同じような経験をした人がいっぱい居るんじゃないかと思うが、実話。

嫁と一緒に2000m級の山に登山していた時の事だ。残雪が少し残っていてアイゼンを使いつつ山を登っていたが、とある場所で意味もなく、急にこの道を登るのが嫌になった。

嫁にルートを替える事を提案したら、嫁もなんとなくこの道を通るのが嫌な感じになったらしく、賛成してくれて、少し遠回りの平坦なルートを通った。

その日は別に何も無かったのだが、数日後、その避けたルートで落石事故が起こり、女子大生が重症を負ったそうだ。

嫁にその事を云うと、なんか視線を感じて気持ち悪くなって、ルートを変えたくなったとか云う。俺は特に理由無く、いきなり通りたくなくなっただけ。

そのままルート変えなかったら落石に遭っていたのだろうか。

最初は混乱していたが、一人だけ狼狽しているのも癪なので、仲間に倣い、釣ったバスを後ろに放り投げてみた。
しばらくすると、やはり同じようなバリバリという大きな音。
ここはそういう場所なんだな、と何となく納得して、釣りに没頭したそうだ。
一風変わったリリースを繰り返しながら。


帰り際、音のした辺りをちらっと覗いてみた。
バスは影も形もなく、ただ生臭い臭いだけがうっすら漂っていたという。



友人の話。

釣り仲間と二人で、近場の山にある溜め池へバス釣りに出かけた。
先に釣り上げたのは仲間の方だった。中々の大きさだ。
しかし仲間はそれをリリースすることなく、後ろの繁みの中へ放り投げた。

「バスをリリースするの、嫌うタイプだったっけ?」

そう問い掛けると「いやこの場所ではそういう約束だから」などと言う。
意味がわからずにいると、魚を投げ込んだ辺りから大きな音がした。

 バリバリ ガキ バキン!

何かが硬い物を噛み砕き、飲み込んだような、そんな音。

「今の音、何?」

慌てて聞いたところ、次のような返事があった。

「いや、だからそういう約束というか決まりなんだ。
 何というか、池の主への御裾分けみたいなもんだとでも考えてくれ。
 実際俺らって、バス釣っても食べないから構わないだろ」

仲間はあくまで平然としていたという。

「いや、だからそういう約束というか決まりなんだ。
 何というか、池の主への御裾分けみたいなもんだとでも考えてくれ。
 実際俺らって、バス釣っても食べないから構わないだろ」