オレの父親は現在84歳。

毎朝5時半に起床し、6時過ぎに畑へ出掛ける。
今は夏野菜の片付けや、秋冬野菜の植え付け準備をしている模様。
気温が上がる9時前に帰宅し、シャワーを浴びてから朝食を摂るのが朝のルーティンだ。

だが最近は10時頃まで戻ってこない日が多い。
オレがフォロー出来なくなった分、時間を延長して働いているのだ。


三男の話ではオレの入院中に、熱中症のような症状で、帰るなり寝込んでしまった日もあったとのこと。
流石に本人も反省したのか、それ以降は早めに切り上げるよう気をつけているようだが。

日中は愛用のスノーピーク ローチェア30に座り、新聞を読んだり、TVを観たり、うたた寝をしたりしながら過ごしている。

驚いたのは、気になった記事や情報があると、すぐに連絡先を調べて電話をかけまくっていることだ。

一昨日は、樹齢123年の親木から収穫した二十世紀梨を限定販売するという新聞記事を見て、
「明日買いに行くから5箱分取り置きしてもらえないか」
という交渉をしていた(交渉は成立した模様)。

また、
「さっきTVに出ていた米農家と話がしたいので、連絡先を教えてくれ」
とNHKに電話をしたこともあった。

無碍(むげ)に断られると思っていたら、
「連絡先は教えられないが、先方には伝えておくので一応電話番号とお名前を..,」
とのこと。
果たして数日後、本当に北海道から電話がかかってきて父は歓喜。

要件は、
「TVで紹介されていた米を作ってみたいので種籾(たねもみ)を分けてくれないか」
ということだったが、ルールで道外には出せないと断られてしまったようだった。

思いついたら即実行の人なので家族は結構振り回されてきたけれど、打算なく自分のやりたいことに忠実な父の姿をオレは少し羨ましく思ってきた。
オレはどちらかというと、我慢してしまうタイプなので。


夕飯時になると、父はビール片手に毎晩畑の進捗状況を報告してくる。
「今日は〇〇のところを片付けた」今日は〇〇の草刈りをした」等々。
そして必ず、
「来年あそこの畑は何か植えるつもりか?」
とオレに尋ねるまでがワンセットになっている。

オレはためらいつつ、
「入退院を繰り返している今の状態で、来年どうするかは答えにくいなぁ」
と返事をする。

父はそれを聞いて、
「あ、そうだったな...」
と毎晩毎晩毎晩毎晩落ち込むのだ。

初めの頃はそれを見て、胸がチクリと痛むような気持ちにもなっていたが、連日同じやりとりを繰り返していくうち、最近はちょっと面白く感じるようになってしまった。

病気仲間(?)のIさんが、
「最高の親孝行は出来なくても、最悪の親不孝だけはしたくない」
とおっしゃっていたが、それは本当にその通りだと思う。

これ以上父を落ち込ませないためにも、来週4クール目の抗がん剤治療に臨む。


午後、2度目の栗拾いに行く。


実の色からして、最盛期はおそらくオレの入院中だろう。

如何ともし難い。


帰り道、マムシに遭遇。


通常なら被害者を出さぬよう、心を鬼にして始末するのだが、不意に“因果応報”という言葉が頭に浮かび、今回は特別に見逃してやる。