年間20万人が行方不明になる中国の子供 | 周来友 オフィシャルブログ

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中国出身のジャーナリスト、タレント。
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取材で中国の少し田舎町に行ったときのこと。街中を歩いていると、日本ではあまり考えられない掲示物が目に入りました。電柱に子供の写真が貼られていて、その下には子供の名前や特徴が書かれています。そうです、行方不明になった子供の情報が掲示されているのです。

《中国ではこうした行方不明になった子供の情報を求めるビラを配る光景をよく目にすることがある》

中国では現代においても子供の誘拐事件が後を絶ちません。信じられないことに年間20万人の子供が人身売買を目的に誘拐され、行方不明になっています。一説によると、誘拐された子供は子供に恵まれない夫婦や、跡取りとなる男の子を求める家庭に20万元(約320万円)で、売買されると言います。子供を、特に男の子を誘拐し売買する犯罪組織が存在しているとも言われています。

そんな中、近年誘拐された子供が発見されることも増えてきました。そのきっかとなったのがインターネットです。誘拐された子供の写真や名前、身体的な特徴をサイト上に掲載し、情報提供を求めるNPO組織が中国で次々と誕生しました。その結果、誘拐された子供が数年〜数十年後に発見される事例が相次いでいるのです。

こうした児童誘拐を題材とした『最愛の子』という映画が中国で2014年に公開され、大きな反響を呼んでいます。この映画は、かつて誘拐され、後に発見された子供の、実際のエピソードを基に制作されました。こうした映画の影響もあり、中国では今、誘拐事件に大きなスポットが当たっています。

《近年、児童誘拐が社会問題として注目されるようになり、ミネラルウォーターのラベルにも行方不明になった子供の写真を掲載している》

誘拐事件は、子供が発見されてからも子供の心に大きな傷を残します。ある日突然、産みの親と育ての親が存在することになるからです。本来であれば、育ての親は人身売買に加担した容疑で逮捕されなければなりませんが、誘拐された子供からすれば育ててもらった恩があり、育ててもらった親をみすみす警察につき出すことをためらいます。

そうした複雑な感情から、人身売買は被害届を出されることが少なく、事件の全容解明が難しくなるのです。

中国では人身売買を行った場合、重罪として死刑判決が下ることも少なくありません。そうしたリスクを犯してまで、人身売買を行う組織はまだまだ存在しています。

私も子を持つ親として、こうした犯罪が根絶されることを祈るばかりです。