CVポート造設から10日。
いよいよ1回目の抗がん剤投与が始まる。

今回は初回なので、1週間というやや長めの入院計画が出されているとのこと。
基準がよく分からないけれど、“1週間は長め”と知りやや安堵した。
本当は日帰りで出来れば最高なんだけど。

午前中、寄り道して商談中だった三男の車を本契約。昼食に地元のうどんチェーン「ちよ志」で、きつねうどん大盛りを啜ってから病院へ行く。
納車は概ね1ヶ月後とのこと。次の入院時期と被らないことを願う。

後で聞いたのだがこの日の夜、じいちゃんは「購入費用の足しに」と言って三男へ50万円も手渡したそうだ。
退院後に礼を言うと「自分の使いたいことに使っただけ」と、なかなかの決め台詞を吐いた。

病室に着き荷物を整理していると、看護師さんから「看護実習の学生さんを受け持ってもらえないか」と相談される。
内容は、実習生の担当患者となり、日々のケアを受けたり質問に答えたりするだけ。

もちろん快諾する。

オレの入院がほんの僅かでも誰かの学びの一助になるのなら、望外の喜びだ。


翌朝午前6時、いよいよ点滴開始。

初めに4時間かけて腎保護液を注入した後、午前10時頃から1本目のおクスリが投下される。
毒々しい劇物的な色味を想像していたが、実際は無色の清涼感溢れる液体だった。

「透明なんですね」
と呟くと、看護師さんから、
「透明なんですよ」
と、実に真っ直ぐなお返事をいただく。

12時、2薬目を投入。
15時に始まった3薬目の連続96時間点滴が終われば今回の投薬は全て終了とのこと。
副作用は後から出るケースが大半だそうだ。
ラインに吐き気を抑えるための制吐剤、尿の排出を促すための利尿剤が追加される。

結論から言うとこの入院中、手足のむくみ以外の副作用が出ることはなかった。

オレの担当看護師(見習い)のKくんが毎日頻繁に部屋を訪れて、
「ご気分はいかがですか?」
と声をかけてくれるのだが、オレはというと朝から晩までソファに片膝を立て、Macのスピーカーでマイルスを流しながらiPadで漫画を読むという自堕落極まりないスタイルで過ごしていたため、日が経つにつれ、だんだんいたたまれないような気持ちになってしまった。

この患者の姿から彼は一体何を学ぶというのだろうか。
せめてベッドに横たわり、「少し吐き気がする」くらい訴えた方がよかったのではないか。

実習担当者として反省点は多い。


暇を持て余しているので食事の献立カードに一筆入れて返したところ、それが病棟内で評判になっていると看護師から聞く。
中にはこのカードを捨てずに、コレクションしている人もいるとかいないとか?

何を大袈裟なと思っていたら、スタッフの中では比較的おとなしい印象のおばちゃんが最終日に、
「集めているのは私です。この絵、かわいいです」
と言って、嬉しそうにカードを自分のポケットに入れて出ていった。

続いて入ってきた別のおばちゃん、食器が下げられているのを見て、
「あー、先を越されたか」
と言い残し、退室。

次に来たナース、
「あれ、もう無い。回収、早くないですか?」
と苦笑して退室。







もしかして、サインも入れておいた方がよかったっすか?