新入生歓迎コンパで泥酔の果てに… | 還暦を過ぎたトリトンのブログ

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 中高や大学でのサークル活動では、今まさに新入生の勧誘の季節でございます。

 今日、Youtube に出てきた動画を観て、およそ半世紀昔の大学時代に経験した或る苦労話を思ひ出しました。まずは、以下をご覧ください。

 

 先日、私が駅の線路に落下したといふ恥ぢをカミングアウト申し上げましたが、今日はそのやうな深刻な話ではありません。まずはご安心くださいませ。

 

 私が大学時代を4年間應援團で過ごしたことはご存じですね。普通、大学1回生は年齢にして18、19歳の未成年です。それゆへ一般のサークルで行はれる「新入部員歓迎(以下、新歓)コンパ」においては、法律上、未成年にアルコールは飲ませられないといふ建前がございます。仄聞するところ現在、全国各大学において、これは厳重に守られてをるさうでございます。

 

 私どもの時代では、これは文字通りほんの「建前」に過ぎませんでした。私どもが学ラン姿でへべれけになつて歩いてゐて、そこへお巡りさんが職務質問をしてきても「大学生です」と言へば「さうか、あんまり飲み過ぎたらあかんで。気いつけや」で済む時代だつたのです。

 

 当時の運動部、いや文化系のクラブでも、新歓コンパと言へば1回生を酒に酔わせて、その性格などを読み取り、親睦を図つて、爾後の部活継続を誓はせるのが普通でございました。

 とりわけ應援團なる、愛校心と上下(先輩と後輩)関係の徹底といふ或る意味「洗脳」を余儀なくされる部活動において、新歓コンパは最も重要な儀式といふ側面がございました。

 

 新歓コンパの前日には1回生に「明日は先輩宅へ泊めてもらふので帰宅しない」と、親に断つてをくやうに… と、厳重に言ひ渡すのです。当日は、前述しました通り1回生に「飲み食ひ」をさせ(とくに「飲み」!)、その酔つた勢ひで入團と忠誠を誓はせます(笑)。

 その夜から翌朝まで、1回生を最後まで介抱するのが2回生の務めでございました。宿泊に使はれるのは、おもに寮や下宿に住んでゐる2回生の部屋です。

 

 

 さて、新入1回生は通常、数が多いので、2回生の人数が少ない場合はその気苦労たるや並大抵ではございません。いきおひ4、5人の2回生が10人もの1回生、しかも酔つ払つた状態の男どもを夜の電車に乗せたり降ろしたりするのは至難の業だといふことは、容易に想像していただける事でせう。

 

 私の経験をお話ししますと、6人の2回生で12人の後輩を電車に乗せました。乗せる時には何とかなりましたが、電車の中では12人全員が眠り込み、長椅子に累々と横たはつてしまひました。6人の仲間で、12人を一つの駅で下車させるのは無理と判断せざるを得ませんでした。

 そこで名案を思ひついたのは、やはり日頃から切れ者と呼ばれたK君です。

 ひとつ手前の駅くらひから、一つのドアに2、3人ずつの1回生を凭れかけるやうに立たせます。

 2回生「おい!お前ら3人。ドアにもたれて、絶対ここから動くなよ!」

 1回生全員「押忍!絶対に離れません!」

 上下関係の徹底を洗脳したばかりですゆへ、1回生は殆んど眠りながらも返事し起立してをります。

 遂に目的の駅に到着、電車のドアが開きました。

 すると、見事、先ほどまで立つてゐた12人の1回生は、一斉にドドドッと駅ホームに背中から倒れ込むのでした。乗車せむとするお客様の悲鳴と、車掌さんの驚倒した顔は、50年経つた今も忘れられません。

 

 翌日、全員二日酔いの1回生。

 「押忍!自分、なぜか頭にコブができてをります」

 「ああ、お前、よう酔ふてたからなあ」

 

…かうして、4年間の汗と涙と笑ひの日々が始まるのでございました。

 

 今の時代では決して有つてはならない行為ではありますが、これが私の愛して止まぬ昭和の一頁でございます。