昨日のブログで、
「熱放射が作り上げる大脳皮質全体の等価ノイズ。
これが意識の根源である。」
という中田先生の仮説を紹介しました。
先生は仮説の正しさの根拠に、
大脳皮質がエントロピー空間を作るとか
情報を扱う空間には、等価ノイズが存在する事が必要とか
唐突に「確率共振」の概念を出されています。
でもこれらは、仮説の証明に何も貢献できていません。
エントロピー空間の説明がありませんし、等価ノイズがどうして情報空間に存在しなければいけないのかの説明が無いからです。
エントロピーは概念ですから空間を作らないはずですし、
情報空間に等価ノイズが存在しなければいけない、と言うのも初耳ですし、
そもそも、等価ノイズの意味すら言及されていません。
等価とは、何かの変わりの意味なのか、空間全体に等しくひろがるノイズなのか?
いずれにしても、その詳細及びメカニズムは結局語られないままに進んできました。
今日は、最後の先生の仮説・渦理論を紹介します。
それは、「こころとは、大脳が司る機能」であり、
次に、「ヒトの脳はあらゆる情報環境の変化に適合しており、これは連合野に蓄えられる情報の種類に規格がない事を意味する。」つまり脳はどの様な仕事をするべきかを決められていないという前提に、
ニューラルネットワークの一つであるコホネンが提唱した自己組織化写像 (コホネンのマップ)を重ね、
「自然界に現れる全ての構造が自己形成するように、・・・こころは、自己形成するのである。したがって脳がどう働くかの解明は、連合野に蓄えられた情報が、どのようなルールに従って蓄えられてゆくのかの解明である。つまりは、脳における自己形成する情報統合のルールの解明である。
驚くかもしれないが、実は、すでにそのルールはほとんど理解されている。」
ということ、つまり簡単には、
大脳皮質の柔軟性と
コホネンが提唱した自己組織化写像(そのルール)を重ね、
ました。
しかし世間ではそのような判断を誰もしなかったのです。なぜなら
「大きな理由は、大脳皮質のニューロンネットワークだけでは、コホネンのマップを支える機能構造がつくれないことにあった。」のです。ニューロンだけではダメなのです。
そこで先生は、グリア細胞の作る構造も加味し、渦理論を完成させたのです。
「大脳皮質機能はニューロンネットワークとともに、グリア細胞の作る構造にも依存する」とし、コホネンのマップを支える機能構造を作ったのです。
従来無視されていた、グリア細胞も加味した大脳皮質機能をもとにコホネンが提唱した自己組織化写像を完成させたのでしょうか。
先生の勝利の雄たけびが聞こえます、
「渦理論は、ニューロン絶対主義に凝り固まった脳科学に立ち向かった理論だった。そして、渦理論は大脳皮質のコラム構造がコホネンのマップと等価の機能素子である事を保証する理論だったのである。
コホネンのマップのアルゴリズムで、これまで記載された全ての大脳生理学的機能ユニットは自己形成される。そして、渦理論は大脳皮質コラム構造がその機能素子である事を示している。言い換えれば、渦理論は、大脳機能構造を網羅する始めての理論なのである。それどころか、渦理論は、熱対流が作り出す等価のノイズとしての意識の根源も、その意識が、全身麻酔薬による水のクラスター形成によって抑制される根拠も、はっきりと示している、いわば、脳科学の最終理論である。」と。
今回私が読んだ先生の本、“「脳の中の水分子」意識が創られるとき”には
すぐ上の文章の、根拠も、メカニズムも、詳細説明も、経過説明も、ラフ説明も書かれていません。
したがって、結論だけで、結論に到る経過がないと、正しいかどうか、批評するにも批評も出来ません。先生の他の本が必要になります。
もし、詳細な説明・メカニズム・数式があれば検証が出来ます。
例えば、
大脳皮質コラム構造がその機能素子である事を示していること、
グリア細胞の果たす役割
熱対流が作り出す等価のノイズ
意識の根源
水のクラスター形成と意識の関係
クオリアとの関係
コホネンが提唱した自己組織化写像とグリア細胞の関係
等々。
今は何も述べられていません。
他の先生の本にこれらが書かれてあるのでしょうか。楽しみです。
でも、それらが無ければ、先生がこの本の最終に置かれた文章、
「今でもまだ、水性相理論も、渦理論も、危ない科学との汚名を着せられていることに、変わりはない。」
が正しいと言わざるを得ませんね。