産経ニュース
謝る、というのはなかなか厄介である。人生最大の難事といっても過言ではない。失敗をして謝らなければ、「人でなし」と罵られ、さっさと謝罪しても「謝って済む話ではない」と、相手の怒りの炎に油をさしかねない。
▼ことに国家間の謝罪は、難題中の難題である。村山富市、河野洋平両氏をはじめ歴代首相や官房長官の何人かは、小紙が止めるのも聞かず、さきの大戦について、過剰なまでの謝罪と反省を繰り返した。
▼結果はどうだったか。戦後70年近くたっても中国や韓国の為政者は、村山氏らの謝罪を受け入れて炎を消すどころか、「愛国心」という揮発性の強い油をまき、民衆の怒りの矛先を日本に向かわせて政権の安定を図っている。
▼朝日新聞の幹部もこうした故事を頭に入れ、社として謝罪しない方針を決めたのだろう。先月5、6両日に慰安婦問題に関する特集記事を掲載し、32年ぶりに「韓国済州島で女性を強制連行した」との吉田清治氏に関する記事を取り消したが、1カ月たっても「おわび」のおの字もない。
▼慰安婦を「強制連行された軍用性奴隷」と断じ、世界に日本の汚名をばらまいた国連人権委員会の報告に、朝日報道が大きな影響を与えたのも知らぬ顔の半兵衛を決め込んでいる。官房長官も昨日の記者会見で「間違いない」と認めたのに、である。ただし、例外もある。
▼池上彰氏が「過ちを訂正するなら、謝罪もするべきではないか」と書いたコラムをボツにしたものの、事態が明らかになった途端、あっさり「おわび」した。朝日に「反省」の2文字は似合わない。どうか、このまま突っ走ってほしい。朝日の記者は「日本は中韓に謝罪し反省の態度を示せ」とは、恥ずかしくて書けなくなるだろうが。