〈イソップ物語〉レビュー記事 | 韓国ミュージカルを 訳しまくるブログ

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 「本気」が感動的な公演を作る

ミュージカル〈イソップ物語〉レビュー

ユ・ジュヒョン中央サンデー記者

 

韓国文化芸術委員会

2023公演芸術創作産室今年の新作

ミュージカル〈イソップ物語〉レビュー

 

ウサギと亀、羊飼いの少年、キツネと酸っぱいぶどう...「イソップ物語」といえば自動反射で浮かび上がる寓話たちだ。国籍と人種を問わず、世界中の人々がとても幼い頃に読んだ、つまり誰もが知っている話だ。ところで、韓国文化芸術委員会公演芸術創作産室、今年の新作に選ばれた創作ミュージカルのタイトルが「イソップ物語」だなんて...。全く期待感がなかった。

 

しかし、タイトルと違って、私たちが知っているあの「イソップの話」ではない。ギリシャの口伝説話であるイソップの寓話をモチーフにして面白い物語が作られるオデッセイを想像力たっぷり込めて創造した。ところが、物語を作る人たちの「本気」に関する話がかなりジーンとする。「ブラックメリーポピンズ」、「ミルダンの誕生」など様々な小劇場ミュージカルで創作に小骨が太いソ・ユンミ演出が劇作と作曲まで引き受けて内功を発揮した。

 

ギリシャの小さな島サモス。貴族の娘ダナエは奴隷の息子ティモスにとり「小さなご主人様」だが、ある雷鳴の夜、不幸な事故でダナエの顔にやけどの傷跡ができた後、かけがえのない友達として一緒に成長する。しかし、二人の関係が貴族に発覚して、ティモスは遠くアテネの貿易商に売られていく。アテネで主人のシタスを助けて物を売るために薬売りのような語り手になったティモス。ある日、禁じられた実を全部売ったら、奴隷身分から解放してやるというシタスの提案を受けて、ダナエのもとに戻るための旅を始める。この過程で決定的な役割を担うのが「イソップ」だ。

 

ティモスは紀元前600年頃に住んでいたという作家イソップと、また他の多くの人たちと一緒に今まで語り継がれる物語を作り出した語り手の1人だったという設定だ。その語り手たちはみんな卑しい奴隷だ。教訓と知恵、ウィットでいっぱいのイソップ寓話は「一番低いところで一番低い声で」長年の時空間を超越して伝わってきたものだ。

 

でも昔も今もいい語り手たちは「君の話にはいつも質問がある。あまりに大きな考えと知恵は君を危険にするぞ」「みんなが気持ちいい話ばかりしろ、遠回しに言うな」「毒を隠して私に話をするなんて」みたいな話を聞くものだし、「お偉いさんの中に憎む人が多い」ものらしい。禁じられた実を売ってダナエの傷跡を癒す妙薬を得るために王に3ヶ月間話を聞かせることにしたティモスは、王を皮肉って冒涜したなどの罪で死の危機に瀕することになる。

 

新しい舞台ではない。3人のコーラスが話を引っ張って、身体劇の感じの振り付けで続いていくミザンセーヌは、最近小劇場ミュージカルでよく見られる形式だ。イソップ物語という素材自体も2600年前にさかのぼって「語り手」の原型を再照明するクラシカルな試みとして見ることができる。子供の頃の運命に逆らって別れた若い恋人が逆境を乗り越えてまた会うというストーリーテリングもよくあるラブストーリーのクリシェにすぎない。音楽もアリアスタイルのナンバーなしで水が流れるようにストーリーを続けていく小劇場ミュージカルの文法そのものだ。

 

しかし、この優しくて単純な昔の愛の物語が、決して時代錯誤的な時間の無駄ではなく、忙しくて慌ただしい日常にカンマのように撮られる癒しの感じを与えたのは、舞台の完成度の高い作りのせいだ。前衛的な現代音楽を演奏する派手なオーケストラではなくても、しっかりとした実力を備えたチェンバー楽団のクラシック音楽会を鑑賞した後の胸がいっぱいな感じというか。

 

それなりの反転もある。「ウサギと亀」の寓話で亀がウサギに勝った本当の理由は何だろう。ただウサギは怠け者で、亀は勤勉だったという式の解釈は、もうずいぶん前に時効が来た。亀は必ず行かなければならなかったし、それで本気で歩いていたという解釈が響きが強い。本気があれば行けるのだ。そこがどこでも。

 

ティモスも本気があったから死の節目を乗り越えて、あらゆる逆境を乗り越えてサモス島に戻る。ところが、再会したダナエは、これまで涙にくれてただひたすらティモスを待っていたわけではなかった。サモス島の貿易王になってそれなりに元気に過ごしていたし、顔の傷跡なんて彼女の人生に何の邪魔にもならなかったという結論が本当に良かった。イ・ヒョンフン、ソン・サンウン、ファン・フィなどの本気なパフォーマンスに涙を流す観客も多かった。

 

いい公演というのが、必ずしも新しい素材と形式を備えてこそ作れるものではないようだ。2600年前の素材とありふれた形式でも、「本気」が良い物語を作り、感動的な公演を完成させるということを見せてくれた舞台だった。

 

〈イソップ物語〉4月14日まで 忠武アートセンターブラックで上演中。