先日、職場から帰宅するため駅まで歩いていたときのこと。
雲行きが怪しく、歩き出してすぐに雨が降り出しました。
バスに乗るという選択肢もあったのですが、
これくらいの雨なら折り畳み傘で十分と思って歩いていました。
ところが、ある高校の前を通り過ぎたあたりから雨は大雨に。
すると、10メートルくらい先をその高校の女子生徒が一人、
ずぶぬれになりながら歩いていました。
彼女も雨は降らないだろうと判断して歩いていたのでしょう。
ボクは追い越し際、躊躇しましたが、
あまりにかわいそうなので一声かけて傘に入れてあげました。
変なオジサンに声をかけられたと勘違いされて、
断られるかと思いましたが、
あまりの雨降りに、
彼女も申し訳なさそうに傘に入ってきました。
しかし、このまま駅まで30分近く歩いていくわけにもいかず、
たまたま通りかかった食料品店へ飛び込んで、
ダメもとで傘を借りられないか聞いてみました。
すると、お客さんの忘れ物で長い間取りに来ていない傘があり、
それを貸してくれるとのこと。
「明日返しに来るんだよ」と伝えて高校生にその傘を渡して、
その子と別れて駅へと向かいました。
「世の中、捨てたもんじゃないな・・」
と思って歩いていると、
ふっと数十年前の出来事を思い出しました。
それはボクが大学生のころ。
駅から家に向かって歩いている途中、
それこそ今のゲリラ豪雨のような大雨に降られてしまいました。
傘を持っていなかったボクは、
小走りで少し先の公園へと向かいましたが、
そのとき、ボクの後方から傘をさして自転車でやってきた、
ボクより少し若い感じの女の子が、
ボクのそばで突然止まって、
自分の持っている傘を無言でボクに手渡して、
再び自転車で走って行きました。
映画のラブストーリーの出会いのシーンのような出来事に、
ボクはポカーンと彼女を見送るだけでした。
どこの誰かも知らず、
その後も再び会うことはありませんでしたが、
大雨の中、ずぶぬれで走って行った彼女の後姿に、
ありがたさと同時に申し訳ないとの気持ちでいっぱいでした。
そのことをふっと思い出した瞬間、
「そうか、今日の出来事は、
その時の恩送りができたってことなんだ」
そう思うと、数十年前の申し訳ない気持ちが少し楽になって、
ちょっと清々しい気持ちになりました。
それにしても、数十年前のあの子は何だったんだろう?
もしかしてボクに淡い恋心を抱いていた子だったりして?
なわけないか!!