日本歌手協会名誉会長にして、60年のキャリアを誇る現役歌手でもありました、ペギー葉山さんが、4月12日に亡くなられました。私より少し若い世代の者には「ウルトラの母」としても広く知られてをります。
「NHKみんなのうた」といふ番組名だけは皆様もご存知でせう。初回放送が1961年、私が5歳の頃から現在迄続く長寿番組であります。テレビ、ラジオ双方で視聴できるやうです。この1回5分だけの放送を、私はものごころ付くころ耳にしてをりました。ペギー葉山さんが「学生時代」「南国土佐をあとにして」などのヒット曲で、「みんなのうた」に頻繁に登場されてゐたのを覚へてをります。
さて皆様にも、曲の題名はおろか、何を主題に歌つたものか知らないくせに、このメロディを聴くと涙が出る…といふ経験がありませんか?
かく申す私にも全く理由はわからないのですが、さういふ「涙のスイッチ」が入る曲がいくつかございます。そのうちの一つが、この「みんなのうた」でペギー葉山さんが歌つてをられた『小さな木の実』です。現在でも小中学校の音楽会の演奏で、たまに耳にする機会がございます。
私に騙されたと思つて、一度ご視聴いただき、下記の歌詞を口づさんでみてください。何故か理由は判じかねますが、涙がこみ上げて参ります。
http://www.mahoroba.ne.jp/~gonbe007/hog/shouka/chiisanakonomi.html
https://search.yahoo.co.jp/video/search?rkf=2&ei=UTF-8&dd=1&p=小さな木の実
『小さな木の実(このみ)』 ジョルジュ・ビゼー 作曲
海野 洋司 作詞
小さな 手のひらに ひとつ
古ぼけた木の実 にぎりしめ
小さな あしあとが ひとつ
草原の中を 駆けてゆく
パパと ふたりで 拾った
大切な木の実 にぎりしめ
ことし また 秋の丘を
少年はひとり 駆けてゆく
小さな 心に いつでも
しあわせな秋は あふれてる
風と 良く晴れた空と
あたたかいパパの 思い出と
坊や 強く生きるんだ
広いこの世界 お前のもの
ことし また 秋がくると
木の実はささやく パパの言葉
ジョルジュ・ビゼー(1838~1875)と言へば歌劇「カルメン」が有名ですが、この『小さな木の実』もやはり歌劇「美しいパースの娘」の中の曲のひとつで、元々は男女の恋愛の歌ではありますが、海野洋司氏の作詞で、上のやうな親子の話に編されてをります。
母子の情愛を歌ふものは多いですが、このやうに父子の情を歌ふものは、少ないのではないでせうか。歌詞を読む限り、この父は既に亡くなつて、男の子が父を追憶してゐるやうです。
残念ながらペギー葉山さんがこの曲を歌つてをられる動画が見つかりませんが、このメロディを聴きつつ、故人のご冥福を祈りたいと存じます。合掌