啓蟄の候。先週の長雨で一気に地面が顔を出し、つぼみ膨らむ浅春の朝。
コートを脱ぎ捨て、ジーンズとセーター、それにボディバッグという軽装で、約9ヶ月ぶりのペットCT受検に行く。
出かける前は久々にオレの最大の病である「病院行きたくない病」が発症し、歯磨きをダラダラと1時間以上も続けてしまった。
ただの検査なのだからもっと気楽に行けばと思うのだが、もう、病院へ行くという行為自体が嫌なのだ。
いっそのこと早起きせずにギリギリまで寝て、何も考えずに飛び出せばよかった。
病院の受付で問診票と一緒に、青年Kから預かったCD-ROM入りの封筒を提出する。
かかりつけとは違う病院で検査を受けているためこういう作業が必要になるのだが、今や田舎の保育園でさえICT化が進められているというのに、なんと前時代的な。
それとも誤送信やハッキング等の情報漏洩対策として、敢えてそうしているのだろうか(患者が紛失するのは自己責任だからいいやって感じ?)。
検査室へ案内される際、大きな声がして振り返ると、「ずれたマスクを直せ」「早く歩け」と高齢の父親を怒鳴りつけながら帰っていく親子連れが視界に飛び込む。
見かねたホール係の人が出て行ってマスクを直してあげていたが、その姿を見た途端ものすごく陰鬱な気持ちになった。
もちろんオレが見ているのはこの親子のごく一面であり、そういう態度に出ざるを得ない背景があるのかも知れないし、別にいい子ぶってお年寄りを大切になどと言うつもりもないのだが、大人なら自分の苛立ちを周囲に喧伝するな。
14時過ぎに全ての任務が終了。
注入された放射能が速やかに排出されるよう、今日は出来るだけ多くの水分を摂取すること。またトイレは大も小も座ってすること等の注意を言い渡され、ようやく危険区域から解放される。
床に跳ねたシーシーの飛沫からも放射能が立ち上るそうだ。
一体どれほどのものを周囲へ撒き散らしているのだろうか。
看護師さんが腰に下げている線量計で、オレの線量も測定してもらいたいと思った。
真夜中、突然の腹痛で目覚める。
看護師さんの忠告を聞いてお茶を2Lくらいがぶ飲みしたからなのか、それとも妻の忠告を聞かずに期限の過ぎたロールケーキをいじましく食べたからなのか、差し込むような痛みに体をくの字に折り曲げて悶絶。
一瞬にして全身から冷や汗が噴き出す。
この汗に放射能は含まれているのだろうか。
床に跳ねた飛沫ですら危ないと言われているのに、家族に影響はないのだろうか。
腹痛の最中、腹痛とは違う心配で眠れぬ夜を過ごした。
