芳賀に確認してから、1週間ほど経った・・・
耕一は、売掛の未回収には気を遣っていたが、まさか販売そのものに問題が起こるとは予想していなかった。
それは、売上から締め日を30日遅らせ、回収期間を長くしていたと思っていたが・・・それは、大阪から電話が入ってきた。
坂本「中澤社長、いったいどうないなってるんですか?うち(ネクサス)の人間が悪さしたのは、分かったんですがそちらの営業担当が関わっているとは、どういうことですか?」耕一は、困惑した。
耕一「すいません、話の内容がよく理解できないんですが、何かありましたか?」
坂本「社長!まだ、聞いてませんの?・・・いや、実はうちの芳賀が9月に受注して売り上げたHPサイトの件なんですが・・・どうやら、架空なんですわ!」
耕一「えっ?その話、いま初めて聞いたんですが・・・」
坂本「いや、うちから人出してるから、売上に対して何パーセントかはバックマージン貰う話は、了解してもろてるでしょうけど、その数字確認したら、本人が白状したんですわ・・・」
耕一「そうですか。社内でも確認してみます。一旦、電話切りますね。」
耕一は、営業部長の新田を呼んだ。
耕一「新田さん、芳賀さんの件何か聞いてる?」
新田「・・・・」
耕一「どうした?何かあったのか?」
新田「はい、実は芳賀さんに頼まれて、例の受注の件で・・・・」
新田が、耕一に一枚の書面を差出した。それは、受注確認書であり、某会社名が記載してあった。その下に、「新田」の氏名で署名・捺印がされていた。
耕一「これは?偶然の同姓同名か?説明してくれ!」
新田「はい、すいません。芳賀さんは連日大阪のネクサスから、『未だ注文が取れないのか?どうなっているんだ!』と再三にわたるプレッシャーがあって、大変だったそうです。それは、朝も早くから、深夜に至るまで・・・それで、『何とか助けてください・・・』と頼まれて・・・・」
耕一「でもこれが不味い事ぐらい分かっているだろ?」
新田「はい、受注は受注として、後日、別の理由で受注取り消しの処理をするからと芳賀さんに言われて・・・」
耕一「おまえは、馬鹿か?分かりきった事今更、言う気も無いが、これがどういうことか、理解してるだろ?」
新田「はい・・・・・」
その日の夕刻、ネクサスの坂本取締役がエイペックスジャパンにやってきた・・・
坂本「中澤社長、何か分かりましたか?」
耕一「はい、営業部長の新田に確認しました。どうやら、架空売上になっていたようです。」
坂本「なんですと?で、新田部長はそれを知っていたんですね?」
耕一「はい、そのようです。残念です。」
坂本「おい!芳賀!新田部長!ちょっと、会議室に来い!・・・中澤社長、ここは私に任せて頂きたい・・・」
耕一「しかし・・・」
坂本「後で、・・・・」と言い残すと、夜叉面のような形相で、会議室に入っていた。それから、小一時間の間、オフィス内に響き渡る怒号が続いた・・・ようやく、坂本が耕一のところにやってきた。
坂本「中澤社長、もしや貴方は関わってないですね????」
耕一「はあ?それは無いですよ。本件は、なぜか、詳細な報告が上がっていなくて、不注意としては私にも責任はありますが・・・」
坂本「分かりました。いずれにせよ、何かしらの処分は必至ですわ。本日付で、芳賀は大阪に帰します。」
耕一「そうですか・・・」一応、その場はおさまった・・・・
夜8時過ぎに、新田と芳賀を改めて社長室に呼んだ。
耕一「もう、あまり説教じみた事は言わない。ただ、なぜこんな事になったんだ?」
芳賀「社長!すいません。(涙)私、ネクサスに勤めて、7年になりますが、『営業のネクサス』で、それなりに成績も上げてきました。ただ、今回、こちらにお世話になっていて、初めてなかなか結果の出ない営業で、苦労してきました。それ以上に、大阪からのプレッシャーがきつくて、新田部長にも大変なご迷惑をおかけして本当に申し訳ございません。」深々と頭を下げた。
新田「社長、この件は私にも責任があります。芳賀さんだけを責められるような事にしてもらいたくないんです。申し訳ありません。」
耕一「・・・・・わかった。もういい。但し、何かしらの処分があった際は、甘んじてくれるな?」
新田「はい。」
それから、2週間後、大阪に戻された芳賀は、課長職から平社員に降格となり、給与も大卒初任給までに減額された。同じくネクサス側は、部長の新田への処分を耕一に迫った。結果、新田は部長から課長へ降格し、給与は50%の減額という処分に至った。耕一は、この件に関しては、辛かった。『なぜ?こんな事が起こったのだろう?』と・・・・処分を言い渡した日、耕一は新田を呑みに誘った。
耕一「すまんな。ネクサスの手前、目に見える処分でであないと、納得してくれない。何とか、課長までに留めるのが精一杯だった・・・」
新田「はい。有難うございます。金銭的には苦しいですが・・・気分的にはすっきりしました・・・」
耕一「そういってくれると、こちらも気が楽だが・・・・」「いずれにせよ、もう二度とこのようなことは、起こしてくれるな?頼むよ。」
そう言って、その場を散会した。
後に、耕一はこの新田に世話になる事になるのだが、この番外編の「不祥事」をキッカケに、新田は、強く成長した。そう、この件も先日都内で会って飲んだときに新田が必ず口にする事である。なぜなら、これを糧に新田は、その後独立し、今現在、社長をしている。そう、この事実が、後々実りあるものとなったのである。(終)