ピースおおさか「南京事件」展示で府市トップの対応に差
橋下氏「展示内容問題ない」、松井氏「両論併記を」
産経ウェスト大阪府と大阪市が出資する財団法人「大阪国際平和センター」(ピースおおさか、大阪市中央区)が「南京事件」について日本の加害行為を紹介する映像展示を行うとの産経新聞報道をめぐり、大阪市の橋下徹市長は19日、「(内容は)教科書の範囲内の事実。中国側の加害行為も入れる」と述べ、展示内容に問題はないとの認識を示した。一方、大阪府の松井一郎知事は「大虐殺が行われたという一方的な内容にならないよう、両論併記して正確に再現する」と明言。南京事件をめぐる府市トップの認識の差が表面化した。
府人権企画課「入城の場面に音声で“多数の住民が殺害された”」
府人権企画課によると、平成27年度のリニューアルオープンに合わせ映像資料を展示する予定で、旧日本軍が南京城へ入城するシーンに「日本軍が占領した首都・南京で、捕虜のほか女性や子供を含む多数の住民が殺害された」という内容のナレーションを重ねることを検討しており、文言は教科書に準拠する方針。
橋下市長はナレーションについて「日本軍による南京事件、重慶爆撃では多数の市民が犠牲となった」という内容と主張。昭和12年に中国人部隊が日本人居留民らを虐殺した通州事件でについても触れ「中国軍は日本の軍人、居留民を殺害」と紹介しているとし、「中国側の加害行為も入れている」と強調した。ナレーションの内容に関しては、「教科書の範囲内の事実。これまで否定するとサンフランシスコ講和条約の否定につながりかねない」と述べた。
これに対し、南京事件について松井知事は「ありとあらゆる文献や意見があり、それをできるだけ展示すべきだ」と指摘。「戦争の悲惨さを伝えるためには、大虐殺が行われたという片方に寄ったものではだめだ」との見解を示した。
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【用語解説】南京事件
1937(昭和12)年12月13日、当時の中華民国の首都・南京陥落後、旧日本軍の占領下にあった最初の6週間に起きたとされる事件。犠牲者数については中国側は「30万人」と主張。日本国内では、近年の研究で誇大との見方が定着している「大虐殺派」(十数万~20万人)、「中間派」(2万~4万人)、「事件否定派」の3説がある。日本政府の公式見解は「非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できない」。
「ピースおおさか」の展示をめぐる経緯
やはり「自虐」回帰? 撤去方針のはずが、一転「南京事件」映像展示へ
ピースおおさか
産経ウェスト大阪府と大阪市が出資する財団法人「大阪国際平和センター」(ピースおおさか、大阪市中央区)で、日中戦争中に旧日本軍が行ったとされ、その実態や規模をめぐって議論が分かれている「南京事件」に関する映像展示を行う見込みであることが18日、分かった。府・市議らから事件の虚構性を指摘され、平成27年度のリニューアルオープンに向けて関連展示を撤去する方針が決まっていた。直前の“方針転換”に疑問の声が上がりそうだ。
橋下市長も「自虐」了承か
府人権企画課によると、日清・日露戦争から第二次大戦までの経緯を説明した十数分程度の映像資料を流す予定。その中にある、昭和12年に旧日本軍が南京城へ入城するシーンに「日本軍が占領した首都・南京で、捕虜のほか女性や子供を含む多数の住民が殺害された」という内容のナレーションを重ねることが検討されている。
ナレーションは府内の小中学校で広く使われている東京書籍などの教科書に準拠。橋下徹市長は、設置を模索している近現代史をテーマにした教育施設では、議論が分かれる歴史的事象に関して「一つの価値観でつくることはしない」として両論併記とする姿勢を示しているが、市の担当部局によると「ピースおおさかは歴史を評論する施設ではない」として、南京事件では両論併記をしない考え。橋下氏もこの方針を了承しているという。
ピースおおさかではこれまで、旧日本軍の南京攻略後に見つかった中国人の生首とされる写真など南京事件コーナーが設置されていた。しかし、市民団体や府市議らから、当時のデータや証言、近年の研究成果を踏まえ、事件そのものの虚構性を訴える声も上がり、子供たちに戦争の悲惨さを伝えるために必須ではない-として撤去が決まった。
南京事件の犠牲者数をめぐっては中国側が「30万人」と主張。国内では、近年の研究で誇大との見方が定着した「大虐殺派」(十数万~20万人)、「中間派」(2万~4万人)、「事件否定派」の3説があり、日本政府の公式見解は「非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できない」となっている。
ピースおおさかの岡田重信館長は「諸説あるものの多くの犠牲者が出ている。当館は、事件を全体のストーリーを語る上での一つの重要な歴史的事象ととらえている」と話す。
事実無根のプロパガンダ
歴史博物館の展示問題に詳しい拓殖大の藤岡信勝客員教授(教育学)の話「南京事件は、中国が国際社会にアピールするための事実無根のプロパガンダ(政治・思想宣伝)だ。映像にナレーションを重ねるのは展示を撤去する行為と全く矛盾しており、やるべきではない」