演劇〈ヴィンセント・リバー〉観覧 | 韓国ミュージカルを 訳しまくるブログ

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韓国ミュージカル
想像と創造だらけの翻訳
(注意: 目標はネタバレ100%)
近頃はメモ付き写真アルバムとしても使用中。



(あらすじ)

ヴィンセントが殺された。

殺された理由は同性愛嫌悪犯罪。

一夜にして息子のヴィンセントを失ったアニタは、深い喪失感と共に彼が明らかにすることを拒否した隠された性アイデンティティと向き合う。

毎日繰り返してみても疑問だらけだ。

その時、家の前をうろつくデイビーに出会う。

デイビーはヴィンセントが死んだ現場にいた唯一の目撃者だ。

アニタはデイビーと一緒に物語を始める。

 

ヴィンセントの死には

どんな秘密が隠されているのだろうか。

 

 

8月6日

 

 

9月7日

 

 

9月14日

 

 

分からない。

 

共感できなくて分からないのではなく、

 

共感したいのに

想像がつかなくて分からない。

 

 

3ヶ月前

同性愛者が愛を交わす場所として有名な

荒れ果てた駅のトイレで

1人息子が惨殺された

 

息子を殺された上に

同性愛者を息子に持つ母親として

後ろ指をさされるアニタ

 

息子が同性愛者だなんて認めたくもない

 

バスの終点まで行き

知らない公園のゴミ箱に捨てたのは

近所に捨てることができない

息子の部屋に隠されていた雑誌だ

 

彼女の周囲をうろつく謎の少年は

逃げるように引っ越した先にも姿を現した

 

犯人の1人だろうか?

家に呼び入れると

死んだ息子の発見者だと言う

通報者は少女だったはずなのに

 

「発見したのは自分だが

通報したのは婚約者」

 

「壁に飛び散った大量の血と

雪に覆われていく死体が

脳裏から離れない

些細なきっかけで泣いてしまう

被害者の母親と話をしたら

頭の中の彼が立ち上がり

出て行ってくれるかもしれない

だからあなたと話したい」

そう言うのは17歳の少年デイビーだった

 

ガンで余命僅かな母親を喜ばせる

それだけのために幼馴染と婚約したデイビー

 

妻帯者と付き合って妊娠し

1人で息子ヴィンセントを産んだアニタ

 

次第に語ることに没頭していく2人

多くのことを語り合ううち

奇妙な接点が浮かび上がる

 

デイビーはアニタが気づくよう

ヒントを与え続ける

ヴィンセントとデイビーは恋人同士だった

 

「その夜」のことを語り出すデイビー

 

ヴィンセントが殺されたのは

2人がトイレで逢っていた直後だった

 

人目につくのを恐れ

少年を先に出て行かせたヴィンセント

その後にやってきた酔っ払いたち

 

遠くから事件を見ていたデイビー

トイレから聞こえた暴行の音

 

暴徒たちが慌てて逃げ出していくのに

ヴィンセントだけが出てこなかった

 

立ちすくんでいたデイビー

ようやくトイレに戻り

ヴィンセントが死んでいるのを見るが

恐れに負けて逃げ出してしまう

 

翌日になっても発見された気配がなく

婚約者を家に送る口実で通りかかったフリをし

婚約者に通報させたのだった

 

ついに明かされる息子に関する真実を

凍りついたようにじっと聞くアニタ

 

その内面では

デイビーの告白が細胞を打ち砕いて

立ち尽くすしか無いようにも見える

 

無言で荷物を片付け始めるが

やがて長く叫ぶと

その後は一言もなく

 

黙って少年の身なりを整え

上着を着せて静かに送り出す

 

息子が襲われるのを傍観していた少年なのに

恨んでいる様子はない

 

彼の肩を両手で包み込み

ねぎらっているのか

これからしっかり生きろと応援しているのか

 

彼の背をさすりながら

黙ってドアから送り出す

 

あるいは微かに頷いて送り出す

 

そして空虚な表情で

アニタがソファーにかけると

 

暗転して幕。

 

 

 

分からない

 

分からない

 

自分が知らなかった息子に関する真実を

デイビーから聞くのはどんな気持ちなのか

 

愛する息子が惨殺された様子を聞いた母親が

叫んだだけで

なぜ取り乱さないのか

 

作者はアニタに

どんな感情を持たせたかったのだろう

 

アニタも

どんな感情を持つべきなのか

すぐには分からなかったのかもしれない

 

感情が無いかのように座っていたのは嵐の前の静けさで

 

これから何ヶ月も

あるいは何年も

様々な感情が

彼女を揺さぶり続けるのかもしれない。

 

 

(後日、PlayDBの月曜ライブを見たら、アニタ役の俳優さんが、偏見を乗り越えて癒しを得る物語だと言っていた。確かに最後のシーンで、3人のアニタの中で彼女だけが頷いていたので、癒され度が深いアニタだったのかもしれない。だが正直、観覧後私に残った感情に癒しの要素は探せない。)


そうか。

肝心なのは「許し」なのかもしれない。