やぁ、ファイオスだ。
前回はほんとに頭がついていかなかった。
何せ私の予想をはるかに超える研究の結果が待っていたのだから。
魔王の魔力がどれほどのものかしっかりと予想できていなかった私には正直この結果は理解できないものだった。
なにせ、デク人形から一気にデーモンまでランクアップしたのだよ。
魔王が作った通常空間の640兆倍の魔力空間作成装置。
この装置は水晶を媒介にしていて、安定した魔力供給をし続けることが出来る。
半永久的に魔力を放出し続けるこの装置があれば、生物としてのデク人形を作り続けることには問題ないだろう。
私はデク人形を進化したものとして人間を作りたかった。
そう、千数倍の魔力空間があれば、人間とそぐわぬデク人形が誕生するはずだった。
私の知能工学の研究成果であるこの人形たちならば、魔力を供給源として、思考の輪廻を繰り返すきっかけをつかめると予想していた。
しかし、実際に注がれた魔力値は、その数千億倍。思考の輪廻どころか、力の輪廻をし、知能の暴走まで引き起こしてしまったデク人形は、一瞬にして組み合わせ爆発ともいえるさまざまな言語の接点を己の魔力視点から連結させ、最高レベルの知能と、それに見合った魔力を手にしていたのである。
よくよく考えてみれば、魔力のブラックホールが起こってしまってもおかしくないほどの魔王の魔力だ。
そんなものから何かをしようとすれば、暴走気味な結果がおきるのはわかったはずだ。
確かに私は、進んだ研究成果を求めていた。だが、これではまるで軍事兵器、いや、そんな生易しいものではなく、世界を滅ぼしかねない核爆弾以上の研究成果を生み出してしまった行っても決して言い過ぎていない。まぁ、これだけの魔力を2分足らずで生み出せる魔王の化け物具合を考えてみれば、私の研究によってもたらされる事など、どうとでもなってしまうような気もするが。
とにかく、結果は出てしまったのだ。
魔王が勝手になずけてしまったが、私は魔道知能学の産物としてデルクヮイナというデーモン人形の開発に成功してしまった。
問題なのはこれからどうするかということである。
私の中から常に沸き続けていた研究欲は一瞬さめたように思えていたが、それは昨日一日だけの問題だったようだ。
また今日になると、研究を行う気分で充満している。
魔王に認められたのだ。そんな生易しく終わるものでもないだろうに・・・・。昨日の私はどうにかしていたか・・・。
昨日の私は、なかば、研究成果を魔王に全て持っていかれたような気分になっており、少し放心していた。
自分のやってきたことが魔王の魔力の前では以下に小さいかを思い知らされた私は、これからどうしようかなどと思っていたのだ。 それと同時に、少しの寂しさが生まれていた。 魔王城での映像、ドニスとの記憶が頭をよぎる。 研究から一瞬はなれた私にはドニスのことが大きく影響していた。 そうしたら居てもたってもいられなかった。
私は、魔力が供給されれば即座に作成できるように作られていたデク人形、残り4体(一体はデルクヮイナとして誕生させた後、魔王が連れて帰ってしまった)の内、一体に生命を宿らせることにした。
この一体は、実はドニスの性格を宿らせてある。
研究の鬼となっていた私だが、別にどのような性格を人形に投じても問題がないとわかった時、流れるままにドニスの性格を投じていたのだ。やはり、ドニスとの愛自体が消えているわけではない。 ドニスに会いたいという気持ちはあったのだ。
ただ、今の私はドニスよりも研究のほうが大事だと思っているだろう。
研究に魂を売っているのだ、偽りのドニスなどが現れたところでどうとでもなるものでもない。
それも分かっていた。
ただ、この日の私は、寂しかったのだ・・・・。
魔王がおいていった魔力供給装置のスイッチを入れる。
装置が作動し、水晶が振動し始め、装置の中に魔力が充満していくのが分かる。
見ていくだけでも恐ろしい濃度だということが分かり、このような装置を使っている自分も恐ろしく思えた。
ドニス型の人形に命を吹き込むにあたって、どの程度の魔力濃度で生命を宿らせるかが気になった。
私の個人的理由、人間として生まれてほしいのであれば、魔力値は千程度でよい。
研究を進めるのであれば、まずはデルクヮイナとしての人形を作成したほうがよい・・・・。
私は寂しいがために偽りのドニスを作ろうとしていたのだが・・・・。
私の頭に、ドニスが魔物に教われて絶命した日の記憶がよぎる。
気付けば私は、魔力供給装置の濃度地を最大値まで上げてから供給開始スイッチを押していた。
魔力が供給され、魔力培養カプセルの中の人形に魔力が注ぎこまれていく。
その尋常ではないほどの濃度の魔力は、中の人形強く、強く変えていく。
皮膚からは強い魔力が放たれていた。
・・・・・
閉じていた人形の目が開く。
その時、私のほほには涙が流れていたように思う。
しかし、そんなことは気にしていなかった。人形の目が開いた瞬間、その顔から目を離すことは出来なかった。
ファイオス「ドニス・・・・・。」
培養カプセルの中からドニスそっくりの人形が出てくる。
もちろん、テレポートして出てきたのだが、そんなこともやはり気になっていなかった。
私はただ彼の顔を見つめていた。
人形「私の名前はドニスで良いのですか?」
ファイオス「そうよ、そして私はファイオス。 あなたのパートナーよ。」
ドニス「分かりました。 ファイオスさん。」
始めてあった時のドニスと同じ声、同じしぐさ、同じ私への呼びかけ。
私は一瞬自分が昔に戻っているような錯覚を覚えていた。
だが違う。
私の前で、優しく微笑むドニスは、漆黒の翼を持っていた。