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装甲騎兵ボトムズ40周年記念第24話

キリコのマーシィドッグは、腕にフィアナを乗せて密林を進んでいました。目的はカンジェルマン宮殿でした。

フィアナ「このまま、何処かへ行ってしまいたい・・・・・・。」

キリコ「降りるか?ここで・・・・・・・。」

フィアナ「いいえ、ここで別れたら、二度と会えない気がして・・・・・・。」

そこへビーラーゲリラのAT部隊が襲撃してきました。

ビーラーのスタンディングトータス部隊の攻撃に、キリコといえど劣勢でした。フィアナも破壊された敵ATの銃を撃ったりしてキリコを援護しますが、数での不利は覆せませんでした。

多数の敵の前に脚関節がショートして動きが重くなったマーシィドッグに、ビーラーが一斉攻撃を掛けようとしたその時、ビーラーATが爆発しました。

キデーラ「へっへ~!!キリコ!この借りは返して貰うぜ!!

ポタリア、キデーラ、シャッコがキリコの後を追ってきて、3人の援護でビーラーのAT部隊は撃破され、キリコは助かりました。

ポタリア「カン・ユー大尉が居ないようだが・・・・・・?」

キリコ「ああ、俺がやった・・・・・・。」

ポタリア「やっ、やったって・・・・・・お前・・・・・・?!

フィアナ「キリコが私を助けようとして、争っているうちに谷川へ・・・・・・・。」

現れたフィアナの事を、キリコが説明します。

ポタリア「誰だ?あの女は。」

キデーラ「ヘリに乗っていた、敵の女だな!?」

キリコ「・・・・・・・PSだ。」

キデーラ「ピッ、PSはブルーATだけじゃなかったのか!?

キリコ「ああ。」

ポタリア「そうか、お前の本当の目的は・・・・・・。」

キデーラ「こいつだったって訳かい・・・・・・。」

ポタリア「それだけじゃない、このまま進めば、敵の本拠だぞ!?」

キリコ「ああ、乗りこむつもりだ。」

ポタリア「やっぱり、何か隠しているな?訳を話せ!

キデーラ「吐いちまいな!!

キリコ「・・・・・・・場所を変えよう。」

キリコは3人に、何故このようになったのか、大まかな説明をしました。

キリコ「あの百年戦争末期の事だ。メルキアは極秘プロジェクトを行っていた、PS計画だ。そして、遂に人体実験のテスト段階にまでこぎ着けていた。俺は秘密組織の素体奪取作戦に、知らずに組み込まれていた、俺の人生はそこで狂った・・・・・・・。」

ポタリア「お前が追っているのは、その謎の組織と云う訳か。その組織と、カンジェルマンが組んでいる・・・・・・・。何かあるな・・・・・・。」

キデーラ「確かにな・・・・・・・しかしなあ、嫌な野郎だとはいえ、お前は指揮官をやっちまったんだ!!

キリコ「・・・・・・連行するか?」

キデーラ「したくはねえさ!だが、このまま見過ごす訳にもいかねえ。どうする?ポタリア・・・・・・。」

ポタリアの覚悟は既に決まっていました。

ポタリア「・・・・・・俺は本拠へ行く!どっちみち、殿下の首を獲る事が目的だ。キリコもPSの裏を探りたいらしい。」

キデーラ「目的は済んでねえって事か。」

ポタリア「ああ、俺達二人はな。邪魔はさせん!!」

キデーラ「だろうな、カンジェルマンの首なら良い値が付くぜ!」

ポタリア「金じゃ無い!理想の為だ!!殿下はかつて、俺の上官だった・・・・・・。

キリコ「上官・・・・・・!?」

ポタリア「ああ、クメン王国親衛隊にな。愛国心に燃えた快男児だった・・・・・・。」

 

その頃、カンジェルマン宮殿では、クメン政府とメルキアが手を結んだ事によって、ビーラーゲリラ達も戦略の転換を図っていました。カンジェルマンは大挙して押し寄せて来るであろうクメン・メルキア両軍を迎え撃つべく、本拠地である宮殿に敵を誘い込んで、一気に殲滅させるという作戦方針を提示しました。異論がある中で、参謀達はその作戦の為に積極的に動き始めていましたが、カンジェルマンは、思わず天を見上げながら呟くのでした。

カンジェルマン「許せ、嵐が吹かねば、太陽は輝きはしない。古いクメンを吹き飛ばす嵐に、私はなった!古い全てを拭い去る嵐に・・・・・・!

そのカンジェルマンの秘めた思いなどよそに、ヂヂリウムを浴びるイプシロンとボローが話し合っていました。

ボロー「よく浴びろ。戦いの傷だけでは無い、魂の隅々まで清く洗い落とすのだ。敵に情けをかけられて、よくもおめおめと戻ったものだ。それで、キリコは一人で逃げたのだな?」

イプシロン「はい!」

ボロー「・・・・・・そうではあるまい、プロトワンと一緒だ。」

イプシロン「二人で、逃げていると?」

ボロー「どちらも生かしておけぬ二人なのだ!」

そして、キリコとフィアナには、ポタリアに続いてキデーラも同行する事になりましたが、シャッコは傭兵契約を優先させていました。

シャッコ「俺は残る。契約が残っている俺は、ただの傭兵だ。」

キデーラ「勝手にしろ!この優等生め!!

かくして、シャッコを除いた面々で、カンジェルマン宮殿に向かうことになりました。

しかし、その途中でEX-10のヘリに見つかり、カン・ユーが残した通信でフィアナを目撃したヘリが降下してきましたが、そのヘリにキデーラが銃弾をぶち込んで退散させました。

キデーラ「へへへ!これで俺もお払い箱だな!!

無論、その報告はゴン・ヌーの耳にも入り、キリコ達は正面のゲリラだけではなく、後方の味方まで敵にまわして追われる事になりました。

ゴン・ヌー「裏切ったなキリコめ!カン・ユーもおそらく・・・・・・・。」

キリコの裏切りに焦るゴン・ヌーに、ロッチナから通信が入りました。

ロッチナ「その後の状況はどうですかな?ゴン・ヌー閣下。」

ゴン・ヌー「はっ、大尉。素体を見つけました。」

ロッチナ「ほう、やりましたな。これにはあなたの面目がかかっている。」

ゴン・ヌー「それは勿論。」

ロッチナ「大規模攻勢がかかる前に、PSを奪取する事です。クメンの軍部に奪われたら、事は重大ですからな。」

ゴン・ヌーはPSがキリコの元にあるのに、急がなければならないと動き始めていました。

それはキリコの親しい3人組もでした。

ゴウト「三日月湖は激戦だったらしいな。」

バニラ「ああ、特殊部隊はバラバラになっちまうし、指揮官のカン・ユー大尉は行方不明だ。」

ココナ「キリコ、大丈夫かなあ・・・・・・。」

ゴウト「殺したって死なねえよ、あいつは・・・・・・・。」

ココナ「本格的に始まるのは、キリコ達次第なんだろ?」

バニラ「ファンタムレディを探してるんじゃねえの?」

ココナ「そうだね・・・・・・・それがキリコの目的だもんね・・・・・・・。」

ゴウト「とにかく、この戦争も大詰めに来てるってことだ。」

バニラ「ああ、そのうち此処も閑古鳥だ。身の振り方を考えた方が良いぜ。」

そんな時、バニラに出動命令が出されました。

バニラ「ほら、また出番だ!」

ゴウト「無理するな、生きてりゃこその人生だ。」

バニラ「ああ、ココナ!向こうでキリコに会えるかもしれねえ。よろしく云っておくぜ。」

ココナ「バニラ・・・・・・。」

バニラ「綺麗にしていろよ・・・・・・って、んな柄じゃねえか!」

こうして、バニラもまた出動しました。

ジャングルを進むキリコ達が、巨大な滝にさしかかった時、滝の中に隠れていたビーラーATの奇襲攻撃を受けましたが、PSであるフィアナの感覚と察知に、水中に居る敵もたちまち駆逐され、そのPSの力にキデーラもポタリアも目を見張ります。

キデーラ「すげえ、流石PSだな!

こうして一行は損害も受けずに、敵を突破できました。

ポタリア「敵の反撃が厳しくなるぞ。

キデーラ「覚悟の上だ!出てきやがれ!!

そして、キリコとフィアナの光景に、キデーラも思わず苦笑いします。

キデーラ「おむつまじいこって、お~お。」

 

その頃、イプシロンとボローは、秘密結社最高幹部のキリィからキリコとフィアナの抹殺が指令されます。

キリィ「既に結果は歴然だ!欠陥品は抹殺しておくべきだったのだ!イプシロン、お前は完全なPSでなければならん!そしてボロー!お前の管理能力にも問題があるようだ!」

ボロー「はっ、はあ・・・・それはもう、肝に銘じて・・・・・・。」

キリィ「神聖クメン王国も先が見えておる・・・・・。」

ボロー「カンジェルマンは何か、企んでいます。」

キリィ「・・・・・・・我が組織では、最新のPS用ATを開発した。PSの能力がダイレクトに伝わるその性能は抜群だ。それをお前にやろう、イプシロン!」

イプシロン「はっ!」

キリィ「ボロー、速やかにキリコとファンタムを抹殺せよ。」

ボロー「はっ!必ず・・・・・。」

キリィ「必ずだぞ・・・・・。」

そういう秘密結社の陰謀も知らず、キリコ達は崖の上の古城の側に来ました。しかし、そこはかつて要衝だった事から、ビーラーの砦になっていました。そこでフィアナが単身乗りこんで、敵状を探ると共に、基地内を攪乱する作戦に駆って出ます。

キリコ「よし、援護する。無理をするな・・・・・。」

フィアナ「私は・・・・・PSよ。」

キリコの心配と、キデーラの「どう見たって普通の女だよなあ・・・・・・」という感想をよそに、フィアナは古城に乗りこみます。

古城内ではカンジェルマンの撤退命令によって、ゲリラ達の行動に混乱が生じていました。その隙を突いて、フィアナはATを奪って攻撃を開始し、ゲリラ達は応戦するものの、味方だったPSが敵に回った事で、逆に撃破されていきました。

そこへキリコ達も乗りこんできて、古城内のゲリラ達は一掃されました。

敵を全滅させたと思ったその時、一機のトータスが現れ、キデーラが攻撃しますが、キデーラの攻撃は全く当たりませんでした。

キリコが攻撃を制止すると、そのトータスに乗っていたのがフィアナだと判りました。

キデーラ「・・・・・・確かに、只の女じゃねえ!?」

 

小休止しながらも、ゲリラ達の動きに、何か妙な雲行きを感じる一同でした。

フィアナ「無電を傍受したわ。殿下は各前線基地兵士に、集結命令を出しているそうよ。」

ポタリア「馬鹿な!ゲリラ戦を展開、各個撃破しなければ、ビーラーに勝ち目は無い!カンジェルマン殿下は王族一の軍事戦略家だった、それが何故・・・・・・?

キリコ「この内乱には、不可解なものがあるな。」

ポタリア「俺には判らん、殿下の真意が・・・・・・・。」

キデーラ「深刻に考える必要はないさ。どうせ、首を斬るんだろうが。なあ、ハハハハハ・・・・・・。」

 

そこへ、バニラのヘリコプターが飛んできて、キリコ達を確認しました。

バニラ「キリコちゃん!?・・・・・・・こちら、バニラ二等空士。カンジェルマン宮殿近くの古城を発見!キリコ達は無事です!」

通信兵「PSは居るか?」

バニラ「PS・・・・・・・ATが4つ、それだけです。」

通信兵「よし、そのまま釘付けにしろ!」

バニラ「・・・・・・・釘付け?」

通信兵「間もなく、本部から追撃部隊が殲滅する。」

バニラ「殲滅・・・・・・!?」

通信兵「ゴン・ヌー閣下からの命令だ!絶対逃がすな!!」

バニラ「そんな!?・・・・・・・こりゃ大変だ!!

バニラは慌てて殲滅部隊が迫っている事をキリコに、ヘリの動きで伝え、それを見たキリコも察知していました。

ゴン・ヌーが俺を放っておく訳が無い。

前と後ろの敵に挟まれて、俺は燃えている。

だが、垂れ込めた雲の下の宮殿には、深い疑惑が渦巻いていた・・・・・・。

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次回予告

崩れさる信義、裏切られる愛、断ち切られる絆。その時、呻きを伴って流される血、人は何故・・・・・・・。

理想も愛も牙を呑み、涙を隠している。血塗られた過去を、見通せぬ明日を、切り開くのは力のみか。

次回「潜入」

キリコは、心臓に向かう折れた針。