(一番下に動画を追加しました。)
再度、そして最後のシラノ観てきました。
ギュヒョン/ハナ/ウォングンのトリオ。
相変わらず洒落者で豪傑なシラノ。顔で笑って心で泣いて。やっぱり演技上手。
涙を誘う今年のピリパラ。その前の代理告白シーンでロクサーヌに直接愛を語り、心を通いあわせて喜びに浸るのも束の間、クリスチャンが視界に入った途端ハッと現実に戻り、喜びの深さと同じ深さの絶望に陥るシラノ。
クリスチャンに帽子とマントを返し、ロクサーヌのいるバルコニーへのドアを開けてあげる。
その時歌う「唇」は、短いながらシラノの心の痛みが伝わるナンバーです。
そして事態は急展開、ロクサーヌとクリスチャンがすぐに結婚式を挙げることに。
「大丈夫か?」と問うルブレに、「月から落ちた気分だ」と冗談めかして答えるものの、見えない血を流しているかのようなシラノ。ドギッシュを止めながら実は自分も結婚式をやめさせたい衝動と戦っているかのようでした。仲間たちがドギッシュを翻弄している中、思いつめた表情で一瞬仮面を外します。そこに聞こえてくる結婚の宣誓。誤魔化しきれない想いが溢れて「안돼! (だめだ!)」と叫ぶんですよね。
その考えを振り払うように、もう一度仮面をつけてドギッシュに向かっていくシラノ。その激しい葛藤が見ていても辛い。(このエピソード、初演にもありましたか?)
私が観た3人のシラノそれぞれが熱演でしたが、このシーンは特に皆さん切なかった。自分も結婚式をやめさせたいのに、ドギッシュに邪魔をさせないように体を張るシラノ。
初演ではお笑いタイムかと思ってました。再演が良くなった部分の一つじゃないだろうか。
ギュヒョンシラノが疲れてたんでしょうか。時々声がかすれてしまうような気がしました。ロクサーヌとクリスチャンの2人が轟く歌声なので、バランスが気になることも。次第に調子が良くなったのか、こちらが物語に没頭し始めたのか、だんだん気にならなくなりましたけど。
シラノが終わり次第ヘドウィグですし、他の仕事もあるでしょうから、いくらタフな俳優さんたちでも疲れますよね。
さて、ウォングン・クリスチャンですが、相変わらず歌声が迫力です❗️今回も、でくの坊で、口下手で、間が悪くて、空気が読めない感じが最高。そして切ない❗️
ハナ・ロクサーヌも歌声が凄いです❗️演技もメリハリあります。まだ大味な部分は残るものの、女優として怪物感がある。(彼女のインタビュー映像を翻訳中なのにちっとも終わらない。なるべく早いうちにカタをつけたいのですが。)
今年のシラノはドギッシュのキャラも効いてると思う。憎らしいけどほのぼの感も感じられる。初演のチャンヨンさんは苦みばしった悪役キャラでカッコ良過ぎ。
今回心に残った最後のシーン。シラノは刺されたことを隠して手紙を見せてもらいます。かつて自分が書いた思い出の手紙だから、くらいにしか思ってなかったんですが。
最初こそ手紙を見るけれど、ほとんど暗記しているように言葉をつなぐシラノ。ロクサーヌはその声を聞いて真実を悟ります。
死の間際、最後の力を振り絞ってロクサーヌに手紙を渡すシラノ。本来戦場で死を覚悟して書いた手紙。今、死を目の前にして変わらぬ想いを自分の口で伝え、直接渡すことを自分に許したのか…最後にただ一度そうしたかったのか…。
今頃気付いた?って驚かれそうな気もしますが、初めて実感しました。
ところで15年も経っているのに1度聞いただけの告白の声をそんなに覚えているのか?初演での疑問です。再演では伏線ぽいセリフに気づきました。(初演にもあったのかな?)
馬車で戦場にやってきたロクサーヌがクリスチャンに話す言葉です。
「外見に惹かれて始まった愛だけど、今ではあなたの高貴な魂だけを愛している。戦場から送られた数多くのあなたの手紙が私に教えてくれた。あの日私に語りかけた声が私の耳を離れない。この手紙がその声で私を呼び続けるから、それに導かれて私はここまで来た」(ざっと雰囲気のみ)
代理告白シーンの「声」がキーワードになってるんですよね。このセリフがあるので、15年後に気付くきっかけが「声」なのも不自然でなくなります。
「声」にしても「手紙」にしてもクリスチャン本人には属さないことばかり。
一縷の望みを託して「外見」は?と聞き返すクリスチャン。全く意味がない!と全否定されてしまい、自分に向けられていたと思った愛は全て通り過ぎて行き、自分には何も残らないと悟ってしまう。悲劇だ。
様々な変更によってグッと物語に深みが増したシラノ。あと1週間ほどで幕を閉じてしまいます。3演は無いという話も聞きますが、いつかまたやって欲しい作品です。