フィリピンへ出発される天皇、皇后両陛下=26日午前、羽田空港
両陛下ご出発 戦没者に心寄せ
天皇、皇后両陛下は26日、羽田空港発の政府専用機でフィリピンに向け出発された。30日までの5日間、首都マニラに滞在し、先の大戦で命を落とした日比両国の戦没者を慰霊するとともに、同国側との友好親善に努められる。両陛下のフィリピンご訪問は、皇太子夫妻時代の昭和37年11月以来、2回目となる。
今年は日本とフィリピンの国交正常化60周年に当たることから、昨年6月に国賓として来日したアキノ大統領から両陛下のご訪問について招請があったという。国際親善を目的とする公式訪問という位置づけだが、宮内庁は戦没者の「慰霊の旅」を続ける両陛下の強い意向を踏まえ、日本人戦没者の慰霊碑「比島戦没者の碑」と、フィリピン側戦没者を追悼する「無名戦士の墓」でのご供花を日程に組み入れた。
このほか、マラカニアン宮殿で行われる歓迎式典や、アキノ大統領主催の晩餐(ばんさん)会に臨席するほか、フィリピン独立運動の英雄「ホセ・リサール」の記念碑にも供花される。
先の大戦中、同国のルソン島で約27万人、レイテ島で約8万人、ミンダナオ島で約6万人など、多くの日本兵が戦死。厚生労働省によると、フィリピン全域での日本兵戦死者は51万8千人に上るという。また、同国側の犠牲者も多く、110万人に上ったとも言われる。昭和31年、日本が5億5千万ドル(当時1980億円)の戦争賠償金を支払うことが決まり、国交が正常化した。
産経ニュース
天皇陛下のお言葉 比ご出発にあたり
天皇、皇后両陛下はフィリピン訪問を前に、羽田空港で見送り行事に臨まれた。天皇陛下は皇太子さまをはじめ皇族方、安倍晋三首相らに、先の大戦において同国内で多くの犠牲者が出たことに触れ「このことを常に心に置き、この度の訪問を果たしていきたい」と述べられた。お言葉の全文は以下の通り。
この度、フィリピン国大統領閣下からの御招待により、皇后と共に、同国を訪問いたします。
私どもは、ガルシア大統領が国賓として日本を御訪問になったことに対する答訪として、昭和三十七年、昭和天皇の名代として、フィリピンを訪問いたしました。それから五十四年、日・フィリピン国交正常化六十周年に当たり、皇后と共に再び同国を訪れることをうれしく、感慨深く思っております。
フィリピンでは、先の戦争において、フィリピン人、米国人、日本人の多くの命が失われました。中でもマニラの市街戦においては、膨大な数に及ぶ無辜のフィリピン市民が犠牲になりました。私どもはこのことを常に心に置き、この度の訪問を果たしていきたいと思っています。
旅の終わりには、ルソン島東部のカリラヤの地で、フィリピン各地で戦没した私どもの同胞の霊を弔う碑に詣でます。
この度の訪問が、両国の相互理解と友好関係の更なる増進に資するよう深く願っております。
終わりに内閣総理大臣始め、この訪問に心を寄せられた多くの人々に深く感謝いたします。
産経ニュース