19世紀前半、英国の医師ジェームズ・パーキンソン氏がはじめて注目した疾患なのでこの名があります。
古くはパーキンソン氏病という呼び名も。
非常に罹患率が低く、稀にしか見られなかったため歴史的に注目されなかった経緯があります。
パーキンソンはアル中でも脳疾患でもないのに手が震える(振戦)ことに注目し、その他に体の動きが悪い(寡動)、前傾姿勢、文字が小さくなる等の特徴をとらえたものの原因については一切わかりませんでした。
20世紀にドイツのレビーによって、患者の神経細胞の中に奇妙な構造物(レビー小体)が生じていること。
ロシアの神経医師によって、パーキンソン病の病変が中脳の黒質にあることが判明しました。
つまり、パーキンソン病はその正体をつかみはじめて100年程度しか経過していない新しい病気です。
それ故に原因不明で難病とされてきましたが、近年原因はα-シヌクレインという物質の異常蓄積によってレビー小体が中脳黒質に蓄積して発病するということが分かっています。
完治しないとされていますが、実は完治はできます。
中脳の一部を移植すれば完治するのです。
実際、中絶胎児数体より取り寄せた中脳細胞を患者に移植したところ完治した事例が報告されています。
ただ、中絶胎児を利用する倫理的問題もあり、治療法とされていません。
そこで期待されているのがiPS細胞を使った移植治療。
iPSで培養した中脳細胞を移植すれば元通りになります。ほぼ100%だそうです。
iPS細胞の実用化が待たれますが、今のところは試行錯誤の段階のようです。
パーキンソン病は手の震え(振戦)が特徴ともいえるため、安静時に手が小刻みに震えているとパーキンソン病という疑いを持って見られることが多いようです。
近年ではロシアのプーチン大統領が安静時に手の震えがあり、それを隠すためにテーブルをギュっと握っている映像がニュースで報道されたのは記憶に新しいのではないかと思います。(それだけで、パーキンソン病とは言えません)
困ったことの一つにパーキンソン病をめぐるデマやオカルト情報が絶えないことがあげられます。
・パーキンソン病は認知症になって死ぬ → レビー小体認知症を絡めたデマ
(統計的にはパーキンソン病の認知症率が高い)
・コーヒーなどカフェインが予防になる → 統計的な数値のみ。メカニズムなし
・振戦や寡動があると何でもパーキンソン病 → パーキンソン症候群との区別なし
他にもいろいろ。
ロシアのプーチン大統領に手の震えの兆候が見られだけで、プーチン大統領重体説のデマが拡散しました。(パーキンソン病だけでは死にません。)
パーキンソン病に罹患したとされる著名人にヒトラー、毛沢東、鄧小平があります。これにプーチン大統領が加わりますと独裁者がよく罹患する病というイメージです。
独裁者は皆、大なり小なり早急にいなくなってもらいたい存在です。
だから、振戦が見られると皆、パーキンソン病にしてそれが元で亡くなったのだということにしたい心理が働いているのかも知れません。
パーキンソン病で直接、命を落とすことはありませんが、放置していると歩行困難に見舞われることはあります。
Lドパなどの薬が効くので糖尿病同様、気長に付き合っていくしかない病のようです。
一日も早くiPS細胞を使った移植治療が始まることを祈らずにはいられません。