仏人女性と1ヶ月旅した愛憎日記 | Travel is Trouble 109カ国目

Travel is Trouble 109カ国目

トラブルに塗れた旅行記
目指すはバックパッカー逆バイブル
反面教師で最高の旅を!

意気投合したフランス人女性
彼女とアフリカを共に旅した記録

彼女とは1ヶ月間だけ一緒に旅をした
良い意味のぽっちゃり白人

彼女の笑顔は魅力的で、見ているだけで癒やされる
これまでアメリカやドイツ、ポルトガル、スペインなど各国の旅人と共に旅をしてきた経験があったのだが、フランス人女性と一緒に行動するのはこれが初めて
後述しているのはヴァレリーとの旅の話なのだが日本人の私にとって何もかも驚かされることばかりだった

ホテルはセキュリティーの意味も込めて基本的にドミトリーではなくダブルルームに宿泊
そこで目に付いたのは、背中越しではあるがブラジャーを目の前で外す行為や下着一丁でもお構いなしという格好
そして取ったブラジャーやパンツはその辺に放置している
もしかして俺のこと好き?
と勘違いしてしまうような振る舞い
「彼女はいるの」
「家族とは仲が良いの」
「何人子供が欲しい」
など積極的に話してくるではないか
これはもう確実だろうと4日目の夜中
ヴァレリーが眠っている時に起こし気持ちを伝えると
「オ〜ノ〜」
っておいおい!
付き合える流れだったんじゃないの?
どゆこと?!
笑いがこみ上げそうになったのを必死で隠した
早々に振られたのだが、
「好きな人に『あ、この子好きだな』とか『いい人だな』と思われるには、(中略)両方が美しいなと思うというような同じ感動を同じ時点で受け止めるのが一番効果があります」
という故永六輔師匠の言葉を胸にまた共に歩みだすことに決めた

ヴァレリーと行動を共にしていてどうにも腑に落ちないことがあった
それは「ありがとう」を全く言ってくれなかったこと
1ヶ月も一緒にいて一度も言われないのには正直驚いた
中南米や中東、欧米各国の人々はちょっとしたことでもありがとうとお礼を言ってくれるのだが、ヴァレリーは全く言わない
ここで書いていて思い出したのは、屋久島を一緒に旅したフランス人男性もありがとうと言ってなかったなということ
これはどうもフランスの文化や教育に原因があるのかもしれないが、食べ物をあげたりお金を貸してあげたり車に轢かれそうになった所で肩を引き寄せて助けてあげたりしても何一つ礼の言葉がない
こちらとしても甲斐がない
それ以上に相手はこの行動に対して感謝すらしておらず、余計なお世話だと思っているのかもしれないとさえ感じてしまう

ある時から笑顔がなくなったヴァレリー
話す時はただでさえ深い眉間のシワをさらに深くする
私に対して何か苛立っているのが分かるのだがその理由が全く分からない

出会ってから3週間が経った頃、ヴァレリーとの仲は険悪に
それはタンザニアとザンビアを結ぶタンザン鉄道を3日間乗車した直後
私とヴァレリー、タンザン鉄道で知り合った日本人・カツ君と他3人で雨の中、傘もささずにATMを探して歩いていた時だった
事前にマップアプリでATMの場所を把握していたので、次のT字路を右に曲がるように指示すると、
「いや、左にATMがあったから左に行く」
と言い、全員それに従い左に向かったのだが、全くもってATMの気配がない
するとマップアプリを取り出し
「あ!やっぱり右だった」
私と2人だけで行動していたならまだしも、全員が雨に打たれているこの状況で適当な行動をしたことに怒り心頭
「お前はいつも私の意見を聞かないよな。何回こうしてミスを繰り返せば気が済むんだ!」
と怒鳴ると、
「彼が怒ってるよ〜!アハハ!」
と笑いだしたのである
この一件をきっかけにヴァレリーとは口を聞いてやるものか!と心に決めた

いつもと違う朝の到来
いつもはヴァレリーと同じ時間に起床し、一緒に朝風を感じながら散歩しつつ朝食を食べるというルーティーンが終焉を迎えたのである
ベッドでゴソゴソと起き出すヴァレリーを尻目に宿を出て一人朝食を食べに行く
昼間に宿に戻ると
「今から昼飯を食べに行こう」
と誘われるも一言
「No」
とだけ伝えて部屋にこもる
翌日は先に目覚めていたヴァレリー
挨拶してきたので目を合わさずに返事だけする
その後は前日と同じように部屋にこもる
でもこの日は部屋に誰もいなかったので感極まって号泣
泣いて少しはスッキリした

その日の昼、ヴァレリーが動いた
キッチンでラーメンを作っている時
背後から身の毛もよだつような視線を感じ、首を動かさずに左目の端っこでギリギリ分かる範囲で見る
腕を組んで仁王立ちするぽっちゃり
気付いていないフリをしながらしばらくラーメンを作っていると、今度は私の右前方にガッチリと視界に入ってくる
そして一言
「なんで怒っているのか説明しろ!」
と言うので
「お前が私の意見をいつも聞かないことに怒っている」
とだけ伝えた。すると
そんなことはない。お前の意見をいつも尊重してる。そんなことよりこの前一緒に外を歩いている時にお前はマップアプリを開いて全然景色を楽しんでなかった! 私は地図を見ないで景色を楽しみたいんだ。楽しめるなら迷子になったっていいんだ!」
と私の肩を小突きながらまくしたててきた
迷子になりたい?笑
そんな人この世にいるのか!?
それをあたかも正義かのように振りかざしてくることに驚き言葉を失った
もう我々の修復は不可能だなとこの時悟った
「私は明日のバスで次の街まで行く。今からバスのチケットを予約してくる」
と言い放った
そしてボクサーのフェイスオフかのように何も言わない私を睨みつけながら外に出ていった

急展開を見せたのはその日の夜だった
「ボロネーゼを作りすぎちゃったから、もし良かったら一緒に食べてくれないかしら?」
と人が変わったかのようなヴァレリー
「余った分は明日食えぽっちゃり!」
と言えるほど鬼畜ではない
逆に何かその不器用な誘い方が可愛く思えて仕方がなく、同意することに
このシチュエーションで別々に食べることは考えられない
あ! 絶対に避けることができない完璧な策略に見事はめ込まれてしまっている

テーブルに付いて、お世辞にも美味しいと言えない味なしボロネーゼを食べている時
「さっきバスのチケットを予約してきた。私の隣の席も空いていたから一応2つ席を予約しておいたから」

…涙が出そうになった

無視するという精神的拷問を行った私とまだ一緒に旅をしてくれるというのか
感謝と共に、後悔の念に駆られた
とここまで来るとハッピーエンドの流れなのだが、やはりあの無視戦法が響いたのか、次の目的地に着くなりヴァレリーはすぐに他の欧米人旅行者と行動を共にするようになり、パーティーに参加したりビクトリアの滝に行ったりして楽しんでいた

もちろんそこに私はいない
それでも欧米人達と楽しそうに過ごす彼女を見ていると、私が一番好きだった頃の彼女の笑顔を再び見れたので、それだけで幸せに思えた

復縁は突然に

ヴァレリーと関係はザンビアで終了かに思われた
しかしザンビアからボツワナ、ナミビア、南アフリカに行くルートの旅人が他に見つからなかった
「明日、ボツワナに行こうと思ってるけどヴァレリーはどうする?」
と聞くと
「明日は天気が悪いから私はここに残って明後日に行く」
…やった!
とうとうこのわがままぽっちゃり仏人と別行動できるんだ!
本当に良かった…
なんだろう
この蟠りは一体

翌日、私はザンビアのリビングストンからボツワナに入国
昼過ぎに出発したからか、乗り合いタクシーが中々出発せず、国境を越えたのは夕方に
カサネという国境の街のホテルに宿泊
この辺りは安宿がないのでテントをホテルの敷地に張らせてもらい、安く宿泊するのが定石
無事に交渉成立かと思ったのだが
「雨が降るから部屋使いなさい」
嬉しい一言だった
嬉しかったのだが…何か足りないよな

チョベ国立公園を目指す
アフリカでサファリ最安と名高いチョベ
例えばケニアの有名なマサイマラのサファリだと二泊三日+え$300程度だが、チョベなら半日で3000円程度
さあチョベに行くバスに乗り込もう!
…あれ、なんか見覚えのあるぽっちゃりがいるけど
ぽっちゃりヴァレリーだ!!!
チョベリバなんだけど!
でもなんか安心してしまっている自分がいるのも確かではある

一緒のバスでチョベへ
席は別々
最悪の雰囲気
もう彼女と出会った頃のような関係には戻れないのだな

途中のトイレ休憩でバスが停車
バスから降りて、一言会話したのだが、その時彼女のスマホの画面がチラッと見えた
そこには日本のサラリーマンがゴミ出しをしているような動画が
彼女は日本、ましてやアジアに一切興味がないので日本のドラマを見るなんてありえないはずなのだが一体どうゆう風の吹き回しなのだろうか
もしかして、私と価値観があまりにも違うから私を理解しようとして日本のドラマを見ているのか…
真偽は確かめなかった
私の予想が外れているのだとしたら、それを確かめたくなかったから

チョベ到着
この辺りもホテルが高いのでチョベサファリロッジというテント泊可能なホテルに宿泊することに
我々はそれぞれテントを持っているのだが、ここで彼女は驚くべきことを口にする
「私のテント大きいから一緒に使う?」
…どゆこと!?
我々はもう終わってるんじゃないの?
多重人格者なの?
日本のドラマ見て何か変わったの?
もう理解が追いつかない
「いや、自分のテント持ってるから」

反射的に言ってしまった…
相手にとってはこれ以上ない言葉だっただろう
それ対して何も考えのない咄嗟に出てしまった言葉
なんて最低な男なのだ

いつもそうだった
ロックバンド・Syrup16gのライブに行った時
「みんな愛してるよ〜!」
ってお馴染みのロッカーセリフに対して
「嘘つけー!」
って言ってしまった過去
しかも席は最前列の真ん中
周りの人達からめちゃくちゃ見られた
ボーカルはキョトンとした表情で私を見つめる
もう病気だ

そんな病気がここにきて咄嗟に出てしまった
蟠りを感じていたのではないのか?
何か物足りなさを感じていたのではなかったのか?
それなのになんでヴァレリーのテントの誘いを断ったのだ

この後スーパーマーケットで
「お前は自分の欲しい物を探しに行け!」
とキレられてしまった
しかしこれはさっき私が蒔いた種
私の一言でヴァレリーは致命傷を負っているのだ

私達の関係は不思議だ
互いに傷つけ合い相性は最悪なのだが離れることができない
ナイロビで一緒だった友人2人がそれぞれタンザニア首都・ダルエスサラームでタクシー強盗に遭い帰国、そして同じくタンザニア・モシで昏睡強盗被害に遭って帰国
アフリカというのはそういう土地だ
二人共一人で旅をしていなければこんなことにはならなかっただろう
互いにメリットを理解しているので別々に旅することはせず、仕方なく一緒にいるのだが時間が経過する毎に不思議と一緒にいないと物足りなさを感じるようになっていった

さよならヴァレリー

チョベからナミビア・ウイントフックまでは一緒に行った
ウイントフック到着後
「私は違うホステルに行く」
とヴァレリー
そうか、もう私と一緒に旅したくないんだね
これにて解散なのか
なんか釈然としないがまあいずれは解散するんだもんな
気持ちの整理がつかないまま彼女は去って行った

宿では韓国人達と意気投合し一緒に旅をすることに
韓国人3人と私で一週間のレンタカー旅
決起集会だと思ったら目の前に悍ましきぽっちゃり
ヴァレリーだ!
なんでももう一方のホステルが廃業になっていてこちらにやってきたという
しかしもはや知り合いではないというくらい彼女と話すことはなくなった
これでいいんだ
これで

数日していつの間にか彼女の姿が消えていたが、以前ほど気にすることはなかった

3日連続サムギョプサルという地獄レンタカー旅を終え、南アフリカ・ケープタウンへ

宿の階段を上がると目の前には宝石のような瞳を持った金髪の白人、やけにぽっちゃりしている
ヴァレリー!
腐れ縁
これを腐れ縁と呼ばずして何と呼ぶのか

約10日振りの再会
ここまでヒッチハイクで旅していたことや2日後にベナンに行くことなどを教えてくれた
彼女の側には一人のフランス人男性
ヴァレリーは彼に猛烈にアタックされている
以前だったら気になっていたかもしれないが、もはや私には関係ないことと思えるようになっていた

本棚のある部屋でリラックスしていた
するとヴァレリーがブツブツと独り言を言いながら本を探しにやってきた
こちらをチラチラと気にしながら探している
一体何しに来たのだろうか
これ以上、彼女と関わるのは得策とは思えないのだが

私があなたを好きな時、あなたは私を好きではない
あなたが私に振り向いてもらいたい時、あなたへの興味がなくなっている
気持ちのすれ違い
一言で言えばそうなるのだろう
しかし互いの価値観の違いはこの上ない障壁となっていた

ヴァレリー出国の日
彼女が出発するまで部屋でじっとしていた
別れの際に、彼女と対面してしまっては私にとっても、彼女にとっても良くないと考えたからだ
もし対面した時に、私の気持ちが溢れてしまう姿を彼女は一体どう思うだろうか
私の心の声が零れてしまい、この場で上手くいったとして今後価値観の違いという障壁を乗り越える方法は見つかりそうにない
でも本当は会いたかった…

ヴァレリーは行ってしまった
愛憎に満ちた1ヶ月、幻かのようにあっという間に過ぎ去った日々
ヴァレリーとの旅で培った白髪
鏡に映る白髪を見ると思い出す
あの頃の彼女の笑顔を


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