自身の扶養を求め祖父が孫娘を提訴 | 周来友 オフィシャルブログ

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中国出身のジャーナリスト、タレント。
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高齢化社会への道を急速に進む中国は、2025年までに60歳以上の高齢者率が20%以上に、さらに2035年には30%を超えることが予想されており、超高齢社会に突入することが指摘されています。

現在の中国では、急激な労働者人口の減少に備え定年退職年齢の大幅な引き上げ、高齢者向け求人情報の充実化などの施策をすでに開始しています。一方で、若者にのし掛かる負担は大きくなりつつあります。



香港メディア・東網(9月7日)は、中国上海市普陀(ふだ)区の裁判所で行われた25歳の孫と90歳の祖父の間で起こった扶養と金銭トラブルにまつわる裁判について報じています。

この裁判は、病気で亡くなった男性が娘に対して、「自分が残した遺産を使って祖父の扶養をするように」と遺言を残していたことがきっかけで争いとなっていました。

亡くなった男性の娘は、遺産相続したのち、遺言の通り毎月1.5万元(約30万円)を祖父に渡し、また相続した住居を祖父に無料で提供し祖父の生活を支えてきました。

その後、祖父が高齢だったこともあり女性は祖父を高齢者施設に入居させ、生活費も掛からなくなったことから1.5万元の仕送りを中止したところ、祖父は孫娘が遺言の内容を履行していないとして孫娘を裁判で訴えたのです。裁判所は女性に対し、仕送りの再開および相続した住居での祖父の生活を支援することを命じる判決を下したのです。

中国では家族の扶養義務が日本以上に強く法律で定められており、違反した場合には財産没収や社会信用情報に記録され、金融ローンの審査にも大きな影響をもたらすことも少なくありません。こうした背景には、高齢社会へ突入するための社会保障制度がまだ構築されておらず、高齢者施設の大幅な不足、介護士人材の不足、保障費の不足などの問題があり、現状は家族が高齢者の介護や生活を支えていくことが原則となっています。

中国では1人の若者が2人の両親、そして4人の祖父母を介護する時代がもうすでに始まりつつあるのです。