「?」
何か聞こえた。
人の声みたいだったけれど……と、周りを見渡す。
自分が歩いているのはちゃんとした登山コースだ。
別に人と遭遇しても何もおかしくは無いが、前にも後ろにも人影は無い。
風の音が人の声のように聞こえただけか……と思い直して歩き出すと、
「———……」
また聞こえた。
聞こえてきた方は、コースからは外れた藪の方からだった。
男とも女ともつかないが、か細く弱弱しい感じの声。
「誰かいるんですかー!?」
もしかすると怪我でもした登山客がいるのかと思い、声を張り上げた。
だが、返事が無い。
少し躊躇ったものの、藪の中へ向かってみることにした。
気のせいならそれでいい。けれどもし助けを求める人の声だったらと思うと、確認せずにはいられなかった。
「誰かいるかー!?」
声を上げながら進んでいく。
藪は小柄な人ならすっぽり隠れてしまうほど高く、もし人が倒れていたら発見は困難だろう。
藪を掻き分けながら注意深く周りを確認して進んでいくと、唐突に開けた場所に出た。
そこは、自分も初めて見る場所だった。
あれだけ密集していた藪が急に無くなり、湿った土の地面にぽつぽつと木が等間隔で生えている場所。
それらの木には注連縄?がついており、その木々に囲まれるように、朽ち果てた木造の小屋のようなものがぽつんと建っている。