本日2本目の記事シリーズ。昨年12月25日の記事です。
元記事
https://m.news.naver.com/read.nhn?mode=LSD&sid1=001&oid=005&aid=0001271880
"1日12時間2ヵ月働いて'0ウォン'…それが練習ペイなのです"
華やかな舞台裏の厳しいミュージカルアンサンブル…「練習は無給、舞台に上がれば8万ウォン」
"全席完売の声援に感謝いたします。 これはアンサンブルチームのおかげです"
舞台を終えた主演俳優は、アンサンブル俳優たちのおかげで公演を無事乗り切ったと感謝の挨拶をした。幕がおりて俳優らはみんな同じ舞台から降りてきた。しかし、一つの舞台に立った主演俳優とアンサンブル。彼らの通帳に押された数字は異なる。主演とアンサンブル(主・助演の後ろで一緒に踊り、歌を歌う俳優)なのだから違うのは当然ではないか。もちろん、違うのは当然だ。しかし単に違うというレベルではない。有名アイドル出身の主演俳優が受け取った1回の出演料は8000万ウォン。アンサンブルは8万ウォンを受け取った。ちょうど1000倍の差だった。
観客たちが公演場を最も多く訪れる年末年始。久しぶりに家族とミュージカルを観覧するため、チケットの前売りを試みた人ならばスターたちが勢ぞろいした華麗なラインアップに1度、10万ウォン前後する高いチケット代に2度驚くだろう。もっと驚くのはこんな派手な舞台裏で情熱を担保に起きている出来事だ。すなわち8000万ウォン対8万ウォンの現実。
"最低賃金ですか? 半分ももらえません"
2012年デビューしたチョン某(31)氏は、ミュージカル界に懐疑を覚えて2年前アンサンブル生活をやめた。ただ2時間の公演に向けて1日12時間に及ぶ練習量を2ヵ月間消化した。団体練習がない時は朝9時から12時まで舞踊の練習、午後ずっと歌の練習、夜遅くまで演技の練習をしながら、主・助演俳優になることだけを夢見た。しかし、2ヵ月間の練習が終わって通帳に押された金額は「0ウォン」だった。
ミュージカル界は一部の大手制作会社を除いて、慣行的に練習期間はアンサンブルに賃金を支払わない。労働時間ではないという理由からだ。チョン氏は「アンサンブル俳優たちは固定賃金なしに1回の公演あたり8万ウォン程度ペイを受ける」「公演期間よりはるかに長い練習期間に対する賃金が保障されず、生計を維持するのが難しい」と話した。
問題は、練習期間が欠かせないという点だ。関係者によると、中型作品基準の練習期間は平均2~3ヵ月がかかる。練習時間は普通、1日12時間程度。練習が足りなかったら、もっと長くしたりもする。
もし「練習ペイ」があるなら(2019年最低時給8350ウォン基準)、週5日8時間勤務を基準に月160万ウォンを受けなければならない。しかし、アンサンブルが実際に受け取る給料はこれにはるかに及ばない。2ヵ月間練習してから1ヶ月間30回の公演をすると仮定すれば、3ヶ月に240万ウォンを受ける。1ヶ月80万ウォン。最低時給半分の水準だ。
現在の大手ミュージカルに出演中のシン某(26)氏と、3年間大規模な作品に出演してきた俳優パク某(28)氏の事情も変わらない。彼らはアンサンブル活動が「情熱ペイ」と口をそろえた。シン氏は「私が公演した製作会社では練習期間中に交通費や食事代を除けば、支払われるお金はなかった」「それさえも、もともとの出演費からあらかじめ何パーセントかを引いて先払いをする形式」と明らかにした。
パク氏は「私の場合、一回あたりの賃金が7万ウォンで80回ぐらい公演をすると560万ウォンを受けとったが、練習期間を含めて5ヵ月間使うためには、一ヵ月に約100万ウォン程度を受け取ることになる」とし、「このくらいならば平均だ。イプボン(新人?)時代は1回あたり4万ウォンを支払うところもあると聞いた」と伝えた。
実際韓国ミュージカル研究会の調査結果によると、ミュージカル俳優の回答者407人のうち、43.7%は練習期間中の賃金を支給されなかった。精算された賃金が最低賃金に満たない場合も多かった。
このような事情のため、ほとんどの俳優たちは結婚式の祝歌、歌謡講師などの短期アルバイトをして生計を立てている。しかし、膨大な練習量と不安定な練習時間のために安定的な副収入源を求めるのが難しい現実だ。シン氏は「私もそうだし、同じ年頃の友達もバイトや他の仕事と共に(アンサンブルを)並行したいが、現実的に不可能だ」「1日にほとんど12時間練習を強行しているのに、どうやって他の仕事ができますか?」と訴えた。
情熱ペイが不当として不満を提起することもできなかった。あまりにも業界が狭く、内部告発者とされて不利益を受けることがあるためだ。アンサンブル3年目のチェ某(28)氏は「練習ペイを払わなかったり、不合理な賃金構造など、アンサンブルをしながら不当だと感じる部分も多いが、直接乗り出して問題を提起しがたい雰囲気」だとし、「ミュージカル市場があまりにも少ないため、問題を公論化する場合、今している作品で切られたり、以降に作品が最初から入ってこない可能性が大きい」と打ち明けた。
チケットパワーにひざまづいたミュージカル業界
それならどうしてアンサンブルは最低時給にも及ばない賃金を受けるようになったのだろうか。9年目のミュージカル製作会社で働いているキム某さんはその原因について「チケットパワーを持つ俳優に依存するしかない制作構造のため」と明らかにした。
ミュージカルの制作費は徹底的にチケット価格のみで構成される。政府支援金は、そのほとんどが公募戦の形式で支払われるために産業劇は政府支援を期待しにくい。だからと言って映画のように PPLを入れて、企業支援を受けられる余地も少ない。そのためにミュージカル制作費は純粋にチケットを売って得た収益金で埋めなければならない。
問題はミュージカルのチケットの主な購買層が特定俳優のファンダムという点だ。キム氏は「最近はミュージカルよりも俳優自体を見たくて来る人たちがはるかに多い。ある俳優が動かせるファンダムが1000人ならば、1000枚のチケット販売がそのまま保障される」「主演俳優のギャラが上昇を続けたため、相対的にアンサンブルペイが低くなった」と指摘した。
結局、ミュージカルの成否は、スター俳優の影響力にかかっており、スター俳優に支払われるギャラが多いほどアンサンブルに回ってくる賃金は減ることになる。
ここに最近、製作会社間の割引競争が公然と繰り広げられ、ミュージカル界の資金源は少し痩せているのが実情だ。キム氏は「チケットの値段が高いのではないか。割引イベントをしなければファンダムを除いて一般の人達があまり見に来ない。中劇場貸館料だけでも7000万ウォンで、大劇場は2億ウォン近くする。製作会社も難しい状況」と訴えた。ミュージカルの音楽監督であるキム某氏も、「率直に言って、私もそうだし、各スタッフいずれも最低賃金ももらえずに働いている」「公演終わって金持ちになるのは、1人や2人のスター俳優だけ」と話した。
賃金格差の解消には、作品性を高めて支援拡大しなければ…
チョ・ヨンシンミュージカル評論家は、賃金格差を減らすためには市場に揺さぶられない作品性中心のミュージカルを作らなければならないと助言した。彼は「(最近ミュージカルが)チケットパワーを意識し、過度に主演俳優を中心に劇を導いている」「その構造を脱し、作品性中心の劇を製作しようと努力すれば、劇中で脇役俳優やアンサンブルのキャラクターもますます大きく扱われることで、自然に賃金格差も解決されるだろう」と説明した。
積極的な政府支援が必要だという指摘もあった。 ウォン・ジョンウォン評論家は「賃金格差を減らすためには制作環境改善が必要」だとし、「より効果的な支援政策が必要だ」と話した。 公募展賞金形式の消極的支援を越えて、付加価値税減税の恩恵を与えるなど、積極的介入が必要だという。
ウォン評論家は「実際にニューヨークでは、多くのミュージカル公演が付加価値税の恩恵を受けている。 都市のブランドイメージ改善と雇用効果を認められたから」とし、「韓国ではまだこのような議論が行われず、残念だ」と話した。 さらに、「積極的な支援で制作費運営幅が大きくなってこそ、アンサンブルにきちんとした練習ペイを与えるなどの正当な報酬を支給できるだろう」と話した。
アンサンブルA氏は来月、あるミュージカルの舞台に立つ予定だ。練習開始は午前10時。夜10時まで12時間の間、踊りと歌を練習しなければならない。今月は練習期間なので生活費がなくて空腹を抱えるかもしれない。辞めない理由を尋ねた。
「アンサンブルで得られる収入は十分ではありません。 でも私の夢じゃないですか。 ミュージカルがとても面白くてこの道を放棄することはできない。でも私の熱情まで最低価格ではないということは分かってほしいです。」
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アンサンブルの低賃金や不払いは新しい問題ではありません。しかし、昨今中止されるミュージカルが増えているので、ますます被害を受けている人もいるだろうなと想像するわけです。
数年前、初日を控えた前日に公演中止が発表されたケースでは、数ヶ月間朝から晩まで練習してきた俳優たちに、全く何も支払われなかったという話も聞きました。
上演する以上、利益は上げなければならないわけで、利益を上げるためにはスターが必要なわけで。かと言って犠牲になる人がいてはいけないわけで。
スタッフ全員におごったり、服や靴を贈ったりしてくれる親切で太っ腹なスター俳優さんが、そもそもギャラを低めにしてくれれば済むんじゃないかという気もしますが。だめ?
誰かミュージカル界をどうにかうまく改善してあげてくださいと無力に願うばかりです。