〈テレーズ・ラカン〉観覧 | 韓国ミュージカルを 訳しまくるブログ

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韓国ミュージカル
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近頃はメモ付き写真アルバムとしても使用中。


エミール・ゾラの小説「テレーズ・ラカン」が原作のミュージカル。韓国的発音では「テレーズ・ラーケン」

 

聞いていたほど物語に嫌悪感は感じなかった。あまりにも実在しなさそうな人物たちだったからかもしれない。大人のグリム童話って感じだった。

 

(あらすじ) 

1860年代のフランス。 幼い頃、父親から叔母に預けられた後、病弱ないとこ、カミーユと共に幼年時代を過ごしたテレーズ。テレーズは叔母と一緒にカミーユの世話をしながら父親を待つが、父親は結局帰ってくることができない。自分の意志とは関係なく、カミーユと愛情のない結婚をするテレーズ。

 

無意味な結婚生活が続くある日、カミーユの幼い頃の友人であるローランが彼らを訪ねてくる。テレーズはカミーユとは違い完熟した男性美を持つローランに瞬く間に心を奪われる。二人はすぐに密かな関係に発展し、互いに溺れ始める。お互いを貪る密会だけでは満足できなかった2人は、障害物であるカミーユを消す計画を立てる。微塵も疑われない完全犯罪に成功するが、すでに彼らには誰も予想できない破滅の影が垂れ込めていたのだった···。

 

人間に潜在している本質的な欲望が呼び起こした破局が吹き荒れる。


【追記:ローランの背景メモ】裕福な父親の下で育ったが、放蕩で女性遍歴の激しい父親に家庭内暴力を受け、母親が彼に傷つくのを幼い頃から見守ってきたローラン。唯一の友人で愛情関係だった母親がそんな父親のために自ら命を絶つと、父親と絶縁をして外の世界に出るが、次第に知らず知らずに父親に似る自分の姿に衝撃を受け、母親の後を追おうとする。その時偶然出会ったカミーユ。招かれてカミーユの家に行くが、自分が望むすべてがそこにあり、その構成員になることを望んでエスカレートしていく


 

 

10月26日

このメーキャップ
どう見ても幸せな役ではないね
可愛くない
 
腹立たしくなるような登場人物/物語と聞いていたけど・・・。
 
面白かった。
 
原作はフランスでも、ミュージカルは韓国創作だからだろうか。ちょっと韓国ドラマのノリもあるような。マクチャンドラマ?
 
カミーユは最初のシーンでテレーズに「キスしようか」と持ちかけた時も、彼女に「キスして欲しい」と言わせる。
 
カミーユに相談されたローランが「彼女を自分のものにしたいなら…」とアドバイスを始めた時はこう言う。「なぜ僕がテレーズを自分のものにする必要がある?彼女は初めから僕のものだ」
 
カミーユに異常性を感じたので殺されても仕方ないかもと思ったりした。
 
事件後のテレーズとローランがヨレヨレになっていくのは自責の念があるからこそで、真からの悪人では無かったと言えそう。愚かなだけで。
 
テレーズの場合、その愚かさは一応母親代わりだった夫人に責任があるような気もする。カミーユの異常性も同様か。
 
音楽が面白い。〈ブラック・メリーポピンズ〉のような独自性を感じる。
 
ラッキーにも観客との対話の日。
前半の幸せっぽいのと、後半にローランの苦悩を表現する「苦痛」が追加されたそうだ。最後の決断に至る説得力が増したとのこと。


テレーズ役のオ・ソヨンさんが不思議なバイブレーションの歌い方だし、ローランとのデュエットも不協和音で、テレーズの内面世界を前衛的に表現してるのかと思ったら、副鼻腔炎で音程が取れなかったらしい。
 
それで出演を続けるって、びっくりした。
 
 

10月29日

ヨヌさんの声が美しい〜ラブ

前回の不協和音とは全く違うナンバーになっていた。

 

ジョンウォン君の声は相手がヨヌさんのようにツヤのある声だと、合わせた時に絶大な威力を発揮すると思う。

 

殺伐とした物語に美しい歌声が響いて絶望感アップ。美しいはずのない物語が、美しくさえ見えてしまう。

 

 

12月9日

ソンミン・テレーズ。くぐもった感じの低い声の歌い出しで、ヨヌさんの美声には敵わない?と思っていたら、物語が進むにつれ感心することになった。
 
ヨヌさんの声を美しいバイオリンに喩えるなら、ビオラでスタートした彼女の声はバイオリンにもなり、時にはピアノにもなり、その時その時の状況や感情によって多彩な表現がされていた。
 
階下の夫人に呼ばれると自動人形のように反応して、虐待と呼べるかもしれない長年の抑圧が彼女を支配しているのがよく分かった。
 
夫人を嫌っているテレーズなのに、幼子が母親の胸に逃げ込むかのように、カミーユの幻影に怯えながら夫人に縋り付くのを見たら、やはり抑圧と表裏一体の依存関係なんだろう。
 
こんな風にテレーズがまともな判断力のある大人に見えないので、カミーユを殺しても、それを悔やんで元に戻せとローランを責めても、批判的な気持ちにはならなかった。
 
前からカミーユは変なヤツと感じてはいたが、今回気づいたことがある。初演のカミーユは登場するとテレーズに一輪の花をプレゼントするが、今回のカミーユは渡さない。そのままテーブルに座り本に挟んだ花を押しつぶす。押し花にするつもりなのだろう。
 
2人の関係が良く表れていると思う。そういう細かい演出の違いが多くありそうだ。
 
ローランは固定だったが他のキャストは制覇。全員それぞれの持ち味で良かったと思う。ソヨンさんも演技は良かったので体調不良は残念だった。

10月とは違うラインナップ。1階のカフェがトゥーサムプレイスに変わるらしく工事中だった。