今まさに香港では.... | 周来友 オフィシャルブログ

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中国出身のジャーナリスト、タレント。
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一部の報道で知っている方も多いと思いますが、香港では今、中国のある政策に対する大規模なデモが行われています。中国が香港で起こった犯罪事件の容疑者を中国へ移送できるよう香港議会に法改正を迫っているからです。香港では、中国のこうした強権的なやり方に反感を覚える人が多く、最終的に参加者200万人という大規模デモへと繋がったのです。




香港と中国の間でなぜここまで大きな衝突が起こったのかを説明する前に、現在の香港と中国の関係について説明したいと思います。

香港が1997年中頃までイギリス領だったことはご存知のことと思います。中国がまだ清王朝時代だった1842年、中国はイギリスとアヘン戦争を行い惨敗。香港島はイギリスへと割譲されます。さらに1860年には、九龍島もイギリスに奪われ、香港島と九龍島の2つの島から成り立つ香港全体がイギリスの領土となったのです。

イギリス領となった香港は、言語・文化・インフラ・政治・経済などあらゆる面で変化していきます。広東語に加え、英語が公用語となったほか、イギリスのアジア経済圏の要所として国際的な金融都市となっていった香港。イギリス統治のもと、政治や経済も中国とは全く違う道を歩んでいったのです。こうした時代背景もあり、香港の人たちは、自分たちは中国人ではなく、香港人であるという強いアイデンティティーを持っています。

イギリスと清王朝は当時、1997年に香港を返還することで合意していました。そして返還が近づいてきた1980年代になると、両国の間で、返還後の香港の扱いについて協議が行われるようになり、最終的に、返還後50年間は香港の自治を尊重する、いわゆる『一国ニ制度』体制とすることとなったのです。

一国ニ制度とは、香港は中国に属しながらも、政治や経済などは中国から独立し、高度な自治を維持するというものです。


しかし返還後、香港の自治は徐々に曖昧なものになっていきます。選挙で香港民主派や香港独立派などの候補を出馬させないようにしたり、非公式に親中派候補の支援を行うようになったりと、中国が香港議会や香港の選挙に横槍を入れるようになったためです。

しかし、今回問題となっている条例が可決されれば、単なる横槍だけではすまなくなるでしょう。中国や中国の指導者に反対した人間を侮辱罪や国家転覆罪などの容疑で本土に連行し、取調べを行えるようになるからです。これでは一国ニ制度体制など絵に描いた餅でしかありません。

一方、香港を150年に渡り支配してきたイギリスですが、香港の現状を見て見ぬ振り。抗議の意を示すことすらありません。イギリスはEU離脱を巡って、首相が辞任に追い込まれるなど、国内が混乱しているためです。

香港では今後も、中国との関係を巡りこうした反中デモが度々行われることでしょう。日本に隣接している香港や台湾は常に、中国との間でこうした厄介な政治的問題を抱えています。日本人である皆さんにも、ぜひこうした事実を知っておいてもらいたいと思います。