アジアビジネス 熱風録 | No Border 生きる。ベトナムで。

No Border 生きる。ベトナムで。

自分は自分でしかない。 I'll be there.

インド、シンガポール、ベトナム、タイ、韓国、インドネシア、中国
の各国における2007年時点(という意味では最新ではないが)での
ビジネス状況を、実際に現地で働く日系企業社員や、政府官公庁の役人など
のインタビューを交えながら描いている。

上辺だけの評論集ではないので、かなりリアルに現地の鼻息が聞こえてきそうな
重厚感がある。

個人的に注目していたのはベトナムだが、上記7ヶ国に共通して言えるのは、
余りあるほどのバイタリティ。とにかくもっと上に這い上がりたい、裕福に
なりたいという欲求があるということ。読んでいるだけでもアツさが伝わってくる。

ただ、今後急成長が見込めるからビジネスチャンスがある。よし、進出しよう!と
思っても現実はなかなか厳しいようだ。
事例として三菱化学(インド)、キャノン(ベトナム)、ミネベア(タイ)、
エプソン(インドネシア)などがあるがどれも度重なる困難を乗り越えて
ビジネスにしている様子が伺える。

個人的に感じたビジネスを成功させるためのポイントは、
①徹底した現地化をして溶け込む。
②日本人社員にこだわらない。
③泥臭く、粘り強く取り組み続ける。

の3点か。

①は国によって文化や習慣などが当然違うので、日本式経営を押し付けるのはNGだと
いうこと。日本から新興国に進出しようとするとどうしても”上から目線”で考えがちだが
現地の人と対等に付き合うことなしでは中、長期的な関係は築けない。
ユニクロのように世界中どこでも同じ品質、値段で売るという企業もあるが
まだ認知すらない国に進出するのであれば、まずは現地にならい、早く溶け込むことを
優先すべき。
②は①と関連しているが、社員(特に役員クラス)を日本人に固執することはナンセンス
だということ。現地で何十年も住んでいる人と、日本で表面的な知識だけを詰め込んだ
日本人社員とでは、100歩譲っても前者の方が適しているといえる。
特に、幹部クラスを日本人で固めると会社としての指針が日本人好みに偏りやすく
結果として、現地のニーズを掴めきれない(=ゆえにうまくいかない)ケースが
考えられる。もはや、”日本企業だから”という概念はなくして日本に本社がある
グローバル企業として事業だけでなく社員もグローバル化させることが必須である
強く感じる。
※参考 グローバリゼーションの意味 Chikirinの日記

③はとにかくタフさが求めらるということ。もちろん事前に、市場把握や商品戦略を
綿密に精査することも必要だがそれ以上に大切なのは現地の方たちと正面から
ぶつかって試行錯誤しながら、諦めず地道に取り組み続けることだと思う。
1,2年で成功しようなどという甘い考えは持たないほうが良さそうだ。
きれいなビジネスではなく、泥臭く商売をするという気概が必要だと感じた。

あと、本書の内容からは脱線するが東南アジアでビジネス歴20年ほどの方が
こんなことを言っていた。
「今、急成長している国はそこだけ見れば魅力的だが、政治、経済、社会の基盤が
整っていない国も多く、実は内状をみると賄賂で腐敗していたり(中国のように)環境
問題が深刻化しているという負の面も考慮していかないと多くの(進出しようと
している)企業は失敗するだろう。」

現地での経験が長いからこそその言葉は重い。

とはいえ、もはや日本国内だけで完結するようなビジネスは継続しない
世の中なので、世界を見据えて一刻も早く動き出すことがより一層求められて
くるだろう。

最新刊がでたら読みたいです。


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