
平智之議員
6月18日に民主党に離党届を出した、平智之議員のインタビューの抜粋です。彼はかつて材料工学の技術者でもあり、明快な語り口で原発について語っています。
平智之議員 略歴
: 1959年 – 京都市中京区生まれ。1983年 – 京都大学工学部物理工学科卒業。
1986年 – アメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院材料工学科卒業。
■原発再稼働を期に民主党を離党 平智之議員インタビュー
時間:2:01:12、アップロード:2012年06月20日
http://www.youtube.com/watch?v=zp1khfRnKU8
■ 原発は未完の危険な技術
質問者:原子力は何がどうやってはいけないものなのですか?
平議員:鉄は1,000℃で溶ける。その鉄の中に2,700℃まで熱くなる核燃料棒を入れて、何とかしてるんです。
質問者:どうしてそれが可能なんですか?
平議員:水で熱を取っているわけですね。だから電気が無くなって、停止状態でも核燃料棒は放っておいたら2,700℃までどんどん熱くなっていくんです。で、周りを閉じている鉄の鍋釜は、1,000℃で溶けるんですよ。
格納容器がどんなに厚かろうとも関係なく、融点で溶けだします。そういう絶対完成のしない技術を基にしているのが軽水炉・原子力発電所だということです。
今、安全基準と言っているのは、非常用のディーゼルジェネレーターを何台配備しました、それを回すための油を何トン用意しました、放水するためのポンプ車を高台に置きました、安全対策を施しました、ということです。
これは何をやっているかと言うと、1,000℃で溶ける鉄の鍋釜を、1,000℃に持っていっちゃいけないので、水を回す時間を引き延ばす作戦なんです。
電源喪失で電気が来なくなったら、水が回せなくなる、ポンプ動かない。そこでポンプを動かすために非常用の電源を用意しましたと言ってるだけで、10時間が20時間になっているだけなんですよ。
では20時間超えたら?やっぱりメルトダウンなんです。つまり電気が来なくなった、電気が備蓄油でどうにもならなくなったら、必ず、100%メルトダウンが起きるんです。
こんな危険な技術を、しかも技術的に完成しない物を、完成しましたと称する科学者、安全であると称する政治家、常識では考えられないです。
■地震のストレステストは存在しない
平議員:今のストレステストは何をやっているかと言うと、津波が来て、水がそのジェネレーターなどを水浸しにしていったら、どうシビアアクシデントに至るか調べているんです。地震については調べていないんです。
質問者:大飯の再稼働に至るまで、ストレステストはさんざん言われてきたけれど、この内容に、そもそも地震のリスクというものが含まれていない。無茶苦茶な話ですよね。
平議員:無茶です。しかもあの建物がドンッ!と直下で重力で落ちると、最高980ガル(ガルは重力加速度)になるんですね。それを受けても、700や800まで大丈夫、ということを言うんですが、ちょっと待って下さいと・・・。
(建屋は)複雑なスパゲッティのような管の集合体なわけなんですよ。そこがドン!ときて、大きく揺れた時の振動に対する影響はどうか、これは解析してないんですよ。
質問者:今ドン!と来ても大丈夫だと言っているのは鍋釜(圧力容器や格納容器)の話であって、それを支える膨大な配管がどういうふうになるかということを解析してない・・・。
平議員:私は見たことがないです。

■原発技術は未だに黎明期にある
― 高速増殖炉が機能不全になっていることについて
質問者:(高速増殖炉は)今までの技術はみんな進歩してきたんだから、絶対うまくできるという平行線議論で終わりになってしまうんですが。
平議員:絶対にうまくいかないです。今まで私たちは火や高層ビル、ジェット機など危ないものをコントロールしてきている。
放射能だって同じだと言いますが、車、高層ビル、ジェット機も何十万という中で私たちは咀嚼してきているわけです。何度も事故を起こして失敗しながら。
原子炉は(世界で)400ですよ。400基という経験は工学的には全くゼロに等しい。こんなものまだ黎明期以前ですよ。実験機ですよ。
質問者:そういうふうに見るんですね。工学的に見たら、400回しか造ってないというような。トライ回数もエラー回数も少なすぎるというような。
平議員:少なすぎます。これを何千何万とやるなら、いずれ管理のためのノウハウが増えていくかもしれません。しかも多くの悲惨な失敗を積み重ねながら、私たちは飛行機も高層ビルも高速鉄道も管理した。
しかし原子炉は失敗が許されないでしょう。あと何十回と失敗できますか?
質問者:今人類史では3回程度ですよね。スリーマイル、チェルノブイリ、福島と。
平議員:特に高速増殖炉のような金属ナトリウムを回す原子炉は事故が起きると悲惨ですが、このような原子炉を何十基、何百基と造らないと、完成しないんですよ。私たちの使っている科学技術というのはそういうものなのです。