潜入 | zojurasのブログ

装甲騎兵ボトムズ40周年記念第25話

 

キリコ達がカンジェルマン宮殿に乗りこむ準備をしていた頃、濁流に呑まれて死んだと思われていたカン・ユーは生きていました。岸に上がって、ジャングルを彷徨ううちにゲリラと遭遇し、あわやというその時、キリコ達と別れたシャッコに発見され、救われました。

011.jpg

シャッコ「隊長殿、危ないところでした。」

カン・ユー「シャッ、シャッコかあ!!お前だけは来てくれると思ったぞ~・・・・・・・。

シャッコ「大丈夫ですか?」

カン・ユー「まっ、まる三日、食わず、眠らず・・・・・・・キリコに、キリコに会ったな!

シャッコ「連中は、宮殿攻撃に・・・・・・・。」

カン・ユー「か~っ!あの野郎、PSを独り占めする気だ!そうはいかん!そうは、いかんぞおぉぉ・・・・・・。」

安心して昏倒したカン・ユーは気づいた時、EXー10のベッドの上で、ゴン・ヌーと会いました。

ゴン・ヌー「気がついたか?」

カン・ユー「かっ、閣下・・・・・・・!此処は?」

ゴン・ヌー「基地だ。だらしない奴め、女のPSを奪い返されるとは失望したぞ。」

カン・ユー「やっ、やむを得ませんでした・・・・・・。しかし、奴等の位置は見当が付いています、一刻も早く攻撃を・・・・・・。」

ゴン・ヌー「奴等には突入を任せ、目的のPSを我々が戴くこの理屈がまだ判らんのか?」

カン・ユー「しかし、ここから宮殿は遠すぎます・・・・・・。」

ゴン・ヌー「・・・・・・教えてやろう、政府軍は既にクメン全土を制圧しているのだ!

カン・ユー「な・・・・・なんですって・・・・・!?」

ゴン・ヌー「いよいよだぞ!(キリコが宮殿に穴を開けてくれるのを、今は待つのみだ・・・・・・。)」

カン・ユーの生存を露知らず、キリコ達は、カンジェルマン宮殿への突入計画を練っていました。

フィアナ「ここが広場、ここが武器庫でした・・・・・・長い間宮殿に居たとはいえ、覚えているのはほんの僅かだけ・・・・・・・。」

キリコ「いや、充分だ。俺の見たところ、主力はAT部隊だけだ。」

キデーラ「他に大した武器は無いってのか?・・・・・・・まさか、これだけの内乱を起こしているんだぜ、なあ?」

3人が首を捻っている時に、偵察に出ていたポタリアが戻りました。

ポタリア「俺だ!・・・・・・・撤退は本物だ。どうやら総力で、宮殿を守る気らしい・・・・・・・。」

キデーラ「そりゃ見せかけだ、こんな簡単にビーラー共が降参する筈はねえや!」

ポタリア「どっちにしろ、これから先は、ビーラーと手を繫いでいくしかない・・・・・・。」

キデーラ「どうしようってんだ?」

キリコ「・・・・・・俺達が、ゲリラになるんだ!」

キリコの作戦は、ゲリラになりすまし、敵地に突入する事でした。

 

けれども、急激な味方の撤退に、神聖クメン王国の参謀達にも不安の色が濃くなっていましたが、カンジェルマンはそれに構わず、「案ずることは無い。」と言い放ちました。

ビーラーゲリラ達の後退は、そのままビーラー全体の士気にも影響していました。

ゲリラA「撤退命令が出ているぞ!!

モニカ「なんで撤退しなくちゃいけないのさっ!味方はそんなに負けちゃいないわっ!!

ゲリラB「殿下にはもうやる気が無いのさ!所詮、王族生まれのお方よ、旗色が悪くなれば、俺達の事なんか知ったこっちゃないんだ!・・・・・・ぐわっ!!

モニカ「当然の結果だ。殿下の悪口を云う奴は、こうなるのよ!

ゲリラC「モニカ!!

ゲリラD「それじゃご命令通り撤退しろ!そして、生き延びるんだな・・・・・・!

そう云ったモニカ自身にも、カンジェルマンへの不満と不信が芽生えつつありました。

ATを積んだトレーラーの前に現れ、トレーラーに向けてアーマーマグナムをぶっ放します。

慌てふためくゲリラ達はATに乗ろうとするものの、邪魔され、キリコの妨害をかいくぐってATに乗った者も、ポタリアとキデーラのダイビングビートルにやられます。

キリコ「仲間が来るぞ!マシーンを乗り換えろ!!

そしてポタリアとキデーラが乗っていたビートルを自爆させ、敵の襲撃を退けたフリをして、ATにトレーラーを積んで、キリコ達はまんまとゲリラと車列を並べて進みます。

 

しかし、カンジェルマン宮殿で、敗色が濃厚になった事で、ゲリラ達もすっかりやる気も、意気も、消え失せかけていました。

ゲリラE「俺達は・・・・・負けるのか?」

ゲリラF「そうさ、神聖クメンはお終いさ・・・・・・。」

ゲリラG「俺達、何の為に戦ってきたんだよっ!!

ゲリラH「参謀の首が飛んだそうだ。殿下はもう、諦めてるって話だぜ・・・・・・。」

それを聞いたモニカは、思いあまってカンジェルマンを探します。

モニカ「酷い、酷いわっ!!何処?何処にいらっしゃるのですか!?殿下!殿下~っ!!

同じ頃、イプシロンはキリコを倒してフィアナを取り戻す為、出動させて欲しいと願いますが、ボローに却下されます。

ボロー「判らんか?ファンタムは我々を裏切ったのだ!

イプシロン「キリコを倒せば、彼女も目覚める!出撃させて下さい!!

ボロー「何!?殿下の撤退命令中にか?

イプシロン「我々は別です!

ボロー「あと少ししたら、本部からお前専用のATが届く、そうしたら、存分に戦わせてやる!」

イプシロン「しかし・・・・・・!?」

ボロー「これは命令だ!!

仕方なく引き揚げるイプシロンを尻目に、カンジェルマンが話しかけます。

カンジェルマン「クメン内乱如きで、大切な兵器に傷を付けたくない・・・・・・か。」

ボロー「殿下、イプシロンは宮殿防衛の最後の切り札です。」

カンジェルマン「有り難いことだ・・・・・・だが、私は期待しておらんぞ。」

ボロー「失礼ながらそのお言葉、神聖クメンの未来を担うお方のものとは思えませんな。」

カンジェルマン「ほお。」

ボロー「指揮官たる者が、その調子では、敗北の可能性もおおいにある。」

カンジェルマン「敗北・・・・・?」

ボロー「そう。」

カンジェルマン「・・・・・・それこそが、神聖クメンの真の目的かもしれん!」

唖然としているボローに、カンジェルマンは自身の真の目的と本心を打ち明けました。

カンジェルマン「敗北、そして死・・・・・・私だけでは無い、この叛乱に参加した将兵全てが死ぬ。彼等全てを引き連れて、私はこの世から消滅する・・・・・・。

ボロー「犬死にをお望みか?」

カンジェルマン「お前にはそう見えよう・・・・・・・我々は負ける。旧き者は全て滅び、戦火の果ての灰燼が、全ての塵を拭い去った時、本当に新しいクメンに生まれ変わるのだ・・・・・・・ふふふふ、お前がこの内乱のクメン王国をPS兵器の実験場にしたように、この戦いの敗北こそが、私にとっては、一つの実験だったのかもしれん・・・・・・・。

カンジェルマンの真の目的、それは神聖クメン王国を興してクメンの実権を握ることでは無く、近代化に不要なクメン旧体制全てを道連れに神聖クメン王国を自ら諸共滅ぼす、というものだったのでした。しかし、それをあの少女ゲリラのモニカに聞かれていました。

モニカ「酷い・・・・・・酷いわっ!!

モニカはカンジェルマンに銃を向けますが、既にカンジェルマンを殺したところで、もうビーラーには敗北しか道が無い絶望感で、撃てませんでした。

 

そして、遂にキリコ達は調査検問を突破し、カンジェルマン宮殿に入り込みました。

ゲリラI「止まれ!止まるんだ。

キリコ「ブレーキが故障してるんだ、悪いな。」

ゲリラI「貴様!一体何者だ?

キリコ「キリコ・キュービィー・・・・・・。」

乗りこんだキリコ達は、直ぐさまATに乗り、暴れ回りました。

味方になりすまして攻撃してきた敵に、たちまち宮殿は大混乱に陥りますが、突然ポタリアはATを降りて、宮殿内の建物に入ります。

キリコ「どうする気だ?ポタリア!!

ポタリア「マシーンは邪魔だ!俺の目的はただ1つ、カンジェルマンを倒す事だ!!

飛び込んできたキリコ達に、イプシロンは「キリコだ!奴に違いない!だとすれば、彼女も・・・・・・」と飛び出そうとしますが、ボローに「今は待つのだ!」と止められます。

 

ポタリアはゲリラ達を蹴散らしながら王宮を目指しますが、その途中でばったりと撃ち合った兵士がモニカだと気づきます。

ポタリア「モニカ!?

モニカ「ポタリア!私は・・・・・・・。」

だが、後ろからのゲリラの銃撃を誤って喰らい、モニカは致命傷を受けました。

ポタリアに抱えられて部屋に連れられたものの、モニカの命は尽きようとしていました。

モニカ「ポタリア・・・・・・・・カンジェルマンはただ、クメンを混乱させただけ・・・・・・・この戦いは、彼にとっては、只の実験だった・・・・・・・。」

ポタリア「喋るな!

モニカ「この戦いに、何の意味も無かった・・・・・・・でも、会えて、よかった・・・・・・・・。」

そう云って、モニカは絶命しました。ポタリアは悲しみと怒りのやり場を、カンジェルマンにぶつける決意をしていた時、カンジェルマン宮殿は、近付く大編隊に気づきました。

それは、アッセンブルEX-10の全戦力で、司令官のゴン・ヌー自らも乗りだし、最終決戦を挑んできたのでした。

 

キリコ達の戦いも続いていました。

キリコ「この先が武器庫だ!キデーラ、此処を頼む!

キデーラ「武器庫では上手くやれ!俺は本拠に突っ込む!!

キリコ「判った!」

武器庫に入ったフィアナは、タートルを乗り捨てて、そこにあったかつての愛機、ブルーティッシュドッグに乗り換えました。

その時、明け方の空でキリコ達の頭上に流れ星が光りましたが、それは秘密結社が、イプシロンの為に送った新型ATでした。

ボロー「来たぞ!お前の専用機だ!!

武器庫をフィアナと爆破したキリコは、再び宮殿内に突入します。

あの光が、イプシロンの為の専用ATだったと、その時の俺に判るはずも無かった・・・・・・・。

次回予告

時代は撓みに撓み、そして、放たれた。

怒濤とはまさにこれ。疾風とはまさにこれ。

奧クメンを荒れ狂う狂気と殺戮。因習も伝統も火に焼かれ、過去へと流され逝く土砂流。

悲劇は蓄積され、歴史となり、神話となる。

次回「肉迫」

キリコは歴史の裂け目に打ち込まれた楔(くさび)。