例えば「鉄腕アトム」。手塚治虫氏の漫画を動画アニメにしたものは、米国の「アストロボーイ」など世界中で知られてをります。私が幼い頃はこれも実写ドラマで、頭に2本の角をつけた子役(瀬川雅人氏)が登場、おぼろげに顔も覚えてをります。何となく細い目をした俳優さんでした。まぁ、漫画のアトムの目は縦長なので彼と比べれば誰でも目は小さいですが…。噂では、手塚氏が「私のイメージと異なる」としてアニメ制作に奮起したといふ話もございました。
さて、当時の実写スーパーヒーローは鉄腕アトムのほかにも月光仮面、七色仮面、海底人八八二三(はやぶさ)、アラーの使者などが覇を競つてをりました。もちろんそれぞれの番組に主題歌も存在し、私も兄や友人とそれらの歌を合唱し、何曲知つてゐるか、或いは何番まで歌へるかを競つたものです。
これらの番組を毎日のやうに観賞してをりますと、番組の間に挟まるコマーシャルソングも並行して記憶するといふオプションも生まれて参ります。その筆頭は何と言ひましても「パルナス」です。
ぐつと 噛みしめてごらん
ママの 温かい心が
お口の中に 沁み通るよ
パルナス(以上前奏)
甘いお菓子の お国の便り
おとぎの国の ロシアの
夢のお橇が 運んでくれた
パルナス パルナス モスクワの味
パルナス パルナス パルナス

これは「パルナスの歌」と言ひ、中村メイコ女史が歌つてをりました。私どもの年代の方なら、誰もが一度は耳にしてゐるのではないでせうか。
もう一つの歌は
パルナス ピロシキ パルナス ピロシキ
パルピロ パルピロ パルピロ パルピロ
パルピロ…(以上前奏)
ロシアのおじさん 言ふことにゃ
本場の味より まだ美味い
うちの坊やの 言うことにゃ
おやつはやつぱり こーれー
といふ訳で前置きが長くなりましたが、いまも「パルナス」の系統をひく、阪神尼崎駅内のレストラン「モンパルナス」のピロシキを勝手に紹介しませう。1個160円、5個買ひますと写真のやうに、お土産用として箱に容れてもらへます。

パルナスの創業者・古角松夫氏の実弟、古角伍一氏が、1974年にパルナス製菓から独立して開店された「モンパルナス」。懐かしいピロシキの味は、一気に50年前の昭和を思ひ出させてくれます。