首相「遺骨収集に努力」
第2次世界大戦の戦没者の碑を訪れ、手を合わせる安倍首相夫妻=11日午前、パプアニューギニアのウェワク(共同)
【ウェワク=桑原雄尚】安倍晋三首相は11日(日本時間同)、先の大戦の激戦地であるパプアニューギニア北部のウェワクに入り、戦没者の碑や戦跡などを回った。同国内には多数の戦没者の遺骨が残されたままで、首相は遺骨の早期帰還に努力する姿勢を示し、改めて不戦の誓いをアピールした。
「家族の幸せを願い、祖国を思い、遠いこの地に倒れた方々の犠牲の上に今日の平和と繁栄がある。アジア、世界の友人と世界平和の実現を考える国でありたいとご英霊の前で誓った」
首相はウェワク市内にある日本政府が昭和56年に建立した戦没者の碑に献花し、黙とうした後、同行記者団にそう語った。日本の首相が碑を訪れるのは初めてのことだ。
同国では先の大戦で約16万人が戦死した。補給路を断たれ、“陸の孤島”の過酷なジャングル生活の中、マラリアや赤痢、飢餓によって亡くなった人が大半を占める。
今も約7万6千柱の遺骨が残されたままだ。現地でホテルを経営しながら戦没者の碑の管理や遺骨収集に携わっている川畑静氏(88)は「遺族が高齢化して、最近は遺骨収集に来る人が減っている」と指摘する。
自民党は、遺骨収集事業を「国の責務」と明記する議員立法を秋の臨時国会に提出する方針だ。戦後70年となる来年以降、予算や人員の増強、担当相の設置、在外公館への専門職員の配置を政府に促す考えだ。
首相は、そうした動きに「議員立法策定の議論を踏まえ、一柱でも多く早期の帰還に向け努力をしたい」と前向きな考えを示した。戦没者への慰霊は、中国や韓国が批判するような歴史認識の見直しではないとの姿勢を強調した格好だ。
日本人戦没者の遺骨収集に携わってきた川畑静さん(右)から説明を受ける安倍首相夫妻=11日、パプアニューギニアのウェワク(共同)