1週間の入院生活を経てようやく退院。

体調は入院前と比べて明らかに悪化しているのだが、自宅に戻れることが純粋に嬉しい。
大体、血液中に不足しているミネラルを補うために、カリウムの粉末や塩を1日3回ペロペロ舐めるくらい自宅でもできるだろう。

それよりもメンタルがへなちょこ過ぎて、病院ではものを食べられないことや、眠れないデメリットの方が、オレにとっては大きいと思う。

しかしデータ至上主義の青年Tから返ってくるのは、
「数値が戻らないから」
と、杓子定規な返事ばかり。

やむなくオレは、血液検査の前夜に配られた塩とカリウム粉末を処方箋の紙に包んで温存(薬の空袋はナースによって確認の後、回収されるため提出)。
午前4時(採血の2時間前)に服用して瞬間的に数値を上げるという、エセドーピングを実行した。

結果は、基準値を無事クリア。
実際にドーピングの効果があったかどうかは謎だが、目論見どおり退院チケットの確保に成功し、本日に至る。


13時、お世話になった病棟スタッフの皆さんへ挨拶を済ませ、揚々とエレベーターで1階へ。
スキップしたいくらいに気分はいいが、久しぶりの運動で正直歩くのがキツい。
堪らず近くのベンチに腰を下ろす。

迎えにきてくれた父親は駐車場で待っているそうなので、ここから長い道のりになりそうだ。
スカウターで測定したところ、ただいまのオレの戦闘力は5以下と低迷。

昨日病室で、体拭き用の蒸しタオルを持ってきてくれた看護師のSさんに、
「手足の筋肉が落ちて、進撃の巨人に出てくる巨人みたいな体型になってしまったんだよね」
と言ったところ、
「え、何型ですか? 何型の巨人ですか?」
と、予想外にマニアックな返事が返ってきて困惑したことを思い出し、「フッ」とひとり笑いをする。
ごめん。読んでない。巨人に何型とかあるんだ。

なお妻によると、現在のオレの風貌は「サワムラー」というポケモンに似ているとのこと。


(画像引用元:ポケモン図鑑)


つまり巨人とサワムラーをミックスした新種のモンスターがオレってわけ。
そんなルックスで保育士が続けられるのだろうか。

休憩を挟みつつ何とか駐車場へたどり着き、車に乗り込む。
かなり無理をして歩いてきたのでシートを倒して横になりたい衝動に駆られるが、父親の手前、平気な顔をして会話に応じた。


自宅に戻り、1週間ぶりの入浴。
服を脱ぐと乾燥して剥がれた皮脂が光に照らされてキラキラと空中に舞い、綺麗なのか不潔なのか一瞬戸惑う。
もう腕も足も背中も、全身がカサカサなのだ。

しっかりふやかしてから、垢すりのようにタオルでゴシゴシ洗ったにも関わらず、湯船に浸かると相当量の皮脂が浮かんでしまった。
お鍋のアクを掬うように洗面器で出来るだけ上澄みを掬い取ったが、次に入る人には申し訳ないことをした。
最後に入ればよかったと反省。

夕飯にはお粥と素うどん、それにもつ鍋を少々食した。
口内炎の影響でまともな固形物を食べるのはおよそ2週間ぶり。ようやく張り始めた薄皮を刺激しないよう、慎重に噛み砕きながら時間をかけて喫食する。
これだけでも、帰ってきた価値を感じる。

また来週の月曜には再入院の予定なので、自宅にいられる数日間のうちに、少しでも体力をつけておきたいと思っている。
まずは、6kgも減ってしまった体重を戻すことに専念しよう。



帰宅後、父親が寝込んでしまった。
どうやら車中で体調の悪さを隠していたのは、オレだけではなかった模様。

オレが家内に持ち込んだ核の放射能が、住民を少しずつ蝕み始めているのだろうか。