それはどこの家にもある物置小屋のように見えた。
俺はしばらく言葉を失い突っ立っていたが、
「———……ょ」
またあの声が聞こえてハッと我に返った。
この先の小屋の方から聞こえた。間違いなく人の声だ。
確認しなければ……と思ったが、何か嫌な予感がした。
まず、ここは何だろう。
こんな場所、俺は知らない。今まで何度もこの山に登ったが、こんな場所があるなんて聞いたこともなかった。
周りの木々で光が遮られているため薄暗く、どうにも不気味な感じがする。
「———……ょ……」
それでも、聞こえてくる声は気のせいじゃない。
人がいるなら確認しないと。
しかし、大声を上げて呼びかける気にならず、
息を潜めて、足音を立てないように、静かに小屋へ近寄っていった。
……そうして小屋の前まで来て、俺は後悔した。
小屋には扉があったが、その扉にはボロボロになったお札らしきものがびっしりと貼り付けられていた。
元は白かったのだろうが、遠目には茶色っぽく汚れていたそのお札が、扉の色に溶け込んで見えなかったのだ。
扉には南京錠がついていたが、経年劣化によるものか壊れていて、ぷらんとぶらさがっているような状態。
そのせいで扉が少し開いていて、隙間が出来ている。