原発記事を休んで尖閣問題を来週まで5回にわたり取り上げます。
元外務省出身の佐藤優氏が尖閣諸島問題に関しての対処法を提起していますので、興味のある方はご覧ください。私自身もこれが現実的な対応法ではないかと思います。
【動画】『くにまるジャパン』7/20日放送分〈佐藤優〉
その2 尖閣問題(14分)
佐藤優氏
【なぜ尖閣に建造物を建てないのか】
東京都から尖閣諸島国有化の際に、政府は避難港や灯台を整備すると言ったが先延ばしにして何も造るつもりはなく、今の無人島政策を継続する。
島の整備に言及しなければ、東京都は政府に尖閣諸島を売ってくれなかった。今尖閣に建造物を建てたら中国と戦争になる。なぜなら中国側は既に「戦争するぞ」というシグナルを出している為。しかし尖閣は我が国固有の領土である。
【尖閣をめぐる日中の歴史的経緯】
1885年に尖閣に日本領だという標識を立てようとしたが、清国も島に固有の名前を付けていた。これは清国を刺戟するということで案は取りやめになった。
もともと尖閣を所有していた地権者の先祖が、八重島に編入してくれと政府に申請したが、政府からの回答はなかった。
日清戦争での勝利後、日本は尖閣を日本領土とした。すると中国側から見ると、日本の中国侵略の第一歩が尖閣編入だという認識になる。
実は石油が出て来てから中国が騒ぎ立てたというのは日本側の一面的な認識の仕方で、これは歴史認識問題になってしまっている。
日本に最初から100%自信があれば、港や灯台もとっくに建造している。何もないということは、外交的に見れば何かいわく付きの土地だということになる。これはどの外務省関係者に尋ねても全員同意するだろう。しかし実際は日本が実効支配しているので、日本が強く出ることができている。
尖閣諸島のうち、久場島・大正島は実はアメリカの領土になっている。
【尖閣の一部はアメリカの領土】
軍事行動をとる気配として、中国は人民日報(7/13)の中で、「本気で戦争をやる覚悟があるのか」と、日本に尖閣に関する警告を発している。そのため慌ててクリントン米国務長官が(7月に)日本に来た。
マスコミは隠しているが、尖閣諸島の久場島・大正島は米軍の射爆撃場となっている。実際は20年ほど使っていないが、まだ日本に返還していない。つまりアメリカの領土である。
この領海内に中国が入った場合は、アメリカ本国を直接攻撃したのと同じことになる。すると米軍はこれを反撃する義務を負う。つまり米中戦争を誘発する。
【自衛権と自然権】
日本の憲法第9条では交戦権が否定されているが、自衛権は否定されていないというのが政府の解釈。しかし戦争を想定していないから、戦争の時どういう手続きをしていいのかを全然決めていない。
ところが国家には、憲法に明示されていなくても国を守るための自然権(自然法)というものがある。例えると家に強盗が入ってきた場合、家を守るようにするという行為。すると戦争が起きるが、この場合国際的には誰が仕掛けたかが問題となる。
【領有権と所有権を混同するな】
今までの無人島を国有化した。これは構わない。個人でもっていようが国でもっていようが、領有権の問題は関係ない。所有権を変えたら領有権が変わるという発想は全くの間違い。
例えば対馬は韓国人がたくさん持っているが、日本の領有権はおかしくならない。そもそも領有権・所有権の区別はきちんとしておかなければならない。
尖閣は日本の外交関係者すべてが知恵を絞って、無人島政策にしておくしかないという結論が出ている。
【国際世論】
勇ましいことを言って戦争になって、その戦争を仕掛けたのは日本だと言うことになればどうなるか。国際的にみれば、島は日本が実効支配しているのに何のために戦争は必要なのか、日本は極めて危険な国だという認識を持たれる。
日本は自ら孤立するような道を作り始めている。それに対する警告のためクリントン国務長官は来日した。
【戦争はメリットが無くても起きる】
こんなことで戦争をやっても何のメリットもないだろうと思っても、戦争は勢いで起きることがある。
第一次世界大戦)で、サラエボでオールトリアの皇太子を殺すことに一体何のメリットがあったのか?その後セルビアが謝罪せず開き直ったことで、世界戦争が4年間続いた。
【佐藤氏の結論】
勇ましい事を言うのが愛国ではない。現実に戦争を起こさず、尖閣諸島の日本の領有権を担保すること。
もし戦争になったら、アメリカが争いの元になるから島を国際管理するなどと言い出しかねない。
アメリカは安保の適用範囲だとは言っているが、領有権の問題に関しては中立の立場にある。
日本が尖閣諸島に対して必要もないのに国内的な事情から人為的に緊張を作り出しているというのが国際社会の見方であり、日本は世界秩序のかく乱者のように見られている。
従って国が尖閣を国有化して石原氏を抑えようとしているのは正しい。ナショナリズムはより過激な方が、より正しいのだとなってくるので恐ろしい。それをどのように抑えるかと言うことが真の国益になると考える。