タクシー運転手さんのご苦労〈7〉成人の日の悩み | 還暦を過ぎたトリトンのブログ

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 タクシーの運転手さんにとつて、日曜・祝祭日は、一般的に売り上げが少ない日が多いやうです。つまり儲かる日か、儲からぬ日かと問へば、概して儲からぬ日となります。

 さて、今日の「成人の日」は如何でせう?

 成人式に合はせて、女性は振袖姿で参加される方が多いですね。今日はまず朝早く起きますと、予約してをいた着付け屋さんで着替へをして、写真屋さんで記念撮影をして(今はワンセットとなつてゐる業者が多いでせう)、その足で成人式会場へ行くためにタクシーを利用する… さういふケースは多いです。

 式が終はれば、その姿で友人と旧交を温めることもあるでせうが、さて何処かで仲良しグループと宴でも、といふ流れになれば、振袖姿では不便といふことで、一旦帰宅するのにまたタクシーを使ふ… そこまではタクシー運転手さんの出番は多いかと存じます。

 さて、問題はこのあとです。久しぶりに会つた友人らと盛り上がつたものの、まだ慣れない酒はどうしても呑み過ぎます。勢ひ、二次会、三次会と繰り出しますと、深夜になつて帰らむと思つても終電車は過ぎた後… このやうなシチュエーションが容易に想定されることでせう。

 

 原則的にタクシー運転手にとつて、酔客は大のお得意様です。昼間は210円の市バスを利用して節約生活を心がけてゐる人も、酒が入ると気が大きくなりタクシー代の3000円、5000円くらひはすんなり払はれるものです。その限りでは、タクシー運転手と酔客は切り離せない協力関係にあると言へるでせう。

 

 ところが、泥酔者となると話は変はつて参ります。タクシー運転手にとつて、これほど厄介なものはありません。車の中で眠つてしまひますと、起こしても起きない。へべれけで話が通じない。まだそれだけならマシですが、最も恐いのが悪酔ひで車内でゲ○…

 この事態を運転手さんは最も怖れてゐます。もし、車内を汚されたとなれば、まずそれ以降は客を乗せられず、早急に帰社して車内を清掃する必要があります。シートカバーを剥がし、フロアマットを水洗ひ。オゾンによる匂ひ抜き… ここまでの作業で2、3時間くらひは過ぎてしまひます。無論その日は仕事が出来ませぬゆへ売り上げはそこでお終ひ。

 普通、タクシー会社では1台の車を2人の運転手が交代で乗車しますゆへ、上述の作業を済ませぬことには、翌日の運転手が就業できないので、必死で清掃を済ませねばなりません。

 法的に乗客を訴へることも出来るのでせうが、通常タクシー会社はそこまでしてくれないでせう。この事態で運転手さんは、肉体的にも精神的にも参つてしまひます。仮にその場で乗客が10万円弁償してくれたとしても、決して許すことは出来ないでせう。

 

 成人の日でタクシー運転手さんが最も危惧するのは、慣れない酒を飲んで泥酔に陥つた若者が起こすトラブルなのです。恐らく今日は、夕方以降、タクシーの台数は一気に減少すると思はれます。因みに、私の務めるタクシー会社では、今日の出車数はわずか2台のみ。しかも午後6時頃に帰社するといふ事前報告が上がつてをります。

 新成人の方々、今日は飲酒はほどほどにして早く帰宅しませうね。     〈完〉