終業後、労働組合の動員で春闘のデモ行進に参加。

B.C(before cancer)時代は仕事帰りにあちこち寄り道していたのだが、手術以降は家と職場を往復するだけの清く正しい生活を送っているため、駅前のネオンを懐かしく感じる。

道路脇にはまだ残雪があるものの、外は思ったよりも暖かく、普通のジャケットにするかコートを羽織るか、車を降りる際に少し迷った。

30分くらいの開会行事の後、街宣車の先導でいよいよ行進がスタート。

組合活動に入れ込んでいる訳ではないが、賃金アップには大いに賛成なので、
「みんなで格差是正ー!」
「みんなで賃上げー!」
とコールしながら大通りを進んでいく。

意外だったのは、
「がんばれ!」
「頼むぞ!」
と、沿道から結構拍手や声援が上がっていたこと。

都道府県別平均収入ワースト1位ながらガソリン価格は常に上位トップ5入りするような貧乏県なので、何かをきっかけに事態が好転すればという願いもあるのだろうか。
予想外の激励にデモ隊の行進も熱を帯び、コートを選んだことを後悔するくらい、アツい夜を過ごした。


帰宅後は心を鎮めて、交換用レンズの研究をする。
と言っても使い方を研究している訳ではなく、マップカメラやキタムラの中古価格を調べたり、公式サイトでスペック表を見比べたりしているだけ。

新しいレンズを買うかどうか迷っているのだ。

それというのも、今買おうとしているFE 24-105mm F4 G OSSというレンズは、ソニーストアで定価¥188,100。価格コムの最安値でも¥137,000というシロモノ。

娘の進学でまとまったお金が必要なこの時期に、ましてやオレは闘病中の身だというのに、こんな高いものを買ってしまっていいのだろうか。

そもそもこの財源はどこにあるというのか。
まさか味をしめてまたアフラックの一時金に手を付けるつもりなのか。

オレは逡巡した。

でもレンズ欲しい。

その時、頭を掻きむしるオレをじっと見つめていたチビ犬ショコラがおもむろに口を開いた。

「お父。どうせいつか買うのなら、早く買ってたくさん使う方がいいワンよ」
「卒業式に間に合うように、今すぐ注文した方がいいワンよ」


オレは約10秒の沈黙の後、ショコラに答えた。


「それなら...フラッシュも買った方がいいワンね」


(結局両方買った)