「潜水艦イ-57降伏せず」の後編です。垢取り競争が終わった後に、米軍との戦闘が始まりました。
戦闘中に、潜水艦外部を修理中の作業員が挟まれてしまったものの、敵機来襲でそのまま潜航せざるをえず、溺れ死んでしまう場面もあります。
戦争の資料を読むと、そこかしこに少数派は見殺しにせざるを得ない残酷場面が出てきます。この映画は戦争から遠くない時代に作られたので、実際の戦争の実態をより正確に反映しているのではないかと思います。
時代が隔たるにつれ、戦争映画は現代人用にアレンジした、優しい筋書に化けてきているような気がしてならないのですが。この映画と同じ潜水艦モノである「真夏のオリオン」は話が対照的だと思います。
実際に戦争に行った人が俳優をしていた時代ですから、現代人が演じる軍人と雰囲気が違う気がします。
中央にいる先任将校・志村大尉役の三橋達也さん(1923-2004)は戦時中に召集され、シベリア抑留を経て昭和22年に復員しています。この方は演技も迫力ありましたね。
右手の河本艦長役の池部良さん(1918-2010)にしても、陸軍少尉として北支から南方へ派遣されています。
左手にいる戦争映画の常連、軍医長役の平田昭彦さん(1927-1984)は陸軍士官学校を出て、戦後には東京大学を卒業しています。
昭和20年8月6日、最後にイ‐57は目的地へ到着したものの、敵艦に捕まってしまいます。ゲストを艦から降ろして敵艦に引き渡し、ともかく任務を果たします。
しかしイ‐57で正装に着替え、降伏しようとしている最中に、ポツダム宣言が連合国から発表され、日本はそれを受諾か拒否かの選択しかなくなってしまいました。
そこで和平工作も無効になったから任務を解くとの連絡が司令部から入ります。和平工作を気にする必要がなくなったイ‐57艦長は降伏を撤回し、そのまま敵艦との戦闘態勢に入り、最後まで戦い玉砕してしまいます。これが映画タイトルの所以です。
この映画は当時の日本人の思想をよく反映していると思います。最後の最後まで降伏せずに戦うという、当時の日本軍の軍人精神を上手く出しながら、虚しい戦いという雰囲気も表現されています。
私自身の所感としては、現代風の戦争映画より、モノクロで地味でも人間ドラマとしては、こちらの方が当時の軍人の心理をよく表しているのではと思いました。戦闘シーンが拙いのは時代として致し方ないですが、潜水艦モノとしては出来の良い映画ではないでしょうか。
【動画】潜水艦イ57降伏せず・予告編(02:46)
http://www.youtube.com/watch?v=uhYaiEMRqbI