『ジパング』13巻(航跡134、帰郷)では、ミッドウェー海戦で戦死したことになっている草加少佐が、故郷の岩手にこっそり帰郷し、自分の墓が立っているのを確かめます。でも結局お寺の住職に見つかってしまうんですが・・。
戦死したはずの草加少佐(左)、故郷の檀家の住職(右)(ジパング・13巻)
戦時中に戦死の報告を受けたが、戦後ひょっこり当の本人が復員して来たという例は、実際に時々ありました。
夫や息子が帰ってくれば、家族は当然喜びますが、中には手放しに喜べなくなってしまったケースもありました。
仮にその戦死した軍人を長男Sとします。村ではSの葬式も済ませ、家には両親とSの独身の弟と、Sの嫁が残されました。
当時の家では、長男が死んでもその妻は、既に嫁いだのだから実家へは帰らず(又は帰れず)、婚家へそのままとどまります。
Sが戦死したので跡取りができず、今度はSの弟がSの嫁と結婚させられます。Sの嫁は弟より3歳年上でした。
このように死んだ兄の嫁を弟が娶るというのも、今では考えられませんが、当時では普通の慣わしでした。両者ともあまり気乗りがしなかったが、家の存続のため半ば仕方なく結婚しました。
しかしそれが、取り返しのつかない事態へと発展することになってしまいました。
やがて終戦後、死んだはずのSが突然村に帰ってきました。ところが、家に帰った途端に、お腹が大きくなった身重の嫁を見つけ逆上、大暴れして一歩間違えれば殺人沙汰の大騒ぎになりました。
弟はSが振り回していた武器を取り上げようと取っ組み合いになり、Sの元嫁は狂ったように泣き叫び、騒ぎが終息すると行き場のないSは、親戚の家に引きこもってしまいました。
その後の一家の顛末はどうなったのかは書かれていないのですが、このように戦争の影響で人生を狂わされてしまった人達もいたのでした。