なす術もなく入院中。
ただひたすらに、時が過ぎるのを待つだけの1週間。
頭の中では、「あと何日だっけ」と残りの日数ばかり数えている。

病棟のスタッフは親切でホスピタリティは万全なはずなのに、それでも一刻も早く家に帰りたいと思うのは、動物の帰巣本能のようなものが働いているからだろうか(人間にはそのような本能は備わっていないらしいが)。
オレの心の安全基地はここではないというか。

だからオレは、予定通り1週間で退院するために、意味があるのか無いのかよく分からない努力を毎日コツコツと続けている。

何をしているかというと、それは体重の増減を出来るだけ抑えること。

オレの推察だが、青年Tが特に注目しているのは、どうやらオレのオシッコの排出量と体重変化のようなのだ。
具体的には、体重が増加していれば炎症値の上昇や浮腫を疑い、減少していれば脱水症状や栄養不足を疑っていると予想。

そんなの血液検査をすれば一発でバレてしまうのだが、採血無しで退院が決まることもあるため、備えておくに越したことはない。
できれば余分に針も刺されたくないし。

オレは点滴の輸液量と口から取り込んだ水分量、そして毎回計測させられているシーシーの排出量および発汗による排出量を計算し、朝晩2回の体重測定前にはわざと水を飲んだり、逆にトイレに行ったりしながら地道に体重調整を繰り返した。

ちなみにこれは初めての試みではなく、3度目の入院以降毎回行っている作戦だ。

だが、今回は金曜日に実施された採血でオレのドーピングが露呈してしまった。

検査の結果は以下のとおり。
・ナトリウム欠乏(後半、菓子パンと牛乳が食事の中心になっていたせい?)。
・脱水(朝の体重測定に備え、昨夜から意図的に水分を控えていたせい?)。
・体重は入院時と比較してマイナス1kg(過去イチで安定)。

T医師は苦笑いを浮かべながら、
「何かやってるでしょ」
と指摘。オレの小細工などお見通しというわけだ。

そんなわけで入院を1日延ばすよう提案されてしまったが、オレは頑なに拒否。
放射線治療以来久々の、飲む点滴「エンシュア」を処方することでT医師も渋々手を打ってくれた。

駄々をこねて、退院チケットを確保することに成功。
日曜日には帰宅できることに安堵し、ベッドに横になる。


さて、最近オレの入院中のお気に入りは、プライムビデオで映画を観ること。

10.5インチ程度のiPad Airでは疲れてしまうので1日に2本も3本も観るのは不可能なのだが、学生時代は鑑賞した映画を全て監督別に仕分けて自己採点。独自に設けた項目ごとに星を付け、詳細なレビューを記入したファイルを何冊も作成するような鬱陶しい映画スノッブだったので、昔から映画はよく観ていた。
歳をとって変わったのは、当時ほとんど観なかった邦画も観るようになったことくらい。

そんなわけでおすすめに上がってきた鈴木亮平、有村架純主演「花まんま」を予備知識無しで観たのだが、これが大失敗。
タイトルからイメージしていた文芸作品とは異なるお涙頂戴系ファンタジー(苦手なジャンル)で、ベタな設定なのに見事に泣かされてしまった。


鑑賞後、静かな病室で止まらぬ涙を拭っていると、お気に入り看護師Hさんが検温のため来室。

病苦に悩んで嗚咽していると疑われ、
「大丈夫ですか?本当に大丈夫ですか?」
と真顔で心配される。

心配かけて申し訳ない。




入院がたまたまAmazonのセール期間と重なっており、ここぞとばかりにドッグフードやらカメラ用のカードケースやらをポチポチと購入。


極め付けにイワタニのたこ焼き器「炎たこⅡ」を衝動買いしてしまう。

前回の入院時に同じイワタニの炉端焼き器「炙りやⅡ」を買ったばかりだというのに。


抗がん剤の副作用は思わぬ方向から攻めてくるので、注意が必要だ。