
「看板から米英色を抹殺しよう」
日本では太平洋戦争中、敵国であるアメリカ・イギリス文化を表現するような言語を排除していました。
しかし既に日本語の中には英語が少なからず浸透していたため、全面的に追放するのは容易ではありませんでした。
例えば『写真週報』第257号では「米英レコードをたたき出そう」、「(内務省と情報局による)廃棄すべき敵性レコード一覧表」などの特集を組む一方で、同誌同号で掲載されている銃後の国民生活を説くコラムでは、「シャツ」「コンビネーション」「チョッキ」などの英単語が使用されていました。
こうした矛盾を残しながら、戦中の日本では既に英語で定着してしまった和製英語を純粋な日本語に修正するという作業が行われました。
以下がその苦心作です。
■野 球
・「ストライク」⇒「よし」、「本球」
・「ストライクツー」⇒「よしふたつ」
・「ボール」⇒「だめ」、「外球」
■タバコ
・「ゴールデンバット」⇒「金鵄」(きんし)
・「カメリア」⇒「椿」
→「タバコ」(tobacco)という言葉自体が英語ですが、使用していてその矛盾に気づかないのでしょうか?

昭和12年のタバコ広告
■飲食物
・「サイダー」⇒「噴出水」(ふんしゅつすい)
・「キャラメル」⇒「軍粮精」(ぐんろうせい)
・「コロッケ」⇒「油揚げ肉饅頭」(あぶらあげにくまんじゅう)
・「カレーライス」⇒「辛味入汁掛飯」(からみいりしるかけめし)
■筆記用具
・「HB」⇒「中庸」(ちゅうよう)
・「H」⇒「硬」(こう)
■音 楽
・「サクソフォーン」⇒「金属製曲がり尺八」(きんぞくせいまがりしゃくはち)
・「バイオリン」⇒「提琴」(ていきん)
・「コントラバス」⇒「妖怪的四弦」(ようかいてきよんげん)
・「ピアノ」⇒「洋琴」(ようきん)
■その他
・「レコード」⇒「音盤」(おんばん)
・「カンガルー」⇒「袋鼠」(ふくろねずみ)
・「チューリップ」⇒「鬱金香」(うこんこう)
・「パーマ」⇒「電髪」(でんぱつ)
・「酸素マスク」⇒「与圧面」(よあつめん)
しかし表面だけ米英語を禁止しながら、アメリカで発明されたものを使用し続けるという行為は、どうも中途半端で整合性がとれません。どうせやるなら徹底的にやるべきではないでしょうか。
自動車も電気も洋服も米英で発明されたものだから使用してはいけません。
だから仕事に出かけるときは、ちょんまげを結って着物を着てカゴに乗り、市ヶ谷の大本営まで出勤します。
戦う時も米英で開発された銃や戦車、航空機は使わず、刀・槍と弓で馬に乗って突進します。夜も電気は使わず行燈と提灯の火で作戦を立てます。
まあでもこれじゃ戦争になりませんね~ ( ̄Д ̄;;
日本では「木を見て森を見ず」的な政策が多いので、茶化したくなってしまいます。(^_^;)