小説「護られなかったものたちへ」を拝読。
久しぶりに小説を読みふけってしまった。
社会保障、特に生活保護という観点において本来護らべきはずの人が
護られていない一方で、不正受給があったり、国の助成金が削減されていたりと
必ずしも合理的ではない世界が広がっている現実を知る。
生活保護を受けるために、詳細な資産状況を申告するだけでなく
家族、頼れる人がいれば、たとえ縁をきった相手でも頼ることを促される
しかし人と人の関係は一度切れてしまうと或いは疎遠になってしまうと
戻すのは何より難しい。結果、生活保護を受けれないまま餓死してしまう
老婆の話がでてくる。そこから生活保護申請を却下した福祉課の職員、責任者が
殺される(餓死により)という悲しい連鎖が起きる。
殺人を無論許されるものではないが、本書を通じてより如実に浮き上がってくる
悲惨さは社会保障の現実だろう。巷ではセーフティーネットはあるとか、生活保護を
受ければいいという安易が発想がたまにあるが、想像以上に国に頼るのは
厳しいと考えておいた方がよさそうだ。
そして上記は自分自身はもちろん、家族がその対象になる可能性もある。
そうなったとき、自分はベトナムにいながら日本の家族をどこまでサポートできるのか
正直わからない。
若いうちはともかく、50、60を超えて貧困にあえぐ人は今後日本で大きく増加するだろう。
社会保障費が削られる中、本当に頼れるのは国ではなく、身近な人だ。
本書を読み、人と人との繋がりがどれだけ切実で大事か、痛感させられた。