思惑 | zojurasのブログ

装甲騎兵ボトムズ40周年記念第19話

 

突然のビーラーゲリラの夜襲を受け、アッセンブルEX-10のAT部隊は出動しました。基地防衛戦の中でキリコは敵ゲリラの主力であるATが見当たらない事から、自分達を釘付けにして、補給地であり、生命線のニイタンを狙っている事に気づきました。

 

基地防衛に固執するカン・ユーを見限って、キリコはポタリア、キデーラ、シャッコと共に、ニイタン防衛に向かいましたが、カン・ユーは既にゲリラが居なくなったにも関わらず、ジャングルを焼き払う不毛な事をしていました。流石に部下達にもニイタン防衛に向かうべきという声が出始めましたが、自分の判断ミスを認めないカン・ユーは、それさえも突っぱねました。

カン・ユー「その間に基地が襲われたらどうする!?お前らにその責任が採れるのか!?ええ、どうなんだ!?

攻撃で出火したファンタムクラブの燃え広がりは、留まることを知らず、バニラとココナの必死の消火活動も空しく、店が焼けるのは時間の問題となっていました。

ココナ「バニラ!もうダメだ、逃げよう!!

バニラ「逃げたきゃ、お前一人で逃げな!俺は絶対に動かねえ!!

ココナ「だって、敵はもうそこまで来てるんだよ!ホラ!!

バニラ「・・・・・・俺は絶対に逃げねえぞ!!」

ココナ「頑固者!!

バニラ「動かねえったら、動かねえ!!

そんな中、ようやくキリコ達が到着し、ビーラーのATと戦闘になりました。

キリコ達の参戦で、ビーラーのAT隊も撃破されていきました。

しかし、既にニイタン市の火災はほぼ全域に及び、手遅れな状況でした。

ポタリア「気をつけろ!近いんだ!!

キリコ「仲間達が心配だ!ここは任せる!!

けれども、時既に遅く、ファンタムクラブに拡がった猛火は、店全体と覆っていました。

バニラ「ああっ・・・・・・・おっ、俺の店・・・・・・・。

バニラもとうとうココナに外へ引きづずり出された直後、ファンタムクラブは茫然とするバニラの目前で焼け落ちていきました。

そんな二人にビーラーのATが迫った時、キリコが助けに来ました。

キデーラ「キリコ!無事か?

キリコ「ああ!だが、店を焼かれた!

キデーラ「なんてこった!もう、あの店の酒が飲めねえとは・・・・・・。

キリコ達が参戦しても、ニイタン市の防衛は、既に焼け石に水の状態でした。

キリコ「何処だ!?何処に居る、イプシロン!!

 

補給地であるニイタン市の攻撃成功の報がもたらされた時、大戦果に沸く一同の思いとは別に、カンジェルマンは撤退を命じ、キリコを狙うイプシロンにも釘を刺します。

イプシロン「反対です!今にきっと、敵の主力が出てきて、その中にキリコも居るはずです。殿下!私の指揮するAT部隊を出動させて下さい!!

カンジェルマン「これはお前の為の戦いでは無いぞ、一時の勝利に酔って、本来の目的を見失ってはいかん!」

イプシロン「それじゃ、私はいつ・・・・・・!?」

カンジェルマン「・・・・・・・頭を冷やせ!」

カンジェルマンの決定に不満なイプシロンは、フィアナの所へ来ますが・・・・・・。

イプシロン「よくそうやって落ち着いていられますね、戦いたいとは思わないのですか?それとも、奴のことを・・・・・・。」

フィアナが発した言葉は、同じPSであるイプシロンを驚かせるものでした。

フィアナ「いいえ・・・・・・・戦いが、怖いのです・・・・・・・!」

イプシロン「バカな!我々PSはそのように造られては居ない筈!!

フィアナ「私にも判りません・・・・・・けれども、戦いが・・・・・・怖いのです!」

ポタリア「モニカ・・・・・・・お前もこの戦場に居るのか!?」

モニカに思いを馳せながら戦っていたポタリアのATに、バズーカで狙いを付けたゲリラがいました。それはモニカでしたが、ATのパイロットがポタリアだと知る由も無く、バズーカを撃ったモニカだったものの、突然の撤退命令に狙いが外れました。

モニカ「そんなバカな!?敵はあれだけだよ!!

ゲリラ「命令だ!急げ!!

モニカ「・・・・・・判ったよ!!」

圧倒的に優勢だったビーラーが、一斉に撤退していった事にキリコ達は驚きました。

ポタリア「どういう事だ?ビーラー達が逃げ出してゆくぞ!?」

キリコ「こっちもだ!」

キデーラ「どうなってるんだ?」

ビーラーの撤退が終わった後、遅すぎる主力AT隊がやってきました。

キリコ「カン・ユーだ・・・・・・。」

キデーラ「あの馬鹿め!やっと気づきやがったか!

キデーラの言葉通り、カン・ユーの無能な指揮の為に、ニイタンは完全に焼け落ちてしまいました。

 

翌朝、死臭の焦げ跡の中で、バニラはココナから治療を受けていました。

ココナ「・・・・・・痛むかい?」

バニラ「・・・・・・・平気だ。」

ファンタムクラブで再出発を賭けていたバニラでしたが、店が焼け落ちた事で、すっかり意気消沈していました。気遣うココナに、バニラも思わず聞き返します。

バニラ「間違っていたんだ!!・・・・・・何かが、間違っていたんだ・・・・・・・・。お前、なんで俺に付き合うんだ?傷の手当てまでしてくれるとは思わなかったぜ・・・・・・・。」

ココナ「・・・・・・あんたらしくないよ!」

そこへ、ザイデンから帰ってきたゴウトがやってきました。

ゴウト「ココナ!バニラ!」

ココナ「おやっさん!!・・・・・・・なんだい今頃!!

ゴウト「これでも急いだんだ、ザイデンから帰ってきたところで、この有様だもの・・・・・・・。で、どうだ?」

バニラ「ああ・・・・・・・景気よく燃えたろ!

ゴウト「とにかく、二人とも無事でよかった。すぐ俺の事務所に来てくれ!」

ココナ「どうして?」

ゴウト「いや、気になるんだよ、キリコが・・・・・・・。」

ココナ「キリコが?」

バニラ「何かあったのか?」

ゴウト「・・・・・・・ゴン・ヌーの野郎、基地にとんでもねえ奴を連れて来やがった!?

バニラ「いたたたたっ!・・・・・・とんでもねえ奴?」

 

ゴウトのいうとんでもない奴の事を知らないキリコは、ゴン・ヌーに呼び出されていました。それはカン・ユーが、キリコが命令に従わなかった事で、軍規違反があったという事での処罰要望でしたが、キリコが抗弁しないのに、ゴン・ヌーは基地防衛より、ニイタン防衛に向かったキリコの方が正しかったとして、カン・ユーの要請を却下しました。

カン・ユー「閣下!?

ゴン・ヌー「他の者からお前に対しての訴えも出ておるぞ!お前の指揮能力に対する不信任だ!キリコ、これについてお前の言いたい事は?」

キリコ「・・・・・・大尉殿にとっては、基地防衛も任務の1つです。」

ゴン・ヌー「・・・・・・それだけか?」

キリコ「はい。」

ゴン・ヌー「良い部下を持ったなカン・ユー、お前は下がれ!」

カン・ユー「はっ・・・・・・失礼します!」

悔しがりながら退出するカン・ユーを横目に、ゴン・ヌーが呼び出した本当の理由、ゴウトが言っていた「とんでもねえ奴」がキリコを待ち受けていました。

キリコ「おっ、お前は!?」

ロッチナ「覚えていてくれたか?会えて嬉しいよ。」

ゴン・ヌー「ハハハハハ、驚いたか?こう見えても、わしは顔が広い。」

ロッチナ「そして世間は狭い。ましてや、戦場以外では生きられないお前を探す事は、そう難しい事ではない・・・・・・。」

ゴン・ヌー「お前が此処に来た時、ロッチナ大尉とは、連絡を取っていた。」

キリコ「何かあるとは、思っていたよ・・・・・・・。」

ロッチナ「素体は元気かね?」

キリコ「ああ。」

ロッチナ「さて、私が此処に来たのは無駄な尋問を繰り返す為ではない、その逆だ。つまり、目的は違っても、我々3人はパーフェクトソルジャーで1つに結ばれている。この際、全てを知って欲しいのだ・・・・・・・。」

キリコがロッチナと再対面していた時、カンジェルマンも長年対立し合っていたメルキアとクメンが停戦を迎えた事で、神聖クメン王国も否応なくその変化への対応の会議をしていました。

その会議とは別に、フィアナの検査中、イプシロンがボローに訊ね、彼女が何故キリコに好意を抱いているのかを知ります。

ボロー「・・・・・・・何の異常もない、疲れが出たのだろう・・・・・・・。」

イプシロン「彼女は戦う事が怖いと云っていた・・・・・・そんな事があるのですか?」

ボロー「彼女にはな。」

イプシロン「何故です?不可能だ!」

ボロー「お前達が思っているほど、パーフェクトソルジャーは簡単に生まれるものではない。その誕生の過程で、取るに足らない事故が起こった。ただ・・・・・・・問題はその後だ。」

イプシロン「何です?聞かせて下さい!!

ボロー「彼女が生まれて初めて見たのが、キリコだったのだ!」

 

キリコとゴン・ヌーは、ロッチナからPSの概要を聞かされていました。

ロッチナ「PSは脳生理学、分析学、機械工学、あらゆる分野のエキスパートが集まって始められた。目的は文字通り、”完全なる兵士”を生み出す事だ。」

ゴン・ヌー「完全・・・・・・とは?」

ロッチナ「人体をマイクロコンピュータと一体化させ、演算効率を加速させる。知っての通り、我々通常人の反射神経は、発達した機械のメカニズムに追いつけなくなっている。それに応じて筋力を増させ、速度を上げる・・・・・・第二に、脳そのものにも手が加えられ、あらゆる情報を再処理して、それを機械のプログラムと一体化させていく。PSはいわば、時代に適応した一種の新人類なのだ。PSを生み出す上で、あらゆる日常的な知識は一種の障害となる。PSはプログラムされていない空白の状態で生まれる。その状態で戦闘用レクチャーを受け、後は一般人と同じ知識と人格が形成される。」

キリコ「後は俺達と同じ・・・・・という訳か?」

ロッチナ「そうだ。お前が小惑星基地を襲った時、カプセルの中にプログラムを施される直前の素体があった。例の謎の組織にカプセル毎強奪された為、我々も研究を中断した・・・・・・・。」

キリコ「そして、PSはもう一体造られ、それがイプシロンという訳か?」

ロッチナ「その通りだキリコ、我々に協力してくれんかね?」

キリコ「何故俺に?」

ロッチナ「PSとなんとか互角に戦えるのはお前しか居ない。無論、報酬は望むままだが・・・・・・。」

ロッチナとゴン・ヌーに警戒しながらも、キリコは遂に、リド襲撃の真相を打ち明けることにし、ロッチナも自分の考えが正しかった事を知ります。

キリコ「その前に1つ聞きたい。彼女がもし、プログラムを施される前に、何か別な物を見たとしら?」

ロッチナ「・・・・・・・すると、やはり・・・・・・・。」

キリコ「ああ・・・・・・。」

ATの整備をしながら、キリコはゴウトに内容を語りました。

ゴウト「すると、ロッチナと手を結ぶことにしたのか?」

キリコ「PSを狙っている間は、俺の身も安全という訳だ。」

そのキリコの言葉に、ゴウトもここでの商売が潮時だと感じていました。

ゴウト「俺もそろそろ、覚悟を決めなきゃな・・・・・・。」

キリコ「戦争は続く、とっつぁんは儲かる一方だろ?」

ゴウト「それがダメなんだ。クメンとメルキアは近いうちに軍事同盟を結ぶ、そうなりゃ、ビーラーなんぞは、あっという間に片付いちまう・・・・・・。」

キリコ「傭兵がデカイ顔をしていられるのも、今だけか・・・・。」

ゴウト「ああ、俺だけじゃねえ、ここに居る連中全員が、覚悟を決める時が来たのさ・・・・・。」

その覚悟を決める連中の一人に、バニラも居ました。いつまでも店を焼かれたショックを引きずっている場合ではなく、ココナを振り切って軍隊に入ろうと決意します。

バニラ「もう一回やり直すのさ、お前が言うように。もう戦争に集って生きるのは飽き飽きした!ウジ虫より、腐った肉の方がまだマシだ!!

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そして、キリコ達の特殊部隊に向かいますが、バニラの「俺も連れてってくれ!」という言葉をよそに、特殊部隊を乗せた船はアッセンブルを離れ、二度と戻る事はありませんでした。

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その様子に、ココナは「たのまれグッバイ」を口ずさむだけでした・・・・・・。

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次は・・・・・・。