、問題の深刻さに対して、対応が軽い感じがする。もう少しきちんとした枠を作らないといけない。そこで封じ込めるために全力を尽くさないといけない。特に福島の人々・子供たちだけでなく、日本の子供たち全体とも関わってくることである。
それから廃炉にすると、究極的に原発をどうするのか。要するに民主党政権時代の30~40年かけて廃炉していくという方針で行くのか、それとも継続していくのか、或いはすぐに止めるのか。
そうすると、廃炉するための人材をどう確保するのか、さらに廃炉することになると、原発のノウハウを持っている人たちがいる。この人たちの技術は、例えばイラン、北朝鮮、はシリアなど、こういった国に拡散する可能性を防ぐということも、国際的にやらないといけない。
こういう色んな問題がある。そうすると、原発政策に関しては場当たり的な今のやり方じゃなくて、とにかくまずポイントであるところの福島第一原発、ここの所を国有化していくということ。国が前面に出るじゃなくて、国が全責任を負うこと、こういう位に転換しないといけない。