肉迫 | zojurasのブログ

装甲騎兵ボトムズ40周年記念第26話

 

ココナ「こちらウィドー(未亡人)、南国の薔薇、応答せよ・・・・・・・ふあ~。」

カンジェルマン宮殿で決戦が迫る中、EX-10に残されたココナは、寝ぼけ眼でバニラからの連絡を待っていました。

ゴウト「ココナ、交代だ。これ食って寝ろ。」

ココナ「昨日から全然連絡がないんだ・・・・・・ビーラーに撃ち落とされちゃったのかなあ・・・・・・・。」

ゴウト「お前のこと、忘れちまったのかもしれないな。」

ココナ「うるさいんだよっ!!

ゴウトの差し入れのパンを詰め込んでいるココナの元に、やっとバニラからの通信が入りました。

バニラ「・・・・・・・こちら南国の薔薇!」

ココナ「バニラッ!!

バニラ「いよ、未亡人!早起きねえ。」

ココナ「何やってたんだい!連絡もよこさないでさあ!!

バニラ「それどころじゃねえよ、今から突入なんだ!」

ゴウト「キリコはどうした?」

バニラ「よく判らんが、とっくに突入したらしい。それでゴン・ヌーの奴も・・・・・・。」

通信機にノイズが入り、やっと調整したと思ったら、次に入ったのは、総攻撃の突入という言葉でした。

バニラ「いよいよ突入だ!これから降下に入る!!」

ココナ「死ぬんじゃないよ!バニラ!!

バニラ「命令が入る!じゃあな!!」

ココナ「バニラ!聞いてるのかい!?

通信はそこで終わり、不安げなココナと、ゴウトはただただバニラの生還を願っていました。

ゴウト「死ぬんじゃねえぞ、バニラ・・・・・。」

そして、ゴン・ヌー率いるEX-10全軍は、遂に降下準備に入りました。

ゴン・ヌー「全員に告げる!これより宮殿及び、その周囲に降下し、包囲した上で攻撃に移る。宮殿突入はカン・ユーの部隊に任せ、残った者は周辺ジャングルの掃除にかかれ!

バニラ「あの~質問が。」

隊長「さしでがましいぞ!バニラ二等空士!

バニラ「はっ、すみません。カン・ユー隊は本拠に突入するのでありますか?

ゴン・ヌー「彼等は特別だ、先に突入したキリコ達の援護だ。」

それを聞いたバニラは爆撃行動に移りつつ、着陸して、キリコ達の元へ向かいました。

宮殿周辺でATフライは、直ちに降下準備に入りました。

バニラ達が血路を開いた中、AT部隊が着陸し、宮殿に降り立ったのは、シャッコのベルゼルガを含むカン・ユー隊の四機でした。

カン・ユー「宮殿突入の名誉を与えられたのは俺達だけだ!用意はいいな!!

キリコ達も戦い続けていました。

キリコ「キデーラ、ポタリアは見えるか?」

キデーラ「見えるのは敵ばっかりだぜ!」

フィアナ「キリコ、ボロー達はまだね?」

キリコ「ああ、だが今はイプシロンには会いたくない。」

フィアナ「さっきの光は、本部から送られた彼専用のマシンよ。」

キリコ「何?!」

フィアナ「イプシロンのよ!」

イプシロンとボローの前に、新型PS用ATであるX・ATH-02ストライクドッグが姿を見せました。

ボロー「一回り大きいな・・・・・・戦闘行動時間は倍ほどあると聞いている。」

その頃、カンジェルマンを狙うポタリアは、親衛隊にカンジェルマンの居場所を吐かせようとしましたが、必死の抵抗によって圧された彼を助けた者がいました。

バニラ「やはり、あんただったか。」

ポタリア「バニラ!?・・・・・・・助かったよ。

ポタリア「キリコ達に会ったか?」

バニラ「いや、そこら中敵だらけで、身動きが取れねえ・・・・・・。」

しかし、インカムから流れてきた司令部からの通信で、司令部が離宮に移った事を知ったポタリアは、カンジェルマンを単身追いかけます。

早速イプシロンはチェックしながら搭乗しました。

イプシロン「操作系は従来と変わりない・・・・・・いくぞ!」

ボロー「イプシロン!今度こそ抜かるな・・・・・・つまらん見栄で足下を掬われん事だ。」

そしてストライクドッグは飛び出しました。

イプシロン「何処に居る?必ず仕留めてやる!!

その矛先はまず、カン・ユー達に向けられました。

カン・ユー「このまま前進だ!

シャッコ「隊長殿!異常物体です!左前方から何か来ます!!

それはイプシロンのストライクドッグで、シャッコに猛烈な体当たりを喰らわせました。

イプシロン「キリコはお前か!?

カン・ユー「はやく始末しろ!!

しかし、イプシロンの攻撃は

傭兵には対処出来るものではありませんでした。

シャッコ「こんな奴は・・・・・・・はじめてだ・・・・・・!」

イプシロン「貴様らしいな・・・・・・キリコめ!!」

シャッコのベルゼルガも

敢え無く屈しました。

イプシロン「こいつも・・・・・・違う!」

イプシロンは残って逃げ出したカン・ユーを、キリコだと思って追いかけます。

宮殿内を進むキリコ達の前に、バニラが現れました。

バニラ「うわっ!撃っちゃダメ!俺だよ、俺!!」

キリコ「バニラ!?」

キデーラ「お前、何やってるんだ!?こんな所で・・・・・・・。」

バニラ「それどころじゃねえよ!ポタリアが離宮へ行ったぜ!」

キリコ「離宮?」

バニラ「カンジェルマンを追ってるんだ!拳銃しか持たねえでよお!!」

そのバニラの言葉に、キリコははっとしました。

フィアナ「キリコ!?」

キリコ「うん!ボローも多分そこに・・・・・・・。」

一方、キリコ達も離宮に向かっていました。

キデーラ「キリコ、二手に分かれよう!これじゃ標的だぜ!

キリコ「別れるほどの数じゃない。」

キデーラ「バニラが居る!

バニラ「おっ、おい!俺はすっぽんぽんだぜ!!

キデーラ「弾避けになってやる、来い!!

バニラ「おっ、おい、待てよお!!

 

そして、司令部では丸3日寝ていないカンジェルマンの為に無理に寝かしつけようとしましたが、そこへ侍従へ変装したポタリアがカンジェルマンの前に現れました。

カンジェルマン「信じられん・・・・・・・ポター、本当に、お前なのか?」

ポタリア「ポル・ポタリアです!カンジェルマン殿下・・・・・・・。」

カンジェルマン「よせ、「俺」、「お前」で呼び合う仲ではないか・・・・・・。」

ポタリア「何年前の話です!憎しみを込めてなら、そう云ってもいいが・・・・・。

カンジェルマン「相変わらずだな、軽口には警句を以て返す。だが、王族である私に心を開いてくれたのは、お前だけだった・・・・・・身分も地位も越えた同志、友では無かったか・・・・・・・・。」

ポタリア「その友を、何故裏切った!

カンジェルマン「お前になら、私の気持ちが判るはずだ・・・・・。」

ポタリア「こんな叛乱から、クメンの未来が開けると思っていたのか!?

カンジェルマン「・・・・・いいや。」

ポタリア「では何故だ!

カンジェルマン「相変わらずだな、その純粋さは・・・・・・・だが、純粋なだけでは未来は開けぬ・・・・・。」

ポタリア「そうか、ではこの叛乱は只の遊びか!?実験と抜かしたのは本当か!?それを知って、絶望して死んだ女兵士が居た!

カンジェルマン「弾け、ポター。」

ポタリア「黙れ!!

ポタリアは拳銃の引き金を弾けず、バランシングの長槍を取るよう強制します。

カンジェルマン「三度に二度は私の勝ちだったぞ、ポタリア。」

ポタリア「今度は違う!

部下達の邪魔が入らないよう、カンジェルマンは入口を閉鎖し、ポタリアとの一騎打ちに入ります。

そして、イプシロンから逃げ惑うカン・ユーもとうとう捕まって、乗機を破壊されて、辛うじて逃げ出します。

イプシロン「こいつも違う・・・・!」

しかし、今度はイプシロンの前に傭兵部隊の大降下が始まり、イプシロンは増援を要請しますが、ビーラーゲリラ達は完全に圧されていました。

 

そうした中で、カンジェルマンとポタリアの決着もつこうとしていました。

カンジェルマン「クメンは生まれ変わらねばならん!旧い全てを拭い去る為に!

ポタリア「何を今更!!散々語り合った事だ!王族の中で唯一人、未来に目を向けている人物と私は信じた!!

カンジェルマン「新しきものにとって、一番の問題は旧きものへの郷愁だ、反動といっていい!

ポタリア「理想を棄てて郷愁に走ったというのか!?貴様を信じ、貴様に付いてきた者達を巻き込んだのは何故だ・・・・・・何故だ!何故だあ!!

カンジェルマンの刃先はポタリアを捉える筈でした。しかし、それがポタリアの肩に浅く入り、無我夢中でポタリアは槍をカンジェルマンに突き立てましたが、カンジェルマンがわざと狙いを外した上に、避けようとせず、自ら刃を受けた事にポタリアは茫然とします。

ポタリア「何故だ?何故払わなかった!?

カンジェルマン「・・・・・・これが、精一杯さ・・・・・・・。」

ポタリア「死ぬつもりだった・・・・・・のですね!?」

カンジェルマン「旧きもの全てを道連れにな・・・・・・。」

ポタリア「旧きもの・・・・・・。」

そして離宮に着いたキリコも、逃げようとしていたボローを遂に捕捉しました。

キリコ「居たな、ボロー!

キリコとフィアナは、地下に逃げようとするボローを追いかけます。

一方、イプシロンもキリコがボローを追っているのを知り、後を追います。

 

一方、致命傷を受けたカンジェルマンを、ポタリアは看取りながら、カンジェルマンの真の目的を聞く事になりました。

ポタリア「殿下・・・・・・・・。」

カンジェルマン「ポター・・・・・・・私こそが、旧きものの全てだったのだ・・・・・・私のクメンへの愛がどういう形であろうと、旧き者はその郷愁故に私に期待をする・・・・・・ポター、私の役目は望むと望まずにかかわらず、王族のそれなのだ・・・・・・・。因習も、伝統も、階級も、旧来の秩序も、全て引き連れて、私はこの世から・・・・・・・。」

ポタリアはカンジェルマンの真意を知って、頭を鈍器で殴られたようなショックを受けました。カンジェルマンはポタリアと同じ理想を持ちながら、それと真逆の道を選んだのは、クメンの近代化に不要な旧体制全てを巻き込んで、自ら滅ぶ事だったのでした。そして、息絶える前に、カンジェルマンはポタリアにキーを託します。

カンジェルマン「ポター、私は地獄へ落ちるだろう。だが、お前には来るべき未来を、見届けて欲しい・・・・・・・脱出装置のキーだ、使ってくれ、地下に・・・・・・お前には、生き延びて貰い、明日のクメンの将来を見届けてもらわねばならん・・・・・・・お前を・・・・・愛していた・・・・・・・。」

こうしてカンジェルマンは事切れて、ポタリアは例えようもない喪失感と悲しみに晒されました。

そんな状態のポタリアに、親衛隊が襲いかかりますが、駆け付けたバニラとキデーラによって、ポタリアは助かりました。

 

やがて、キリコとフィアナは地下の縦穴にボローを追い詰めていました。

無論、こいつが何もかも引き起こした張本人という訳では無い。

だが、クメン内乱に乗じて、こいつは二人のPSを操り、ある目的の為に働いてきたのだ。

その目的とは一体・・・・・・?!

次回予告

クメンでの旅が終わる。

振り返れば遠ざかる緑の地獄、友よさらば。

薄れ行く意識の底に、仁王立つ数々の修羅象。耳に残る叫喚、目に焼き付く炎、次の旅が始まる。

旅と呼ぶにはあまりに厳しく、あまりに哀しい過去に向かってのオデッセイ。

次回「暗転」

キリコは、次の巡礼地に向かう。