【皇室ウイークリー】(332) | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 



車窓から渡良瀬川沿いの新緑の景色を楽しんだトロッコ列車を降り、出迎えた人々に手を振られる天皇、皇后両陛下=22日、群馬県桐生市のわたらせ渓谷鉄道水沼駅

 天皇、皇后両陛下は21、22日、栃木、群馬両県を訪問された。両陛下のご希望を元に宮内庁が調整した「私的ご旅行」の3回目。今回は鉱害を超えて人々が緑化を進める「足尾銅山」ゆかりの地を巡りつつ、両陛下は仲むつまじく新緑を楽しまれた。

 皇后さまはご出発前日の20日、持病の頸椎(けいつい)症性神経根症の症状による左肩から左腕にかけての強い痛みを訴え、国立劇場(東京都千代田区)での文楽公演鑑賞を取りやめられた。側近によると、ご旅行中にも時折、左腕を気にされる様子もあったものの、奉迎の人々に盛んに手を振り、にこやかに過ごされたという。

 湿地保全のラムサール条約登録地で、広大な自然が広がる「渡良瀬遊水地」を訪問された初日は、あいにくの強風雨となったが、両陛下は傘をさしつつ、ヨシ原内をご散策。皇后さまが道沿いの樹木を見て、「クワでございますね」と話されると、陛下は「これは蚕(かいこ)のほうの桑?」とご質問。かつて当地で盛んだった養蚕の名残との案内役の説明にうなずかれたという。

 ご旅行中は、陛下の皇后さまへのお気遣いが垣間見えた。遊水地内の湖を一望できる展望台内は狭く、“相合い傘”の状態になったが、陛下は一緒に手を添える皇后さまに負担をかけまいと、両手でしっかりと傘の柄を握られ、「大丈夫?」と優しく声をかけられる場面もあった。

 この日は、栃木県佐野市の市郷土博物館で、113年前の明治34年、田中正造が明治天皇に渡そうとした直訴状もご覧に。普段は劣化を防ぐために複製が置かれているが、ご訪問にあたって4年ぶりに公開された実物を前に、陛下は説明に何度も「うん、うん」とうなずき、「謹奏 田中正造」で始まる直訴状をガラス越しにじっと見入られた。田中が「真の文明ハ山を荒さず、川を荒さず、村を破らず、人を殺さゞるべし」と記した日記の一節について説明を受けると、陛下は「ああ、これですね」と話された。

 

 栃木、群馬両県にまたがる「わたらせ渓谷鉄道」のトロッコ列車に乗車された2日目は、一転、真夏のような日差しものぞく好天に。緑豊かな山々が続き、渡良瀬川の清流や巨岩がある河川敷を並走する列車から、両陛下は景色とともに、植物などについて弾む会話を楽しまれたという。

 3月に89歳で死去した国際的な帽子デザイナー、平田暁夫さんを送る会が19日、都内のホテルで開かれ、皇后さまがお忍びで参列された。平田さんは長年、皇族方の帽子作りを手がけてきた。皇后さまはこの日も平田さん作の帽子をかぶり、祭壇にコウヤマキを手向けて一礼し、平田さんをしのばれた。

 祭壇の周囲には、皇后さまをはじめ皇太子妃雅子さま、秋篠宮妃紀子さま、常陸宮妃華子さまと、三笠宮、高円宮の各宮家から、それぞれ白い花が飾られていた。

 遺族によると、皇后さまは病床の平田さんや遺族を気遣い、お手製のスープを何度か贈られた。会場を去る際、平田さんのブランドを継いだ長女の石田欧子(おうこ)さん(50)に、「お父さまが支えてくれているから大丈夫よ」と語りかけられたという。

 皇太子さまは23日、第25回全国「みどりの愛護」のつどい臨席のため徳島県に入り、巨大地震による津波に備えた「松茂町津波防災センター」などを見学された。

 秋篠宮さまは今週、2カ所の地方訪問に臨まれた。20、21日は家畜改良センター新冠(にいかっぷ)牧場ご視察などのため北海道へ。22、23日には総裁を務める日本動物園水族館協会の通常総会などに臨席のため、静岡県を訪問された。