中国農村戸籍の消滅でどうなる? | 周来友 オフィシャルブログ

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中国出身のジャーナリスト、タレント。
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共産主義を掲げながら、資本主義経済を取り入れ、急速な成長を遂げた中国。しかしその一方で、都市部と農村部の間には大きな経済格差が生まれてしまいました。さらに都市部と農村部には戸籍による格差のあり、社会保障なども大きく違ってきます。つまり中国では、都市部住民と農村部の住民が、生まれた時から異なるスタートラインに立っているのです。

こうした弊害を解消すべく、中国では国家主席である習近平が政権誕生当初から、戸籍制度の改革を大きな政策の1つに掲げてきました。中国で格差社会の元凶とも言われていた戸籍制度にメスを入れ、都市戸籍・農村戸籍境を取り払おうと言うわけです。では、この改革は実際、農村戸籍の人々にどのような変化をもたらすのでしょうか。

戸籍制度改革で農村の人々が危惧しているのが、農地の取り扱いです。農村戸籍が消滅することで、これまで利用してきた農地が没収されるのではないかとの懸念を抱いているのです。ただ、当局はその可能性を否定し「農村戸籍の消滅は土地の使用権とは一切関係がなく、農村の人々は今後もこれまで通り農地を使用できる」と発表しています。農地の使用権を所有する農民には「農村土地承包経営権証」という証明書が発行され、農村戸籍消滅後も、引き続き同じ農地を使用することが認められるのです。

このように、新しい戸籍制度の導入後も基本的には、これまで同様、農地や住宅・不動産の使用権が与えられることになりますが、注意すべき点もあります。生活の拠点とともに、本籍も都市部に移した場合、農村で所有していた住宅や土地の所有権が消滅してしまう可能性があるのです。これが、今後大きな争点になるであろうと指摘されている点でもあります。

戸籍制度の改革は、基本的には、農村部と都市部の住民の格差をなくすことが狙いです。しかし、数年以内に実行される戸籍制度改革で、本当に格差をなくすことができるのかは、実際の結果を見てからということになるでしょう。