
先日福島の原発事故地の近くで田植えをしている記事を載せたところ、放射能汚染について、広島在住の高校生の方から以下のようなご意見をいただきました。
【コメント】「広島人なので言わせてもらいますが、広島でも田んぼ作ってましたよ、1946(昭和21年)くらいから。こっちの方がなんぼか怖いのでは」
この回答が長すぎてコメントできなかったため、こちらに掲載することにしました。結論として福島原発事故は、放射能汚染に関しては広島原爆投下時よりも遥かに状況が悪くなっています。
太平洋戦争当時、米国は3つの原子爆弾を製造していました。そのうちの2つは広島と長崎に投下され、残りの1つは日本への原爆投下以前に核実験用に使用されました。
昭和20年8月6日の午前8時15分、米軍爆撃機B-29・「エノラ・ゲイ」は、広島市街の高度1万メートル上空から原爆「リトルボーイ」を投下させました。
爆弾は約43秒後に高度約600メートルの上空で核分裂を起こし爆発しました。原爆は空中で爆発したため、放射性物質はきのこ雲と共に成層圏まで舞い上がって空中で四散し、放射能は世界中に拡散しました。
実は広島に降下した放射性物質は全体のほんの一部であったのですが、それでも後に黒い雨となって地上に降り注ぎ、多くの人間を被爆させました。
ここが原発事故と違うところです。原爆は地面に直撃した時ではなく、空中で爆発するように故意に設計されていました。
なぜなら、地面で爆発させると放射能汚染がさらにひどくなり、人間がその地に立ち入れなくなるからです。
米軍は原爆投下の後に調査のため、現地入りする計画を立てていたので、汚染がひどければ原爆の事後調査・研究ができなくなるからです。
つまり米軍は、原爆投下された地があまり放射能汚染されないような投下方法を採用していたのです。しかしこれはあくまでも米国の都合のためでありました。
では原爆が地面に直撃した時に核爆発を起こしたらどうなるでしょうか。これは広島・長崎原爆投下前に行われた核実験で実証されています。
昭和20年7月16日に米国のニューメキシコ州ビンガム近くで行われた人類初のこの核実験は、現在では「トリニティ実験」と呼ばれています。
ニューメキシコ州ビンガム近くの核実験場
この実験では原爆を地上で爆発させたため、実験場からは現在も通常の約10倍の放射線が放出され、今でもこの地は立ち入り禁止となっています。
もし広島・長崎でも原爆が地面で炸裂するような設計方法をとっていたとしたら、日本でも原爆投下地は、現在でも立ち入り禁止区域になっていたかもしれません。
以上が原爆投下と原発事故の間の相違です。京都大学原子炉実験所の小出裕章氏の計算によると、福島原発での放射性物質の排出量は、広島原爆の実に400~500発分と言われています。
福島原発事故のため地上近くで噴き出してきた放射能は、地を舐めるように広がって汚染していきます。その上放射能は広島原爆の何百発分なので、放射能汚染度は広島に比べて桁違いの量となってしまったのです。
それにしても、広島の学校では原爆や原発に対する特別な教育など行っていないのでしょうか。原爆にいわれのある特別な地で、何も原爆に対しての特別な教育を行わないというのは、どこか片手落ちの気がします。