NVM-VCの鹿山氏から電話が入った。鹿山氏は、山崎の紹介で一度、面識があったがあまり話はしたことがなかった。鹿山氏は、バイオテクノロジーに特化したベンチャーキャピタリストであった。
鹿山「中澤さん、色々大変だったと思うけど、今は何してるの?もし時間があったら、是非紹介したい人が居るんですが・・・」
耕一「はい、いいですよ。」と受けて、3日後、箱崎のロイヤルパークホテルの1階ロビーで待ち合わせをした。そこで、紹介されたのは藤本氏であった。
鹿山「こちらが、藤本さん。今は、日本エンタープライズの取締役管理本部長で、上場準備業務に関してのエキスパートなんですよ。」
耕一「はじめまして。」
藤本「やあ、噂は聞いてたけど、若いね。色々あって大変だったでしょう?」
耕一「いや、お恥ずかしい話です・・・」
藤本「恐らく中澤さんは、白兵戦の経験は申し分ないでしょうね。それより、これからは、空中戦で戦うステージでやらないと一気に上がれないからね。」
耕一「はあ、空中戦とは???」
藤本「そうね、実務現場からすると資本・金融の事って、空中戦ですよ。見えない敵が多いからね。」
鹿山「私は、この後時間が押してるんで、後はお二人でお話ください。」とその場を去った。
藤本は、細身で神経質そうであったが、非常に朗らかで耕一がこれまで会ってきた年上の人間とはちょっと違った。逆に藤本は、耕一に何かしらの期待を感じたようである。
しかし、この時点ではこの先2人がどうなるか知るすべもなかった。
藤本「それじゃ、今度改めて私の会社に来てもらえる?渋谷なんですが、他の人間も紹介するから・・・」
耕一「はい。分かりました。是非、伺います。」
ここで、藤本氏の「空中戦」という言葉に、耕一はなんとなく琴線に触れた気がした。それは、これまでの耕一自身の目線を見抜き、それ以上の何かを感じさせる言葉だったからだ。
耕一は、その日その一言で、一瞬にして目で見えるもの全てが異なって見え始めた感覚を覚えた。「空中戦」とは何を意味するのか?この言葉に魅かれた結果はこの後、想像もつかない事となることを耕一は気づくはずも無かった。