お待たせしました。いよいよ、第2部「反逆編」のスタートです。
あの歴史的大戦から数日後のことだった。戴冠式を終え、正式に地底帝国の皇帝として任命されたウルブレードは、庶務に忙殺されていた。地底帝国全体を統括する権限を与えられたはいいが、反面、風切頭領軍や呪術軍師軍のいざかいまで調停しなくてはならなくなったのだ。
今日も、風切頭領軍のモグーン兵と、呪術軍師軍のモグーン兵が、領地の範囲をめぐって喧噪を起こしていると聞き、両成敗してきたところだった。ただ単に戦闘に備えてトレーニングするのも疲れるが、争いごとを治めるのに奮迅するのはもっと疲れる。と、いうよりも、細かな雑務を億劫としているウルブレードにとっては、拷問に近かった。
「やれやれ。皇帝になるということは、こういう面倒事を引き受けることになるって想像がつかなかったのかしらね」
「まったくじゃ。あの若造に最高の権力を握られるのは癪じゃが、ああも大変な思いをせんでよいという点では、皇帝にならなくて良かったの」
ソニクジャクとノロイムカデは、皇帝の補佐官という立ち位置にいたが、特にウルブレードをサポートしようという気はないらしい。これまで争い合っていた経緯からすれば至極当然のことだった。代わりに、補佐官らしい業務をしているのは、ウルブレード直属の部下であるブルドリラーとガゼルスピアーだった。
「コラ、待てー」
今まさに、ウルブレードの代わりとして、ガゼルスピアーが任務を遂行しようとしていた。ただ、やっていることは、泥棒の確保だ。容疑者のモグーン兵は、風切頭領軍の出身らしく、素早い動きでガゼルスピアーを翻弄していく。右に逃げたかと思えば、左に方向転換したり、あるいは木の枝にぶら下がったりと、完全にガゼルスピアーを弄んでいる。
モグーン兵に逃げられたなんて報告したら、獣刃大将軍の名折れだ。ガゼルスピアーは、無我夢中で追いかける。
すると、逃亡しているモグーン兵の目前を、別のモグーン兵が横切ろうとしていた。モグーン兵にしては大柄で、他の個体と比べて体格がいい。
「あ、ちょうどいい。そこのモグーン兵、そいつを止めてくれ」
ガゼルスピアーが声を張り上げた。泥棒のモグーン兵は、目の前の邪魔ものを迂回しながらかわそうとした。だが、右方向へと足を踏み出したとたん、体格のいいモグーン兵によって、顔をわしづかみにされたのだった。