「今日はフナの日」で思ひ出したこと | 還暦を過ぎたトリトンのブログ

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フナ甘露煮食べたことある?

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…といふ問ひ掛けに、「はい、食したことございます」とお答へしますと同時に、逆に尋ねさせていただきます。
 
「鮒寿司(ふなずし)」を
 召し上がつたことはございますか?
 
 知る人ぞ知るこのコアな食べ物は、滋賀県の名物でございます。
 
 
 私の父は彦根市の生まれで、近江商人の系譜を継いでをりますことは、しばしば拙ブログにて触れてをりますのでご存じかと思ひます。
 父の育つた家は、琵琶湖からほんの30メートルほどの距離にございました。この琵琶湖には今でこそブラックバスによつて絶滅の危機に瀕してをりますが、昔は「ニゴロブナ」がいくらでも泳いでをつたものです。このニゴロブナこそ「ふなずし」の材料なのです。
 
 父の父、即ち祖父は、私ども孫が幼い頃には湖より流れる川にて鰻や泥鰌(どぜう)を捕まへ、蒲焼きにして尼崎の拙宅へ郵送してくれたものでした。
 そして季節によつては、このニゴロブナを湖で捕らへては「ふなずし」も作り送つてくれたのでございます。作り方は、鮒の腹を割いて内臓を取り出し(卵だけは残します)、その中に炊き上げた飯を詰め込み、更に鮒全体を飯で覆い、これを樽に詰めて醗酵させるのださうです。出来上がつたふなずしは、骨までポロポロと柔らかくなります。好きな人は「チーズのやうだ」と褒め称へますが、このふなずしは凄まじい異臭、いや失礼、匂ひを放つのです。
 
 これが我が家に届きますと、我が父は、その祖父の心の込もつたふなずしを夕食時に食するのです。すると家中がその匂ひ一色に染められ、私ども子供らは鼻をつまんで逃げ回るばかり。父が食し終はるまで茶の間に入らむとも致しませんでした。母も抑々魚類を好みませぬゆへ、さぞ耐へ難かつたはずですが、さすがに舅が作つたものを無碍には出来ず、息を殺して耐へてをつたのでございました。
 
 名物はその土地土地で様々なものがございますが、このふなずしは世界的にも「変はつた料理」として認識されてをるさうです。彦根では土産物として売られてをります。流石(さすが)に匂ひの方はかなり抑ゑてあるやうです。一匹をスライスしてオレンジ色の卵が美しく見えるやうに加工して販売されてをります。
 しかしまあ、その高価なこと! 一匹のフナが何と、5,000円近くするのでございます。
 我こそはと思はれる読者の方、一度お召し上がりくださいませ。
 
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